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自作小説倶楽部 第23冊/2021年下半期(第133-138集)  作者: 自作小説倶楽部
第134集(2021年08月)/季節もの「レジャー(山・川・キャンプ・水着)」&フリー「事件(死体、判事、ダイナマイト、砥石、手形)」
7/26

02 柳橋美湖  レジャー 『北ノ町の物語87』

【あらすじ】

 東京のOL鈴木クロエは、母を亡くして天涯孤独になろうとしていたのだが、実は祖父一郎がいた。手紙を書くと、祖父の顧問弁護士・瀬名が夜行列車で迎えにきた。そうして北ノ町に住むファミリーとの交流が始まった。お爺様の住む北ノ町は不思議な世界で、さまざまなイベントがある。

 ……最初、お爺様は怖く思えたのだけれども、実は孫娘デレ。そして大人の魅力をもつ弁護士の瀬名、イケメンでピアノの上手なIT会社経営者の従兄・浩の二人から好意を寄せられる。さらには、魔界の貴紳・白鳥まで花婿に立候補してきた。

 季節は巡り、クロエは、お爺様の取引先である画廊のマダムに気に入られ、そこの秘書になった。その後、クロエは、マダムと、北ノ町へ行く夜行列車の中で、少女が死神に連れ去れて行くのを目撃。神隠しの少女と知る。そして、異世界行きの列車に乗って、少女救出作戦を始めた。

 異世界では、列車、鉄道連絡船、また列車と乗り継ぎ、ついに竜骨の町へとたどり着く。一行は、少女の正体が母・ミドリで、死神の正体が祖父一郎であることを知る。その世界は、ダイヤモンド形をした巨大な浮遊体トロイに制御されていた。そのトロイを制御するものこそ女神である。第一の女神は祖母である紅子、第二の女神は母ミドリ、そして第三の女神となるべくクロエが〝試練〟に受けて立つ。


挿絵(By みてみん)

挿図/Ⓒ奄美剣星「クロエ」

    87 レジャー


 浮遊ダンジョンの第十一階層、なぜか母の実家・北ノ町。続きです。


     ◇


 以前、お爺様が湖の神木を削って作ってくれた、呼子の吊り紐が切れ、呼子が足元にコトンと落ちました。


 白鳥さんが微笑み、両の腕が私の肩を抱擁しようとする。

 私は抗う気はしないのだけど、頭の中でこんな思いが駆け巡りだしました。

(浮遊ダンジョン第十一階層の上の階層は、第十二階層で、その上が最上階の第十三階層になる。外観が、ダイヤモンド形をしたこの浮遊ダンジョンだけれど、内部にいるとでたらめな広さ。――第十二階層もまた出たらめに広く、町が収まっているのだろうか?)

 パーティー・メンバーのマダム、瀬名さん、浩さん。瀬名さんの守護者・護法童子くん。浩さんの守護者・電脳執事さん。……皆で、白鳥さんを私から引き離そうとするのですが、障壁バリアが張られているのでしょう、その手は届きません。

 白鳥さんの顔が、私の顔に近づいてきます。

 運転手席にいたお爺様が、駅前バスターミナルで停めてあったバスを降りてきました。

「ねえ、白鳥さん、私を魔界に連れて行って、それからどうするの?」

 私がそういうと。

「もちろん、あなたと結婚して力を合わせ、魔界征服をするのです」


 お爺様は、パーティー・メンバー同様に、白鳥さんが張った障壁外部にいますが、死神ゆえか、私にも声が聞こえます。

これってもしかして念話テレパシー

 お爺様が私たちの話しに口を挟んできました。

「白鳥君、人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて死んでしまえとはいうが、可愛い孫を〝あっち〟に連れて行かれたら、儂は寂しい」

「これはこれは鈴木三郎先生。孫娘が巣立つのは成長の証し、どうか僕たちを祝福してください」

「そうはいかない」


 仮に私が、吸血鬼の白鳥さんに血を吸われたとしましょう。白鳥さんがいうには、女神には吸血鬼に対して耐性があるそうですが、けっこう私は、美麗な白鳥さんに魅了されてきました。……ということは、やはり血を吸われたら、私は吸血鬼になるのでしょう。(嘘つき)私はここの中でつぶやきました。

 さらに私は心で呟きます。

 お婆様と母とが作り出した〝異世界〟は、経年劣化で歪が生じている。私は彼女たちに、必ず浮遊ダンジョン十三階層をクリアして、歪を修正してみせると約束した。

 そんなとき、微笑む白鳥さんが送ってくる秋波が弱まったように感じました。

 マダム、瀬名さん、浩さん。

 白鳥さんが張った障壁の外側にいるパーティー三人と二体の守護者が手をつないで、呪文を唱えていました。ただ、障壁のせいで、何を言っているのかは判りません。

(そうだ、私の守護者・四大精霊の手つなぎをやったらどうなるだろう)

私はイメージしました。

 私が召喚した風の妖精シルフィーが、地面に落ちている呼子を鳴らしました。

 ピー。


 これまでなら、炎龍のピイちゃんが登場するパターンですが、ピイちゃんは湖に戻って湖の主の神魚になっています。

 ならどんなことが起こる? まったく予想もつきません。

 

 障壁に亀裂が生じたようです。そこからお爺様の手が入ってきました。私は、右二の腕を引っ張られ、外に、ヒョイと投げ出されたのです。

 ドスンと落ちる。

 いえ、死神であるお爺様の腕の中に落ちて、お姫様抱っこされていました。


「えっ、お爺様ってこのミッションでは、ディフェンス側でしょ。ありですか?」

「白鳥君のおまえへの執着は凄すぎる。ここは緊急避難だ」お爺様はそういうと、仲間三人と守護者二体に合図して、バスに乗せ発進。その際、マダムが白鳥さんに、呪縛の魔法をかけて十分ほど動けなくするこを忘れません。さすが!

 お爺様のバスは、あの懐かしい洋館へと向かっていますけれど、これって罠?


     ◇


 では、またまたさらに、次回も第十一階層でお会いしましょう。


     By.クロエ

【主要登場人物】

●鈴木クロエ/東京暮らしのOL。ゼネコン会社事務員から画廊マダムの秘書に転職。母は故ミドリ、父は公安庁所属の寺崎明。女神として覚醒後は四大精霊精霊を使神とし、大陸に棲む炎竜ピイちゃんをペット化することに成功した。なお、母ミドリは異世界で若返り、神隠しの少女として転生し、死神お爺様と一緒に、クロエたちを異世界にいざなった。

●鈴木三郎/御爺様。富豪にして彫刻家。北ノ町の洋館で暮らしている。妻は故・紅子。異世界の勇者にして死神でもある。

●鈴木浩/クロエに好意を寄せるクロエの従兄。洋館近くに住み小さなIT企業を経営する。式神のような電脳執事メフィストを従えている。ピアノはプロ級。

●瀬名武史/クロエに好意を寄せる鈴木家顧問弁護士。守護天使・護法童子くんを従えている。

●烏八重/カラス画廊のマダム。お爺様の旧友で魔法少女OB。魔法を使う瞬間、老女から少女に若返る。

●白鳥玲央/美男の吸血鬼。クロエに求婚している。一つ目コウモリの使い魔ちゃんを従えている。第五階層で出会ったモンスター・ケルベロスを手名付け、ご婦人方を乗せるための「馬」にした。

●審判三人娘/金の鯉、銀の鯉、未必の鯉の三姉妹で、浮遊ダンジョンの各階層の審判員たち。

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