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自作小説倶楽部 第23冊/2021年下半期(第133-138集)  作者: 自作小説倶楽部
第135集(2021年09月)/季節もの「スイーツ(お萩、モンブラン、果物)」&フリー「出来事(新番組、歩く、愛人、判決、嘘)」
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02 柳橋美湖 著  出来事 『北ノ町の物語88』

【あらすじ】

 東京のOL鈴木クロエは、母を亡くして天涯孤独になろうとしていたのだが、実は祖父一郎がいた。手紙を書くと、祖父の顧問弁護士・瀬名が夜行列車で迎えにきた。そうして北ノ町に住むファミリーとの交流が始まった。お爺様の住む北ノ町は不思議な世界で、さまざまなイベントがある。

 ……最初、お爺様は怖く思えたのだけれども、実は孫娘デレ。そして大人の魅力をもつ弁護士の瀬名、イケメンでピアノの上手なIT会社経営者の従兄・浩の二人から好意を寄せられる。さらには、魔界の貴紳・白鳥まで花婿に立候補してきた。

 季節は巡り、クロエは、お爺様の取引先である画廊のマダムに気に入られ、そこの秘書になった。その後、クロエは、マダムと、北ノ町へ行く夜行列車の中で、少女が死神に連れ去れて行くのを目撃。神隠しの少女と知る。そして、異世界行きの列車に乗って、少女救出作戦を始めた。

 異世界では、列車、鉄道連絡船、また列車と乗り継ぎ、ついに竜骨の町へとたどり着く。一行は、少女の正体が母・ミドリで、死神の正体が祖父一郎であることを知る。その世界は、ダイヤモンド形をした巨大な浮遊体トロイに制御されていた。そのトロイを制御するものこそ女神である。第一の女神は祖母である紅子、第二の女神は母ミドリ、そして第三の女神となるべくクロエが〝試練〟に受けて立つ。


挿絵(By みてみん)

挿図/Ⓒ奄美剣星「クロエ」



   88 出来事


 第十一階層はなんと北ノ町でした。異界へと向かう軽便車の始発停車場のある一ノ宮神社。そこから私・クロエとパーティーと審判三人娘一行は湖に向かい、神魚の化身だった炎龍ピイちゃんとお別れし、バスターミナルで、白鳥さんの襲撃を受けます。そんな私達を救ったのは、バス運転手として再登場したお爺様でした。


     ◇


 お爺様が運転するバスが、小高い丘の坂道を上っていくと、頂きにある洋館前に停車しました。

 玄関前には、近所にお住いの家政婦の小母様が立っていて、私達をお出迎えしてくれました。

「どうだね、クロエ、懐かしいじゃろ」

「はい、懐かしいです」私は素直に答えました。

「家政婦の婆さんに、晩飯を人数分用意させた。食べていくといい」

 (罠かもしれない!)私とパーティーは皆、困惑した表情を浮かべました。

 お爺様に続いて、パーティー一同、そして私が後に続きます。

 家政婦の小母様が一礼して、ドアを閉めたとき、大広間の床に隠されていた、魔法陣が閃光とともに浮かび上がっていました。

「やはり罠だったか!」顧問弁護士の瀬名さんと従兄の浩さんが嘆くように叫びます。

 予想はしていましたが私達は、お爺様が仕掛けた魔法陣トラップに引っかかってしまいました。

 審判三人娘の皆さんは一様に、(まあ、素敵な罠!)と両手を頬に当てて、半ば嬉しそうに驚いた表情を浮かべていました。

 お爺様が言います。「晩飯を用意したのは嘘じゃない」指を鳴らすと、ご馳走が並べられた長テーブルが現れました。そして、私達に席に着くように促しました。


 お爺様・鈴木三郎は高名な彫刻家で漁師町にある丘にある洋館で一人暮らしをしている。実は、異界の生と死を司るチートな死神でした。家政婦の小母様は、ご近所にお住まいの方で、お爺様の身の回りのお世話をしていらっしゃる。

 他方の私達パーティーは、お爺様の孫娘で、東京のK画廊で秘書をしている、女神見習として覚醒した私・鈴木クロエ。北ノ町でIT企業を経営している従兄の浩さん。さらにお爺様の顧問弁護士をなさっている瀬名武士さん。私が、東京でお世話になっているK画廊マダムで、元魔法少女の烏八重さん。さらに浩さんの守護者・電脳執事さん、瀬名さんの守護者・護法童子くんからなっています。

 それから、ダンジョン第二階層から参加した審判三人娘である鯉ノ精の化身・金ノ鯉、銀ノ鯉、密室ノ鯉のお三方がいらっしゃいます。


 今どき珍しい、上野発の夜行列車に乗って一泊、ようやく着く北ノ町。――北ノ町は、小異界というべきところで、町の鎮守の一ノ宮神社から出ている軽便鉄道と、連絡船を乗り継いで、大陸に渡っところ。終点の停車場に竜ノ墓場と呼ばれる「鉱山」があり、その郊外の砂漠地帯に、正四角柱浮遊ダンジョン「トロイ」が、ダイヤモンドのような感じで浮かんでいます。異界は、祖母の紅子・母のミドリ二代からなる女神によって均等を保たれていましたが、交代期になりました。「トロイ」は異界の均等装置。それが交代期で老朽化・故障が生じたので、私・クロエが三代目として相応しいか試されることになりました。そういうわけで、私とパーティーが、浮遊ダンジョンを最上階の第十三階層にあると目される、コントロール・ルームを目指しているというわけです。


 晩餐を終えるころ、ナイフとフォークをお皿に置いたお爺様が、パーティーと、審判三人娘の皆さんを見渡して、こう提案しました。

「食事が終わったらゲームの時間だ。察しがつくように、君達を拘束しているここの結界魔法陣を解除するのだよ。今から二十分以内だ」

「鈴木先生、もし私達が解除できなかったら?」マダムが尋ねます。

「ここまできて、スタート地点である第一階層に突き落とすというのは興ざめだ。クロエ以外のパーティー全員を、本ダンジョン・ツアーからご退場して戴くというのはどうだ? つまり次の第十二階層からは、女神見習であるクロエ一人で行くのだ」

「――そ、そんな」十二階層で一人で行く? どれだけ強力なトラップが仕掛けられ、なおかつモンスターが潜んでいるかのか分からない。まだまだ皆さんのご協力が必要。私は当惑しました。

 全員が食事を終えたことを確認したホスト役のお爺様が指を鳴らすと、テーブルが消えてホールの床に再び、閃光を放つ魔法陣が現れました。

 魔法陣の中に私達パーティー。

 それを囲んで審判三人娘が立ち、二階に向かう階段踊り場の上に、お爺様と家政婦の小母様が立っています。――その小母様なのですが、いつの間にか金色の霊光に包まれて、ドレスアップしたお婆様に代わっています。――家政婦の小母様はお婆様だったんだ!

「クロエ、頑張れ!」お婆様は優しく微笑んでいました。


     ◇


 次回も浮遊ダンジョン「トロイ」第十一階層。なんとなくここが最難関であるような気がします。ではまた。


     By.クロエ

【主要登場人物】

●鈴木クロエ/東京暮らしのOL。ゼネコン会社事務員から画廊マダムの秘書に転職。母は故ミドリ、父は公安庁所属の寺崎明。女神として覚醒後は四大精霊精霊を使神とし、大陸に棲む炎竜ピイちゃんをペット化することに成功した。なお、母ミドリは異世界で若返り、神隠しの少女として転生し、死神お爺様と一緒に、クロエたちを異世界にいざなった。

●鈴木三郎/御爺様。富豪にして彫刻家。北ノ町の洋館で暮らしている。妻は故・紅子。異世界の勇者にして死神でもある。

●鈴木浩/クロエに好意を寄せるクロエの従兄。洋館近くに住み小さなIT企業を経営する。式神のような電脳執事メフィストを従えている。ピアノはプロ級。

●瀬名武史/クロエに好意を寄せる鈴木家顧問弁護士。守護天使・護法童子くんを従えている。

●烏八重/カラス画廊のマダム。お爺様の旧友で魔法少女OB。魔法を使う瞬間、老女から少女に若返る。

●白鳥玲央/美男の吸血鬼。クロエに求婚している。一つ目コウモリの使い魔ちゃんを従えている。第五階層で出会ったモンスター・ケルベロスを手名付け、ご婦人方を乗せるための「馬」にした。

●審判三人娘/金の鯉、銀の鯉、未必の鯉の三姉妹で、浮遊ダンジョンの各階層の審判員たち。

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