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蒼の亡命者  作者: TAK
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サクラ食との出逢い

アスラ達の前に食事として出された料理は自分達が今まで出逢った事のない物ばかりだった。お椀につがれたサラダスープらしき汁物に、小鉢にはフレッシュサラダと似ても似つかぬ干からびたような野菜に、茶碗に盛られた白い粒粒の上に真っ赤な干からびた果物が載った主食らしき物と、真っ白い謎の飲み物が並んでおり、唯一見覚えのあるのは焼き魚だった。手元には二本の棒らしき物が置いてあった。


(何だろう…、この料理…。魚の方は見覚えあるんだが…。)


アスラ達は見た事のない料理に首をかしげた。


「これは『サクラ食』といって、サクラヘイムの標準食じゃ。ぬしらの手元にあるのは『(はし)』といってな、サクラヘイムではこれでつまんで食べるのじゃ。」


長老は料理並びに箸について紹介した。


「ああ、そうじゃ。まずは『サクラ汁』から食べるといいぞい。」


長老はサクラ汁という汁物から食べるよう促した。アスラ達は汁を飲んでみた。


「何だ…!?何故か美味しい。今までのサラダスープとは全く違う感じだ。」

「ええ。とても美味しいわ。」

「ごもっともですな。」


アスラ達はサクラ汁を美味しく味わった。


「サクラ汁はな、サクラヘイム特産の『味噌(みそ)』を使ったサラダスープじゃよ。他のサラダスープに引けを取らぬ程栄養満点じゃぞ。」


長老はサクラ汁を説明した。


「さて、今度は『糠漬け』を食べてみるが良い。」


長老はアスラ達に糠漬けを食べてみるよう促した。


「『ヌカヅケ』とは一体…?」


アスラは糠漬けが気になった。


「この小鉢の干からびた野菜の事じゃよ。糠の入った壺で野菜を寝かせた食べ物じゃ。箸でつまんでみるが良い。」


長老は糠漬けについて説明した。アスラ達は箸で糠漬けを食べてみようとしたが…


「な…、何だ…!?なかなか思うようにつまめない…。」


アスラはなかなか箸が扱えず戸惑った。


「トングをイメージするの。」


ドルフィナは箸を扱う際にトングをイメージするようアスラにアドバイスをした。


「トングね…。あっ…、つまめた…。」


ドルフィナのアドバイスでアスラは何とか箸で糠漬けをつまむ事が出来た。そして、口に運んで食べた。やや硬い感じの食感だ。


「やや硬いが丁度良い感じだ。しかも美味しい。それも今までのフレッシュサラダよりも…。」

「ええ。」

「うむ。」


アスラ達は美味しく食べたのだった。


「今度は一見何の変哲もない焼き魚じゃよ。食してみると良い。」


長老は今度は焼き魚を食べてみるよう促した。見た目は何の変哲もない焼き魚だが、アスラ達が食べてみると…


「何だ!?今まで食べた魚とは違う。同じ魚なのに何故違うのだ…?」


アスラは同じ焼き魚なのに今まで食べたのと違う事が気になった。


「『生きじめ』じゃよ。」

「『イキジメ』…?」


アスラは今度は生きじめが気になった。


「サクラヘイムの食に関する固有の技術でのう。()った後、血を抜く等の下処理をするのじゃ。かくして美味しく食せるのじゃよ。」


長老は生きじめについて説明した。


「なるほど…、どうりで美味しいわけだ…。」

「ええ、美味しく食べて貰えてお魚も嬉しい感じね。」

「うむ…、『食は命をいただく事』とは良く言ったものですな…。」


アスラ達も生きじめされた焼き魚に舌鼓だった。


「今度は『()(ごめ)』を食べてみるが良い。上に載っておる『梅干(うめぼ)し』と一緒に食べると良いぞい。」


長老はアスラ達に主食を食べてみるよう促した。


「『タキゴメ』、『ウメボシ』…?」


アスラは二つの言葉も気になった。


「炊き米は米を炊いた物で、サクラヘイムの主食じゃよ。それから梅干しはサクラヘイム特産の梅の実を赤紫蘇(あかじそ)と共に塩漬けにしてから干したサクラヘイムの保存食じゃ。梅干しが赤いのは赤紫蘇によるものじゃ。こいつは極端な()っぱさと塩辛さから好みが二極化しやすい。故に一度は『古代食』になりかけたのじゃ。それを見かねたサクラヘイムの一人の英雄が梅干しをブルドラシル中に伝え廃業に追い込まれそうになった梅農家を救ったのじゃ。それから『マミーカフェ』の発祥はその英雄によるものじゃ。ああ、そうじゃったな…。梅干しの味は濃い。少しずつ食べなされ。」


長老は炊き米と何より梅干しとその伝承について語った。また、梅干しの食べ方についてもアドバイスした。アスラが長老のアドバイス通り梅干しを少しずつ分けてみると、真っ赤で大きく固い物が出てきた。


「何だ…、中の固い物は…?見たところ種のようだが…。」


アスラは種らしき物が気になった。


「梅の種じゃよ。サクラヘイムじゃ梅干しを丸ごと食べる者もいるのじゃ。その際に種を吐き出すがのう…。梅干しに限った事ではないが、保存食は『漬ける』物が多い為きれいな印象がないのは否定出来ぬ。それが梅干しの好みの二極化に拍車をかけておるのじゃよ。」


長老は梅の種並びに保存食がきれいな食べ物のイメージがない事を伝えた。


「そうですか…。では、食べてみます…。」


アスラ達は箸で切り取った梅干しを炊き米と一緒に食べてみた。


「!…酸っぱくも塩辛い…。でも…、米のおかげで食べられなくはない…。」

「ええ、不味(まず)くないのは確かね。」

「濃いが故に食べ方に注意ですな…。」


三人はそこそこ美味しく食べていた。


「最後に『米乳(べいにゅう)』じゃよ。飲んでみるが良い。」


長老は米乳を飲んでみるよう促した。


「『ベイニュウ』とは一体…?」


アスラは米乳が気になった。


「蒸した米を『(こうじ)』で発酵させた飲み物じゃよ。とっても甘くて美味しいぞい。」


長老は米乳についてアスラ達に説明した。


「わかりました。それから『コウジ』とは…?」


アスラは今度は麹について気になった。


「麹はサクラヘイムの発酵食品に欠かせぬ食材じゃ。大豆に混ぜて発酵させると味噌となるのじゃよ。」


長老は麹について説明した。


「ありがとうございます。それでは…。」


アスラ達は米乳を飲んでみた。


「美味しい。」

「ええ。」

「粋な味ですな。」


三人とも米乳も美味しく味わった。そして、一同はサクラ食を完食したのだった。



サクラ汁…アースガルドでは『味噌汁』と呼ばれているサラダスープ。サクラヘイムのマストフードの一つ。

米乳…アースガルドでは『甘酒』と呼ばれているサクラヘイム固有の発酵飲料。

<お知らせ>

本シリーズ『蒼の亡命者』について、当分の間、投稿は休止させて頂きます。

代わりに前シリーズ『将軍王のココロザシ』の第二部のストーリー構想が出来ましたのでそちらに重点を置く予定です。

これからもご愛顧頂けたら嬉しい限りです。

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