クジライヌ内部
アスラ達一行はクジライヌで航行中だった。クジライヌ内部には、人が最低限の生活に必要な設備が揃っており、いわゆる船のような存在だ。クジライヌは鯨と犬の融合した姿の水で出来た巨大カムイだ。要するに『脚の生えた鯨の水属性カムイ』である。
クジライヌ内部の詰所では、アスラはジェイソンや兵士達を交えて訓練をしていた。アスラは剣を何度も素振りしていた。
「さて、そろそろ休憩と参りましょう…。」
ジェイソンはアスラ達に訓練の休憩の合図をした。
「爺、水の紋章を賜ったんだが…、まだまだ強くなった実感が持てないんだ…。」
アスラはジェイソンに自分がまだまだ強くなった実感がないと述べた。
「若、真のAUは紋章をあてにするものではございませんぞ。あてにしているうちはまだまだAUとして未熟だとそれがしは思いまする。」
ジェイソンはアスラに紋章をあてにするものではないと述べた。
「確かに僕もそう思う…。でなければ…、こんな素振り等の訓練に勤しむ訳がない…。」
「確かにそうですな。実は紋章は予期せぬ事態に反応して力を貸してくれるもの。ただひたすら訓練に勤しみ、自分のすべき事をしていくうちに、そうなるかもしれませんな…。要するに…、『あらゆる奇跡は努力より起きる』、AUの教訓の一つですな…。」
「確かに…、努力せずにただ奇跡をあてにするのは虫が良すぎるという事だね。」
「ご尤も。さて…、もう一度訓練を再開致しましょう。」
ジェイソンは訓練再会の合図をし、アスラは再び素振りをした。
一方、クジライヌの頭部の操舵室でドルフィナはクジライヌの管制をしていた。
「クジライヌ、このBBB団の海域の近くで何か罠らしき物はないかしら?」
ドルフィナはクジライヌにトラップらしき物がないか尋ねた。
『マスター、罠らしき物はないが、男女一人ずつ近くに沈んでおる。いずれも生命反応あり。但し、男性の方に外傷あり。』
クジライヌはドルフィナが所持している雫の紋章を通じて状況を伝えた。
「二人を回収して。」
ドルフィナはクジライヌに二人を回収するよう伝えた。
『承知した。二人を救命するよう乗組員にお伝え頂きたい。』
「うん!」
クジライヌは海に沈んだ二人を呑み込む形でクジライヌ内部に取り込んだ。
「乗組員全員にお伝えします!海に沈んだ二人を救助しました!場所は操舵室の真下です!ただちに手当をお願いします!特に、男性は応急処置が必要です!」
ドルフィナは雫の紋章を通じて乗組員全員に救命をするよう伝えた。
「何だって、二人が溺れていただと?」
「そのようですな。」
「急いで向かおう!」
アスラ達は訓練を中断して、クジライヌが救助した二人の元に向かった。操舵室の真下ではティーンの男女が倒れていた。男性の方は矢が刺さっていた。はたして二人は無事に助かるのだろうか…?