コロニー・フィオナ襲撃
ブラーガルドのコロニーヘイム、海に浮かべた複数の巨大筏の上で人々は生活している。巨大筏の上では人々は町や村を造り、様々なコミュニティを形成している。漁業は勿論、農業に勤しむ者も多く、漁業等で生計を立てる一方、本土に出稼ぎに行く者も少なくない。何故なら、巨大筏の上は資源に恵まれないからだ。故に、コロニーヘイムでは雫の騎士団管轄の『水売衆』を通じて交易が盛んに行われている。中でも『コロニー・セントラル』には雫の騎士団管轄の軍事組織『BT』コロニー支部の所在地で人口もコロニーヘイムの中で最も多い。物語はセントラルよりやや離れたコロニー・フィオナで始まった。
「領主の娘ドルフィナ様と共に本土に留学した若は今頃、雫の紋章を授かってここに戻って来る事だろうな…。」
領主の館の兵舎で年老いた執事肌の男性は若手の兵士に語りかけた。
「仰せの通りです、ジェイソン様。我々はこのフィオナの地を護らねばなりません。勿論領主と共に…。」
「うむ…、若とドルフィナ様の戻る場所を護るのがわしらの務めじゃな…。ぬしよ…、あの日の事を覚えておるか…?祖国を亡命した日の事を…。」
「はっきりと覚えております。陛下と共に戦おうとするもそれが赦されなかった殿下の無念…、察するに余りあります。」
「うむ…、わしも初めは陛下より年老いた自分が生き延びる事を不本意に思った…。だが…、実際に若と共に亡命してわかったのだ…。わし…、いやわしらにはまだ為すべき事があるという事が…。」
「ご尤もです。それがし、いやそれがし共もそう感じておりました。」
ジェイソンと旧マルス兵は亡命した日の事を語り合った。そんな二人の元に別の旧マルス兵がやって来た。
「大変です!かの悪名高いBBB団がこのフィオナを取り囲んでおります!」
伝令兵がジェイソン達に危機を知らせた。
「何と!民共はどうしたのだ!」
ジェイソンは伝令兵に民の安否を尋ねた。
「民共は正規兵が領主の館に誘導しております。それから、館に常駐しているウンディーネがセントラルのBTへの通報を済ませております。」
「うむ、領主から我々に何か指示はあるか?」
ジェイソンは伝令兵に領主からの指示について尋ねた。
「民の安全を確保した上で迎撃にかかれとの事です。」
伝令兵は領主の指示を伝えた。
「了解した。皆の者、まずは全ての民を領主の館に入れよ!終わり次第迎撃にかかれ!」
ジェイソンは旧マルス兵一同に命じた。
「はっ!」
ジェイソンは配下の兵を率いて民達を領主の館に誘導した。
全ての民を領主の館に誘導した後、BBB団がフィオナに上陸してきた。BBB団は斧等の得物を携えて民家のあちこちを物色しては火を放った。
「者共、家にある金目の物は奪え!奪い終わったら焼き払っちまいな!」
極めて野蛮な出で立ちの男性は斧を肩に乗せて子分達に言い放った。そして、ほとんどの民家が焼き払われ、BBB団が領主の館に向かったその時、巨大筏の外で一頭の青い鯨が頭から水しぶきを発してやって来た。その水しぶきから虹が現れた。
「この鯨は…、まさか…、ドルフィナ様の…。」
「若…、戻って来られたのですな…。皆の者、撃って出るぞ!」
ジェイソンは配下の兵達を率いて領主の館から出撃した。突然の奇襲にBBB団は恐慌した。水しぶきは全て民家に放たれた火を消していき、それも彼らの恐慌に拍車をかけた。
「な…、何だこの鯨は…、化物か…?」
BBB団は口を揃えて狼狽えた状態だった。
「今こそ好機だ!侵略者に目に物見せてやるのだ!」
ジェイソンは配下の兵達と共にBBB団に奇襲を仕掛けた。BBB団の構成員共はなす術もなく拘束されていった。間もなくセントラルからBTが駆け付け、捕虜達は彼らに引き渡された。
船着き場で領主とジェイソン達の前で、鯨型の乗り物の中から現れたのはティーンの男性と女性だった。男性は青装束で、女性は青髪で頭にはゴーグルを着けていた。
「領主様、爺、このアスラ、本土より只今戻って参りました。」
「お父様、私、ドルフィナはアスラと共に本土より雫の紋章を授かって戻りました。」
アスラとドルフィナは自分達の帰還を伝えた。そして、二人は領主の館に戻って行った。