94 騎士の目論見
さあ、ここから盛り上げていきまよ(*'▽')!
日は落ち月も見えぬ暗闇の中で、スラムは戦場となっていた。
あるところでは炎が竜巻を起こし、あるところでは罵声が響き、あるところでは悲鳴が聞こえた。
殺伐とする街並みを遠目にソーラとグリコ、ダンテはそれを眺めていた。
「グリコ、魂の数はそろったか?」
「まだまだかかりそう。だけど、戦闘も活発化してきたしキルペースは上がって来たね」
「そうは言っても、奥義が出る前に敵方が全滅するだろこれ。やはり、他のメンバー達も引き連れてきた方が効率良かったんじゃないか?」
「俺の奥義は強い代わりにデメッリトがデカって言っただろ。仲間を巻き込む様な事したら評判下がるかもしんないじゃん」
「使わないことに越したことは無いだろ。沢山連れてきて、味方が全滅しそうなら奥義を出し、そうでなければ、そのままの流れで殲滅すればよかったってことだよ」
「あーもうくどい。そもそもこういった場面でしか使いどころのないスキルなんだから使わせてくれよ。こういうのをロマンって言うんだぞ」
「お前が頬を膨らませても需要はない」
「まったく、戦争という自覚が無いな君達」
こう話している間も、少しずつ敵の戦力は削られていく。
スラムに住まう悪人に対して青空騎士団は一切の慈悲を持っていなかった。だから、怪しげな商売をするNPCも、逃げ惑うプレーヤーも、目に入った者を手当たり次第に虐殺していった。
しかし、これは正義の執行である。誰も騎士団を責めず、むしろ迷惑をかけていた犯罪プレーヤーが懲らしめられたことに安堵する者もいるであろう。それでもやはり、この残虐的なやり方に反感を覚える者は少なからず存在するのだ。
あのギルド駒狐の様に。
「おいソーラ、誰か来た。正面から一人…歩いてきてる」
「来たか。思ったより嗅ぎつけるのが早いね。さて、グリコの護衛に出るぞ」
「にしても、相手は一人なんだろ?絶対舐めてるじゃん。しかも意味ありげに正面から歩いてって、猛者気取りか?」
「確かに自身の実力を慢心的に考えている馬鹿ならいいが、そうとは限らない。油断するなよ」
そうこう話している間に、暗闇からプレーヤーのシルエットが見えてきた。ソーラとダンテが武器を構えたその瞬間、その者は姿を消した。
「は?どこ…痛った!?」
振り返れば、グリコが衝撃で頭を地面に打ち付けられている光景が目に入った。それと同時に、赤い石がソーラとダンテに向けて放たれてる様子も。
「なっ!?」
「くっ…」
次の瞬間、二人は炎に包まれ膝を地面に落とした。辛うじて生き残ったものの、あの一瞬で瀕死に追い込まれた。救いは、追撃がなかったことだろう。少し離れたところに、軽いスタン状態になった黒い狐の姿が見えた。
「ハハ…メービィーに付与してもらった加護がこうもアッサリ破られるとはね。しかも三人分。おかげでカウンター効果で動けないアンタに誰も攻撃できずもどかしい限りだよ」
「即死クリティカルを無効化された挙句、追加で回復効果と加護を破った相手にスタン効果と…もしかしてこの展開読んでた?」
「俺のシナリオでは『な、なにー!?復活しただと、しかも動けん!』って言うのを想像してたが、台無しだよ」
「お気の毒様」
「おめーのせいだ!」
「そんなこと言われても、こっちは不意打ちで勝ち越す計画が台無しなんだが」
「お気の毒様だな」
「お互い様だよ」
双方予想だにしない展開に愚痴を散らす中、ただ一人ダンテは冷静に相手を分析していた。
第一に分かることは、奴はこの騎士団の三人を圧倒する実力を持った猛者ということだ。これは誰でもわかる単純なことであり、最悪な展開であった。ましてや、一瞬のうちに状況を把握する分析能力、追撃せず距離をとる慎重な動き、神速のソーラを翻弄するスピード。考えれば考えるほど相手の底力に気圧されるばかりであった。
「強い割には知らない顔だな。たいていの猛者は頭に入れてるつもりだったが、何者だアンタ?」
「自b…我はスラムに拠点を構えるギルド駒狐のリーダーの狐影だ。話によれば、君達はあの白夜と同級生なんだってね」
「なるほど駒狐、しかも狐影という名のプレーヤー。まさかこれ程強い人物だとは思いもしなかったな」
「我だけ褒められても困る。せめてギルドの名で恐れてほしいものだ。きっと戦況は変化するだろう、われら駒狐によって」
「…言うね」
そう、戦況は変わろうとしていた。
それぞれの区画にギルド駒狐のメンバーが合流し、今まさに真なる戦いが始まろうとしていた。
「さあ、騎士団の皆さん。そろそろお互いに戦う準備ができたことでしょう。これからスラムの逆襲が始まりますよ」
第二ラウンドの幕開けである。
テスト週間だけど頑張って書き続けます。
次回、土曜日投稿予定。




