81 大物一本釣り
水晶都市アルデン、そのスラム街にそびえる時計の塔。
そこの上から顔を覗かせる少年の影あり。
迷彩柄を基調とした軽装備の数々。その手にはボウガンらしき武具が見られた。
この風景を目にする眼光は赤く輝き、右耳につけられた赤のピアスと共鳴している。
「ったく、空の団長さんは何を考えてるのやら。ある特定のギルドを調査しろって、そもそもできたてホヤホヤの弱小ギルドじゃん」
視線の先には、ギルド狛狐の施設があった。
なんか、瓜二つの少女が楽しく玄関を掃除している。
「とりあえずメモ。ギルドには下働きの双子らしき人物がいる。現時点で確認されたプレーヤーは二人。共に役職及び能力は不明」
音声記入を駆使し、目に入った情報を書き記す。近代のゲームならでわの機能だ。
しかし、この長距離を見通す機能は存在しない。つまり、彼のスキルなのだろう。
そして、空中に浮く複数の鏡も彼のスキルであろう。
それらは死角を全て映し出す。背後に現れたピエロも例外ではない。
「おっと、気づくのが早いネ。そういったスキルかい?」
「そちらも、気配を遮断していたのにも関わらず僕を見つけた。どうして?」
「ま、お互い隠密に長けてたってことだネ」
双方ともに手の内を明かそうとしない。当たり前だ。ここでペラペラと語るほど愚直ではない。
だが、敵対する事がジェフリーの目的ではない。
「まあ、落ち着こうかネ。別に戦うために来たわけじゃないノヨ」
「ではなぜここに?」
「率直、実に真っ直ぐな質問。君は裏のある話し方は苦手なようだネ。でも教えちゃう!」
クルクルと回りながら場の状況を楽しむジェフリー。傍から見ればふざけてるようにしか見えず、何なら少々挑発気味だ。
「ここは見晴らしがいいって狐のリーダーから教えてもらったのサ。ただそこに……先客がいただけダヨ」
しかし、ジェフリーはいつだって真剣だ。その笑みの裏にいつだってジョーカーを隠し持っている。
その不穏な気配にあてられたのか、その手に持つボウガンを向けた。
しかし、ジェフリーはそれに一切動じる様子はない。いつでもケラケラ笑っている。
「あんたは不気味。不確定要素。敵対しない理由なんてない」
「もー、さっきも言った通り戦う気はないヨ。むしろ仲良くしていきたいネ。ワタクシいつでも笑顔の味方サ」
「笑顔?」
「そうそう。ほら笑わなくていいノ?楽しくないのかナ?」
「楽しくない。あんたに見つかった。いろいろ台無し」
いくら笑えど少年の心は安らぎを得ることはなかった。そこにジェフリーは多大なる闇を抱えてると感じ取った。
では、ふるいをかけてあげよう。
「君は、ウチのギルドに興味があるのかな?楽しいヨ、愉快だネ」
「………」
「その興味は空からのお告げからきてるのかナ?」
「……っ!?」
空。それは青空騎士団のことだ。
「それで、提案なんだけど……うち見学するかネ?」
「え?」
突飛押しの無い発言に目を丸くし固まってしまう。一体何を思えばそういう考えに至るのか理解できなかった。
「ではここで、我が名はジェフリー。カラクリピエロの道化師サ。少年の名も聞かせてもらおうか?」
突飛押しの無いあの言葉の意味。そんなの十中八九罠である確率が高い。だが、それに乗ってみるのも一興。
少年はその名を答えた。
「ラット。クラリス・ラットだ」
「よろしくネ。ラット君」
次回、土曜に出せたら出す。




