75 近所
土曜日復活……となるか
学校も終わり、宿題も終わり、風呂にも入り、食事を取り、歯磨きは忘れ、狐白はゲームを起動した。
そこはギルド内。名前や今後の方針を話し合う予定だったが、まだ誰もいないようだった。
「三人とも遅いな。いや、自分が早すぎたのかな」
特にやることがないので、このスラム街周辺の探索をすることにした。
だが、見知らぬ土地で宛もなくさまようのは危険なので、一度高いところから見下ろし道を把握しておきたい。
ちょうど近くに、ひときわ大きい時計塔があったので壁を蹴って登っていった。
「さて、どんな人がいるのかな?」
一際目立つ塔に登り見渡せば、スラム街全体の様子を目の当たりにできる。
スラム街と言っても、白を基調とした背の高い建物が並んでるところは他と変わらない。その代わり、そのほとんどが放棄されたものであり、破損部や汚れが目立つ。
だが、そこにいる住民は案外賑やかだった。
売店を開く者や集会を開いてる者、廃墟を物色している者もいた。予想よりも人が多く活気があった。
それでも不満を抱えている者は多かった。
「やっぱこの狭苦しい土地に飽き飽きしてるのかな?あ、バルスさんもいる」
バルス以外にも、過去に出会った犯罪プレーヤーがちらほら見られた。その中で、懐かしい顔ぶれの人達が見えたので一度挨拶に行くことにした
=☆☆=☆☆=☆☆=
積まれた置物の上に座り、少々偉そうに話す魔法使いの女性がいた。
彼女が見下ろす先には、ナイトの男を先頭に並ぶ男たちの姿があった。
「あんたたち、今日の成果はどうだったのかしら?」
「今回も食料かガラクタしか出てこなかったぜ。めぼしい物はなにも……」
彼らは『雀蜂』というギルドに所属している犯罪プレーヤー達だった。
過去に初心者を狩るといったせこい戦法で多くの悪名を広げていた彼らだったが、白霊狐によってこてんぱんにされ、さらにその映像をネットに流したマヌケな仲間がいたため、ギルドメンバーの顔が割れることとなり追われる身となっていた。
「まったく。あの情報屋は嘘でも吐いてたのかしら。稀にこの周辺でレアアイテムが出てくるって噂……」
「まあまあ、まだ探して一週間目だしな」
「現実の時間で一週間よ!ゲーム内時間じゃ途方も無い時間よ!」
「結構頑張ってるんですね」
「そうよ。早くこの頑張りが報われてほしい……今の誰?」
気づけば見知らぬ影が地面を揺れていた。
その影の上を見ると、黒い狐が看板にマントを引っ掛けた状態でぶら下がっていた。
「すみません、こんな見苦しい姿で。足を滑らせて落ちた結果、マントが看板に引っかかってとれなくなった次第です」
狐影は引っかかっている看板を切り裂き、ひるがえしながらキレイに着地する。そして何事もなかったかのように話しだした。
「はじめまして。ここスラム街に新しくギルドを構えた狐影と申します。今は軽く気になった人達に挨拶して回ってる最中です」
「なに……この子、急に馴れ馴れしい」
「まあ、顔合わせ程度で特に用は無いのでこれで失礼します」
「まあ、まちな。アンタ犯罪プレーヤーじゃ無いわね。目印の赤いピアスがついてないもの」
「ピアス?」
「ええそうよ。この区域にいる人みんな付いてるんじゃないかしら?」
確かに、この場にいる全員右耳に赤いピアスがつけられていた。前に合ったときはそんな装備は見受けられなかったはずだったが。
「つけてないとどうなるんですか?」
「ここでは嫌われものね。ギルド作るぶんにはまだいいけど余計なことはしないでよね。言っとくけどこれは忠告よ」
確かに、善人も悪人も手出し無用の不法地帯とは言われていたが、怪しいものは潰すに限られる。これはいわゆる脅しだ。
だが、なぜ彼らは……恐怖を隠そうとするのだろう?
「ご忠告感謝します。では今度こそ失礼します」
帰る直前にふとあることを思い出す。
「あ、そうだ。ここに落ちてくる途中、ここの建物の窓から結晶化した植木を見ました。あなたたちが探してたレアアイテムかもしれませんね」
そう言い放つと、影の中に消えていった。
「……何なのよあいつ。貸しとでも言うのかしら。お前達、すぐに確認しに行きなさい」
若干呆れ気味だったが、これで狐影の印象は深く刻まれただろう。それがあの白霊狐とは夢にも思わないだろうが。
次回から、土曜及び月曜の投稿となる予定です。




