60 熱気増長
「おい、この試合観てみろよ」
「なんだ?てか、残り二人ってもうすぐ終わる試合じゃねーか」
「そうなんだけどよー、この残った二人の戦いが熱いらしーぜ」
「マジかよ。誰と誰なんだ?」
「ペン回しの達人?ってやつと、あの白霊狐が戦ってるそうだ」
「一人は知らんが、もう一人の白霊狐は知ってるぜ。急激に名を知らしめたあのプレーヤーのことだろ」
「そうだ。だがもう一方のほうもなかなか強くて、接戦になってるそうだ」
「マジかよ。じゃあ観ていくか」
=☆☆=☆☆=☆☆=
「小癪な!その程度で倒しきれると思ったのか」
ペンは槍を回転させることで迫りくる霊炎を防ぎ、最小限のダメージで済ましたのだ。
「はいでた、ペン回しの本領」
「お褒めにいただき光栄です」
何気ない会話を交わしながらも、熱烈な戦闘は続く。
白夜はその身に魂狐霊炎を身に纏いペンを攻める。
逆にペンはその得物を振り回しながら常に白夜を攻めたてる。
「これだけの密度で攻撃しても、ほとんど防ぎきるとはねー」
「おれも、あんたがこれ程の隠し玉を持ってるとは思わなかぜ」
「あと、言っとくが長物を持ってるのはあんただけではない」
「なに」
白夜は空中に一本の線を描き、長刀を召還する。それを持って、さらなる反撃に出た。
「こっちは一切出し惜しみをしない。あんたも本気を出したらどうだ」
「はっ!ばれてたってか」
「流石に人力でここまでできるとは思ってなかったですが、やはり達人ですね」
「嬉しいこと言ってくれるじゃねえか。ふう…闘気解放!」
次の瞬間、凄まじい波動が周囲をざわめきたてる。
吹き荒れる土煙に顔を覆った隙を見てか、ペンはその槍を白夜にめがけて投げつけてきた。
「なに!ぐぅ…」
白夜も、流石に槍を手放さないと思い込んでいたせいで油断していた。もう少し判断が遅ければ腹に穴を空けられていたかもしれない。
「これは、予想外です」
「もう、楽しい会話は終わりだぜ。嬢ちゃんよ!」
今度はその闘気で複数の槍を展開し、白夜めがけて一斉掃射する。
その場は土煙でおおわれ、誰もが大打撃を与えたと思い込んでいた。
「どうだ。倒しきれずとも、いいのが入ってるだろ」
「…どうかね」
「!?」
煙が晴れたところで、白夜の懐に光る物体が見えた。それはすぐに砕け、塵となって消えていった。
「まさか、無傷だなんてことはないよな」
「今のは守護の宝霊術と言ってダメージを肩代わりしてくれるのさ。こんな自分でも人間なんでね、あの速さと密度は避けれなかったよ。でも言ったよね、出し惜しみはしないって」
「くそっ!」
ペンはその闘気の槍をその手に持ち、白夜に迫る。
「槍糸炎嵐!」
矛先から糸を引くように炎を巻きあげ、乱撃を繰り出す。
「魂狐妖万花」
対して、炎から一変して細かい花吹雪となった妖術に銀霊を添えて、立ち向かう。
いまだに終わらぬこの戦闘を、多くのプレーヤーが凝視していた。
「なんなんだこの戦い。白熱じゃねーか」
「白霊狐は分かるけど、このペン回しとかいう変な奴もスゲーな」
「でも聞いたことないし、無名だろ。こんな猛者が今まで隠れてたなんて」
「いや、白霊狐も今まで見たことのない大技を出しまくってるよな。燃えて来たぜー」
「ど、どっちが勝つんだ!?」
こうして、長丁場となっていたこの熱戦に終幕が訪れた。
お互い、力がこもった最後の一撃を放った。
「おぉらああ!」
「はああ!」
ゲーム内全体が静粛に包まれる。
『勝者が決定しました』
勝ったのは白霊狐の白夜だった。「おおー!」とゲーム全体を騒ぎ立てる。
白夜は、狐の化け皮を発動し身元を隠したうえでロビーに戻ってきた。
「ふー、なんとか勝てた。…ってなんか凄い騒いでる」
「白霊狐はまだ来ないのか!?」
「話を聞かせてくれー」
「あー。そういうことね。身元隠しててよかった」
このイベント大会も、熱気あふれる大騒ぎとなっていった。
っ次回、土曜日投稿




