55 黒が見たものは
狐影は素早く移動し、シャドームーブで右翼の船に飛び移った。そこはちょうど、大砲が並ぶエリアだった。
「とりあえず、煙幕で視界潰すか」
普段なら連発を躊躇する場面だが、流石にここで出し惜しみするつもりはない。
煙幕が放たれると、船内はたちまち混乱の渦に沈んだ。
「何だこの煙!?」
「まさか火事か」
「どうすればいいんだ」
混乱で騒ぐがゆえに、一人また一人と暗殺されていることに気づかない。
だだ、視界が悪いのは狐影も同じ。それでも、バレずに暗殺できるのには理由があった。
感情の色は、煙の中でも決して隠せないのだ。そして、高まった恐怖と焦りの感情は周りへと広がり、辺りの地形を写し出してくれる。
わかりやすく言えば、サーモグラフィーを通じて視界を得ている感覚だ。
一方的な攻撃に耐えきれず、多くの海賊達は階段から上へ登り避難していた。
こうして、もぬけの殻となった船内には、狐が一匹が残されていた。
「流石に殺られるばかりじゃないか。相手、階段で待ち伏せてるな」
どうにか出来ないかと辺を見渡す。すると、にわかに赤く光る箱が見に写った。
その箱を開けると、小石サイズの赤い石が詰め込まれていた。
「何だこれ?ここにあるってことは、火薬の類か?」
その石はまるで、手持ちにあるエレキストーンと酷似した形だった。
スタンショットに使うこの属性石には種類があり、島ごとに採れる種類が違うそうだ。この石はおそらく、前の島では採れないフレアストーンなのだろう。
「大砲の火薬代わりとして使ってるのかんな。流石にこの量を放置するなんて、取ってくださいと言ってるのかな」
使ってみたいという衝動が抑えきれず、それをハンドアーツに取り付けた。
どうせ海賊船だし、射って爆発しても誰も文句言わないだろと思っていたが……。
壁に当たった瞬間火の手が上がり、たちまち船は燃え上がった。
「うわああー!火事だー!」
「…えっと、案外使えるなコレ。持てるだけ持っていこう」
少し罪悪感があるが、どうせ落とす船なので有効活用させてもらう。
「まだ結構残ってるな。もう全部処理しちゃおう」
これぐらいの量なら、爆発を起こしてもおかしくない。少し離れた場所からハンドアーツを向ける。
「じゃあ、フレア・ショット!」
ボゴーン………
予想以上の大爆発。火は船全体を覆い隠し、爆発した場所から二つに割れた。
爆風で外に投げ飛ばされた狐影は、何事もなかったかのようにワイヤーを使って元の船へ帰還した。
「いやー、我ながらダイナミックな攻略だったな。やりすぎた気もするけど」
二つに分かれた船体はゆっくりと下へ墜落していく。助けを求める声が聞こえる気がするが、もうどうしようもない。安らかに眠れ。
「さて、他の人は大丈夫か……な?」
上空の海賊船に木々が巻き付き、船体を潰していた。
その様子はまるで、クラーケンに襲われた船だった。
「確か上の攻略はクロムとノアルだったかな。てことは、あれトレントなのか?」
続いて左翼は、とにかくボロボロだった。
船尾は黒く焦げ、船首はには大きな穴が空き、マストはポッキリと折れていた。
所々ペンキで色付けされ、甲板では常にボールが跳ね続け、新たな浮力として大きな風船が取り付けられてた。
「あの船はジェフリー行ったところだよな。あのまま連行するのかな?」
そして、今立つ甲板の上には、縄に縛られた海賊達と、ジェフリーたちがいた。
「アハ!狐影チャンも終わったノネ。大きな音がしたから、ワタクシビックリしちゃったよ」
「生きててよかったね」
「無事で良かったね」
「は、はは…」
この中で、慈悲を持ったプレーヤーはいないのだろうかと思う狐影であった。
次の月曜日朝五時に続きを投稿です。




