49 別れは旅立ちの時
「よし、武器の整備は終わったよ。あと小瓶と石も追加で用意しておいたからね」
「ありがとうございます。お金は……」
「いいよそんなの。そのかわり、イスティアで素材を採って持ってきてくれ。しばらくここから離れる予定がないからね」
「わかりました」
日付が変わり、狐影は出発の準備をしていた。
できれば夏休みが終わるまでにここを離れ、第二の島の島のゲートに登録しておきたかった。
ただ、日を急ぐのにはもう一つの理由があ、ホーからある情報を得たからだ。
「最近、プレーヤー専用の船が作成可能になったらしいのだけど、それから海賊を名乗るギルドが増えたのよ」
「海賊ですか……落とせますか?」
「炎竜討伐隊として出航した狐の羽衣ってギルドが、一隻だけ落としたと聞いたね」
何やってんですかホムラさん。敵討ちは必要ないよ。
「まあ、そういうことだから頑張って行っていきなさい。道中の黒狼に負けるヘマするんじゃないよ」
「はい!もちろんです」
……すっかり忘れてた。
「ホーさんも鍛冶仕事頑張ってください」
そして、ホーの耳元で囁く。
「青の鍛冶師としてね」
「もちろんさ」
……やっぱりバレてた。
なんやかんやで締まらない別れとなったが、狐影は黒狼の洞窟へ向かうのだった。
=☆☆=☆☆=☆☆=
「不気味な洞窟の中で行列ができる様子は、ゲーム特有の自然の現象です」
何言ってるのかって?ジメジメしてかつ薄暗いこの洞窟で行列ができているのです。こういったプレーヤーの集まりはよく見られるらしいです。
「とは言っても少人数で挑む初心者が多いせいか、不思議と進みがスムーズなんですね。倒れてるのはどっちかな」
「おいおい嬢ちゃん」
「じょ…!??」
「ここにいるのは全員スタンピードでレベルが上がったことで、黒狼に挑む条件を満たせた者達だ。もう怖いものなんてねえ」
「そ、そうなんですね」
「そういう嬢ちゃんこそ、見た感じシーフかその辺だろ。せめて、まともに戦える仲間を連れてきたほうが良かったんじゃ……おっと順番が来たようだ。じゃ、達者でな」
声の大きかったプレーヤーさんは、断末魔も大きかったという。
=☆☆=☆☆=☆☆=
「久しぶりに対峙するけど、やっぱデカいな」
威圧感ある顔面に、鋭い牙と爪。それを囲むように配置された取り巻きの狼達。
「あれ、あんな取り巻きいたっけ?まあいいけど」
この程度では障害にならない。何より、スタンピードで何度も戦ってきた相手だ。
「まず手始めにスタンショット&モクショット!」
取り巻きは痺れ、瞬く間に動けなくなった。同時に視界は黒い煙に紛れてしまった。
次々と狼の断末魔が響き渡り、ボスの黒狼へと近づいてくる。だが、このまま簡単に倒されることがなかった。
「おっと!?音で場所を察知したか。危ないな」
黒狼は爪による斬撃を放ち牽制してきた。取り巻きは全滅だが、黒狼に刃を向けるには至らなかった。
同時に視界が晴れ、お互いの姿が視認できるようになった。
「どうするかな。ここ結構明るいから影ないんだよね」
こうして考える間にも黒狼は攻撃を仕掛けてくる。先程の煙幕を放てばがむしゃらに攻撃してくるので使えず、奇襲に利用できそうな影もない。
「だったら作るか」
狐影は石を取り出し、天井めがけて放つ。
「ボムショット!」
天井が爆発し崩れてくる。落ちてきた天井の破片は影を作り出し、有利な地形と変化した。
「シャドーコーティング。影からコンニチハっと」
なんかダサい掛け声だなと思いながらも大ダメージを与えた。クールタイムが終わるまで通常攻撃を当てまくる。
すると黒狼は後ろへ下がり、咆哮を放つ。
「うるさい!」
耳のいい狐影にクリティカル……と言ってる場合ではなく、咆哮と同時に取り巻きが再出現した。
「やば、いや好都合か?」
取り巻きを一体倒し、シャドーコーティングのクールタイムを無くす。
黒狼にそのスキルを当てたあと、また取り巻きを倒す。その繰り返しで体力をあと少しのところまで追いこんだ。
「!?電撃の体制に入った」
狐影は攻撃を止め、とどめのタイミングを探る。
(電撃を放つ瞬間にスキができる。集中しろ)
力を貯め終え電撃を放つ瞬間、シャドームーブを発動し黒狼の首を切り裂き、即死クリティカルとなる。
「これで終わり。やっぱ短期決戦じゃないと弱いな」
己の力不足を噛みしめつつ、船着場へ向かうのだった。
=☆☆=☆☆=☆☆=
狐影がボスを倒してすぐの事だった。弱りきった黒狼を前にたたずむ人影があった。
「ハハハハ、ボスと言ってもただの大きなワンちゃんダネ。別にレベルをここまで上げる必要もなかったヨ。ククク、どんな友達と会えるかナ?楽しみだネ」
薄暗い中笑みが光る。
カラクリの道化 壊れたピエロ
狂気の笑顔
基本朝5時に投稿する予定ですよ。
でも今回は、2個同時に投稿したよ。




