22 正当防衛です問題ありません
白夜の種族はシルバー・フォックスである。それを今まで隠してきた。
バグが解消された今は隠す必要はなくなったが、今のプレイスタイルを変えるつもりはない。
では、正体を隠すため手加減しながら複数のプレーヤーを相手するにはどうすればいいか。
勿論正面からやりあっても勝ち目はない。
では自分の得意分野を生かしていけばどうだろう。
白夜の得意分野。それは…
「姿隠して奇襲する。それしかない」
バーチャル・ファイターで鍛えた身のこなしと集中力を持ち、姿を消せる白夜だからこそ取れる戦術。
初めに姿を消します。
次に姿勢を低くしながら相手の足を切り、切った後すぐに姿を消します。
また、次の標的を1番遠くの人物に狙いを定め動くことにより場所を特定しにくくします。
これらのことを繰り返せば簡単に複数のプレーヤーを無力化できる。
「まさか、こんなチビ1人に手も足もでないなんて…」
「チビは余計です」
このゲームに痛みはないが特殊な痺れが傷口に走る。イメージは長時間正座したときの足の渋れと似ている。
足を切られた場合、痺れて長時間動かせなくなる。
ついに誰も動けなくなった。
「こうなったら、私自ら…」
「言っておきますがこれは正当防衛ですよ」
「ふざけたことを」
「よしなさい、リン」
ホムラが眼鏡のプレーヤーを止める。
彼女の名は『リン』というらしい。
「どうして止めるのですか!?」
「少なくともあの子は暗殺者じゃない。わざわざ殺さずに無力化する人が暗殺者だと到底思えないわ。それに、攻撃させたのはあなたの私情でしょ」
「うっ…わかりました」
不満げにリンは答える。なぜか彼女から焦る感情が流れてくる。
「疑いが晴れたってことでいいですよね?」
「ええそうね。うちのメンバーがご迷惑を掛けました」
「ホムラさんですよね?あなたのギルドが大きいことは知っています。すべてを統一するのは難しいかもしれませんが、次は今回のようなことを繰り返さないよう呼び掛けてください」
「ええ、もちろん」
なんとなくだが、今の彼女はカリスマ性があふれている。だからと言ってリンの忠誠心は行き過ぎてる気がするが……。
「では、自分はこれで…」
「あ、お待ちください。せめてお詫びを」
「ありがとうございます。でも気持ちだけで十分です。では…」
「そういうわけにもいきません。私のモットーは恩を必ず返す…なので必ずお詫びをします」
「いや、恩とお詫びは別の意味でしょ」
「あ…」
カリスマ性どこ行った、と言わんばかりの赤顔。
足の痺れが引いたプレヤーたちが紳士の目でそれを見つめる。
「とにかく、必ず詫びますから」
「具体的に何をもって詫びるのですか?」
「え、えっとー…私のギルドに入れてあげる。君の強さなら幹部も夢じゃないわ」
「今のところギルドに入る予定はないので却下」
「え!じゃあ…レアアイテムを献上しますから」
「今特に欲しいアイテムはないので却下」
「へっ!それなら…お金!払える分払うから」
「有り金全部出せ…ていわれたら?」
「うっ!…今のなし今のなし。ほ、ほかにぃー…」
ついになにも思い浮かばなくなったようだ。
「思いつかないようなのでこれで…」
「あ!いいのがありましたわ」
中々帰らしてもらえない。
イライラしてきた中彼女が答えたのは意外なことだった。
「私の尻尾をモフモフする権利をあげます!」
周りは静かになる。紳士の目をしてた方々のあごが外れてる。
「ほ、ホムラ様。その神聖な尻尾を他人に触らせていいのですか!?」
「こ、こうなったらやむを得ませんわ」
今度こそと言わんばかりの表情を向けてくる。
「お言葉ですが、変態になりたくないので却下です」
ガーンと聞こえたと思いきや、ホムラが膝をつく。
「私は、お詫びの1つもできないダメな女ですわ」
ついに泣いてしまう。リンもあわてて慰める。
「ええぇ…」
「うわわああああんん!」
ここまで落ち込まれると逆に罪悪感がある。
「…なら、案内人になってくれるのはどうでしょう」
「うう、ぐす…え?」
「もうすぐレベルが30になるので次の島に行けます」
「はあ…?」
「そこで次の島まで案内をしてくれませんか?」
「え…や、やります!」
こうして、短い間だがホムラと共に旅に出るのだった。
あくまで趣味で書いた凡人作品ですが、面白いなどのコメント・ブックマークは作者のモチベーションを上げます。
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