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ゲームは狐と共にあり  作者: フィング
第5章 変わる変わるその色は
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116 あの日の、あのままに

 人生について問われたら、文で長々と書き記す。辛いってことを書く割には、オチに一周回って色々ドウデモイイってなるの。

 辛いは物理的に蹴ってしまおうって意気込みで人生過ごしてるの。バカだよね。でも、それがいい。

 これで何度めか。久しぶりにゲームへログインした。たかが数日開けた程度だったが、それでも新鮮味を帯びているのはこの姿だからだろう。


「白夜……ソーラに負けたあとヤケ飲みした時以来だったか」


 白夜とは、このゲーム内の本名にあたる。姿は白霊狐の耳と尻尾を無くし、地味なフード付きマントで体の多くを隠した姿だ。

 装備は狐影になる直前の姿のまま、変わりはない。


「変わりない……ってのは大問題かな? 少なくとも、傍から見れば初期装備も当然だし」


 今まではホーに頼んで装備やら武器やらを新調していたが、特注品であるがゆえに下手をすれば正体がバレてしまう。あまりややこしい事態にはしたくはない。


「お金はあるけど、一から揃えるならあんまり残んないかな?」


 基本散財することもなく、特にほしいアテムがあるわけでもなかった。これはただ単に素性を隠す為のもの。贅沢するつもりはない。かといって粗末なものを買うわけにもいかないだろう。

 まずはいくつかの店を適当に周り、無難な軽装備を買い漁った。


 そんな形で町を回る途中、興味をそそられる感覚がこの身に湧いてきた。ある店に目を惹かれたのだ。


「ここは、チャーム商店か。相変わらず派手な看板」


 始まりの町でも通ったことのある、特殊効果付きのアクセサリーショップだ。オカマNPCが経営することで有名。


「いらっしゃぁ〜い。ささ、じっくり見ていってねぇ〜」


「同じオカマとはいえ、流石に人は違いますか」


 来店し懐かしい気に浸りながらも、並べられた高級品を見てゆく。お金が溜まっているとはいったが、それでいてギリギリ足りるかどうかといった値段の物ばかりだった。


「ふーむ……高い。買えなくはないけど、いまいちピンとこないし」


 だが、この店にあるのはこれだけではない。それこそ、始まりにして結構お世話になったアレが。


「ガチャ……三回ぐらいなら普通に引けるか?」


 言うて安くはない。だが、運が良ければ唯一無二のレアアイテムを低下価格で得られる、ギャンブル要素だ。逆もまた然りである。


「考えるのめんどいですし、これで引いたものから戦闘スタイルでも決めましょうか」


 手をかざすことで簡単にお金を挿入することができる。数は三回。あまり緊張感は持たず、期待は一切していなかった。


忍者の懐(にんじゃのふところ):月弧(げっこ)

忍耐の静黙(にんたいのせいもく)

忍者の懐(にんじゃのふところ):突妬(つんと)


「……忍者になれとでも言うのか?」


 月弧(げっこ)は弧を描いて空を飛び、や突妬(つんと)は真っ直ぐ貫通力を持つ、それぞれ種類の違う手裏剣である。

 ()()に紛れて、忍耐の静黙(にんたいのせいもく)と言うものがあるが、いついかなる場所でも息を殺し、気配を探らせなくする巾着である。どのみち忍者装備と相性が良い。


「運がいいといえばそれまでだけど、自分の場合システム的な要因も考えられるから怖いんだけど」


「あっらぁ〜ん。いいアイテムを引いた割には、嬉しそうに見えないわねぇ」


「うわっ……ビックリした」


 引き続くアップデートにより、NPCも人と変わらぬ普通の会話を行えるようになったのだから、こうして話しかけてくるのも不思議ではない。

 不思議ではないのだが、それがプログラムされた行動だとは到底思えなかった。それ故か、不思議と恐怖を覚えた。


「……確かに素晴らしいアイテムです。ですがそれらのカテゴリーが自分にとって都合が良すぎるものばかりで、ズルしている気分なってました」


「あっらぁ〜ん、そんなことないのにねぇ。でも、確かに僕ちゃんなら上手に扱えそうね」


「見てわかるものなのですか?」


「な〜にぃ、ただのカ・ン・よ。でも私の直感は、今までチャームを付けた人達を見た経験からでたものよ。だからきっと、間違いないわ」


「経験ですか」


 たかがシステム、たかが機械。なのにそうは思えない。

 以前アルケミナ大図書館で読み漁った本の作者もそうだが、まるで本物の人間が宿っているようにしか考えられないぐらい完璧であった。


 本当に、ただ()()なだけなのだろうか?


「とりあえず素直に喜ぶことにします。機会があればまた」


「は〜い。またのお越しを〜」


 最初は懐かしいと思っていたが、それは違った。今はもう以前までのグランド・エデンと違うのだと。


「さて、直接メールを送るのはまずいか。狐影だってばれる。となると、返事は明日の学校で……かな」


 ある一つの想像が頭をよぎった。


 このゲームの正解は完璧なのではなく、本物だとしたら。それが真実ならば、自分が何者なのかという問いに大きく近づくのではないかと。


 こんなもの現実的だとは言い難い。といってもすでに、非現実的な体験を何度も経験してきた。


沙羅(ミラ)さんも菜野香()さんも、今日みたいに、朝早くに登校しているのだろうか。でないと、合流する前に煉達に捕まって面倒。ホント面倒」


 以前も、恐怖のあまり発狂した。自身がただ異常だっただけなのか、はたまた、一種のイベントだったとでも言うのか。それがわからないから、クレームの入れようがない。


「……ちょっと、人目のつかないところで、手裏剣の練習するか」


 いつだって、謎が増えるばかりでヒントもない。感情の向くままに動いているだけで進展もない。

 本当に何も変わっていない事実を痛感した。変わるには、どうすれば良いのだろうか。

 辛いってことを人に言えない。辛いって嘘なら人に言う。だから自分は天邪鬼。byフィング

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