115 仲を思う、故に友あり
我、学校で一番のストレスが部活だと思う。落ち着く家に帰ることがいとわず、故に何もかもが苦痛にしか思えなくなる。
でも退部はしない。
意外な始めましての思い出で談笑し、同じゲームを謳歌する者同親交を深めることができたその日。空いた時間に話す機会が見るからに増えた。
ただ不本意なことに、彼女らとの会話を楽しむ傍ら、女子特有の愚痴に対して共感を覚える事に、なんか焦りを覚えた。
何かと注目され、影で品定めのごとくその容姿や性格を評価してくる。これは決して女性に限る話とは言えないが、ここでは欲求の強い男性に対する不満であり、男である自分が共感すはずのない内容。
「不本意」
「みゅ?どうしたのぉ急に」
「あ、こっちの話ですのでお構いなく」
実際に向けられてくるのは感情そのものであり、それは口にするよりも正確な本心に値するのだからたちが悪い。
「狐白も周りから噂されることってよくあるんじゃないの。なんかコンプレックスみたいだけど、女性的だから。その、見た目が」
「そうですね」
悪気もなく、ただ本心のままに言われるその言葉に怒りを覚えることはなかった。というより諦めという言葉が近いだろう。
とにかくこの場で会話する環境に早くも慣れたしまった。この女子トークの場に。
そして帰りも、誘われるがままに共にすることになるのだった。
=☆☆=☆☆=☆☆=
放課後の教室はいつもがらんとしている。そんな場所ではいつも、あの三人組がたむろしているのだった。
いつもなら彼らは、狐白からかい遊ぶか、ゲームの話で盛り上がるかしていたが、なんともそんな空気にはなれなかった。
今日の聞くはずだった話題の種である狐白を朝から帰る途中まで独占するもんだから、実質今日話すことも何もない状況である。
何より、煉が不満げであるかぎりまともな会話はできないであろう。
「まあまあ落ち着けって煉。最愛の人さんに特別なおもちゃを足られたからって」
「ムカつくから止めろ」
「あー、言い方が悪かったな、すまんスマン」
過去では狐白に一生で大事な場面を邪魔され、今日という日は沙羅に貴重な情報源を掻っ攫われてしまった。なんとも言えない複雑な心境なのは明白であろう。
それでいて、なんでも笑い事ののようにヘラヘラしてくる巧弥巧弥を、ガチトーンで叱りつけるまでがお約束である。
「そんでどうすんだ煉。白霊狐や大図書館の鉄扉の話とか諸々聞く手筈だったんだろう。なんだったら、今日聞いたであろうことをミラから聞けばいいんじゃないか?」
「いや、彼女たちの口からは聞けないだろう。なんのために僕たちから狐白を引き離したんだ……って話になるだろしね」
「確かに、それもそうか」
「じゃあもう、鉄扉の攻略に移るのか?」
「情報がもう少し欲しいところだが、それがいいのかな」
有能な諜報員に裏切られた手前、慎重に動こうにも後先が見えずじまいだ。
例の『赤いピアス』は事実上、青空騎士団が生み出したものだと密かに判明している。それによって、ずっと縛られていた彼からすれば、いい迷惑だっただろう。
裏切った経緯はごもっともとしか言えないが、逸材だったのには変わりなかった。
「とりあえず下見として、少人数で攻略に向かおう。今は懐が寂しいから資金やら多くを動かせれないが」
「りょーかい」
「わかった。夜空騎士団の方にも声をかけとく」
こうしてギルド青空騎士団によるアルケミ大図書館の深部調査に向かうことが決まった。
いつかは知らぬ、茨の道へと導かれるがままに。
=☆☆=☆☆=☆☆=
連なる民家、人気のない道。今更ながらこの見慣れた道が少し寂しく思える。
「人気の無い道だねぇ」
「こうも人の目が無い道って、不審者とか好みそうなんだけど、大丈夫なのかしら」
「以前の買い物帰りに見ましたよ」
「え、マジ?」
「はい、写真もありますよ。多分ひったくり」
「写真って……なんというか、たくましいわね」
結局ひったくり未遂犯はどうなったのであろうか。未遂といえど実行には移していないから罪にはならないのだろうか。
「……話は変わるけど、その、アルケミナ大図書館の鉄扉のこと」
「ふむ……なんか、思い切りましたね」
「うちの青空騎士団は近いうちにそこへ攻略に向かうはずなの。だから、今日用事があるって煉達が来たのだと思う」
「だから、自分に聞きに来たと。いや違いますね。となると手伝い……ですか?」
「その通りよ。ただ今回は騎士団としてではなく、個人で行きたいの」
「これまたなぜ?」
当然の疑問符である。個人となると転移師のフォーミラと回復術氏の羊と、シーフの白夜の最大三人での攻略となる。
盾も剣も魔術師も、その他前衛が皆無なメンツに何ができるというのか。
「簡単な話よ。白霊狐と関係ありそうな物を探しに行くの。ついでに面白みのあるアイテムや本を取って行きたいわね」
戦闘は最低限に、求めるのはアイテムのみと。確かに生存能力で言えば、この上ない戦力とも言える。
ただ、一つ懸念があるとすれば。
「なんで、そこまで白霊狐のことを……狐影のことを気にかけるのですか?」
「単純な話、あんな顔して苦しんでたのだから助けたくなっちゃったのよ。どうすればいいのかは、曖昧だけどね」
「………」
結局この日は、返事も返せぬまま分かれてしまった。彼女の表上の善意は本物であって、決して邪な感情が隠れていることはなかった。
それでも、あの場所に少なからず恐怖を覚えたのも事実である。正直な話、確証があるわけではない。ただ……
「あそこには、トラウマを呼び起こすなにかがあった」
そう、得体のしれない何かが。
多分人付き合いが苦手で、多くのトラウマもある。
だから、教室の隅でぼーっとしている物静かな人物でありたいのに対し、現実は自身のやりたいように動いて周りから浮いて、気にせず能天気で、人から謎の生物扱いされる始末。
性格と理想が矛盾しているんですよね。我ながらほんと、制御が難しい。
故に思う、なりたい人、なりたい生き方、ありたい理想が、虚しくもこうして小説に出てると思う。
何も主人公じゃなくてもいい。でも、好きなものが多すぎて、みんなを好きに書いてしまう。理想をただ連想するままに、ここで残したくなってしまう。
完璧になりたいわけではない。ただ、やりたいことが、一人でもできる人物でありたい。この思いを、過去形になんてしたくはない。
なんというか、変なことを述べましたね。すみません。




