102 終われぬ戦い
投稿で来たー!ちなみに今までに二千文字以下で書いていましたが最近3千文字以上書くようになりました。もしよければ長い、短いなどの感想を書いていただけると幸いです。
…そもそも、この話までまともに読んでいる人いるのかな?変に長い作品になってるし(゜-゜)
長かったようで短い戦争の果てで、ついに二つのギルドが本格的に対峙した。
ただ、その顔ぶれの中に懐かしい顔を見たソーラは、その手に握る剣を下ろし声を放った。
「これはこれは、青空騎士団スミス団長のホーさんではありませんか。で、何故そちら側に」
「元を付け忘れてるよソーラ。勝手に抜け出したことを、まだに根に持ってんのかい?」
「そんなことは無い、だが名残惜しくてね。鍛冶師としての才能も惜しいが、それ以上に友として戻ってきてほしいただそれだけさ。そのためにも労働環境の改善といろいろ尽くしてきたんだ」
「アタシがいなくなったおかげでそうなったのなら結構。それでも戻るわけにはいかないのさ。こっちはこっちで子守が大変だし、そっちはそっちで事足りるほどの鍛冶師はそろってるだろうにねぇ」
「…相変わらず過保護なんですね」
「いい感じのムードですが、ちゃっかり子ども扱いしてきましたね」
「アタシにとって脳が成熟しきってないアンタらはガキ当然さ。まだ大人ぶってると思ってたジェフリーも今回の件でポカやったからねぇ」
「これはこれは、耳が痛い話だネ!」
「これまた愉快な人が集まりましたね、ホー」
「ええ、出会って間もないがまあまあ自慢できる仲間さね」
敵同士であれどこうも仲良く会話が弾む様子から、βテスターの頃からつちかってきた二人の仲が垣間見える。微笑ましいようで、それでもどこか寂しくもある。
そんな世間話の場となりつつある空気を利用して、他のメンバーも口を開いた。
「それにしても、統一感の無い衣装よね。こっちと違って」
「統一感を乱す装備を着たお前が言うなアーラ」
「うっせぇよカルマ、羨ましがってんのが分かんねぇのか!」
「まあ装備はともかく、ギルドのエンブレムをどこにも刻んでないのは気になるね」
「それはこちらがギルドを設立して間もないからです。そんな時期に攻め込まれるものだから、エンブレムなんて決める暇ありません」
「…やはり分からん。何故君たちはこんなスラムにギルドを構えたんだい?」
「またそれを聞きますか」
「当たり前さ。そのせいで我々はこうも対峙する羽目になったんだからね。そうでなくとも当然の疑問だ。場所が場所だから、どうしたってギルドとしての信用は下る一方。もし土地をご所望であるのなら、町の外にいくらでも残ってるだろ」
「そうなんですね。町に固執しなければ土地はいくらでも存在し、わざわざスラムを選ぶ必要はないはずだと。それを踏まえてジェフリーさん、何か異論はありますか?」
狐影を含め、皆の視線がジェフリーに突き刺さる。
「アー、特に深ーい意味はないヨ。まあ、スラムにいるプレーヤーと面識があったのでネ…ハハハハ」
「なに明らかな動揺をさらしてるんですか」
そう、ギルドの設立の提案及び土地の提供は全てジェフリーによって行われていた。さらに、青空騎士団から提示された不可侵協定なるものを突っぱねたのも、まごうことなきジェフリーだ。
嘘も裏も読み取れない人物であったが、よくよく思い返せば違和感ある行動ばかりだった。
「ではどうしてこんなことをしたのか、青空騎士団の前で話してもらいましょうか。ジェフリー」
「イヤー、話なんて…」
「ごまかすな、これは命令、話せ」
「ワオ、あの狐影が柄になく怒っていらしゃる」
「は・な・せ」
「…ハイ」
痺れて動かないグリコを除き、皆はジェフリーに耳を傾けた。
「事の始まりは犯罪プレーヤーに着けられる赤いピアスについての調査からだったネ。その末青空騎士団の権力がシステムにまで影響された結果だと判明したのだヨ。その証拠に、犯罪者名簿という資料とピアスの付けられたプレーヤーが一致したのサ」
「それって、あのガルムとかいう奴が言ってたのと同じ?」
「どういうことだ、リース」
「灰色盗賊団と対峙した時、そのリーダのガルムがそんなことを叫んでたはず」
「ああ、このスラム襲撃について知らせ回る際に彼には喋ったからネ」
「うちの資料が当り前の様に流出してる件」
「我々が犯罪プレーヤー共にシステム的な影響を与えてたからなんだ。そもそも、そのピアスと無関係な貴様には関係のない話であろうが」
「この馬鹿馬!こんなの悪用し放題でしょ。私たちの一任でプレーヤーを悪人に仕立て上げられるのよ」
「その通りだヨ。でもワタクシは何を持って悪とするのかそれを問いたいネ」
「ふむ、すでに我々に盾突く理由は明白になったと思うがまだ何かあるのかい?」
瞬間ジェフリーの雰囲気が変わった。相変わらず何を考えてるか分からないが、殺気立ってるのは肌で感じた。
「海賊も、盗賊も、全てプレーヤーから軽蔑される輩サ。でも、それはそれで彼らなりに楽しんでる形なんだヨ」
「では、彼らの行為が許されるべきだと?」
「その言い方は悪いヨ。恨みたきゃ好きに恨め、彼らは悪人を演じることを楽しんでるのサ。文字通り好きで悪人になってるのネ」
「なんだと?」
「君たちが騎士というあり方に誇りを持ってるのと同時に、悪人であることに誇りを持っているのサ。そんな彼らと交流をしたことがあるかネ?面白かったり、仲間思いだったり、カッコよかったりと裏を返せば真っ当な人間なんだヨ彼らは!」
ジェフリーの怒る理由がようやく理解できた気がした。騎士団も駒狐の皆も。
確かに、プレーヤーキルやアイテムの略奪などあからさまに嫌われる行為はしていた。だが、チートの様にゲームの秩序を犯す行為でもなければ暴言の様に特定の人物を貶める行為でもない。
どっちにしろ許されがたい内容だが、ゲーム的には許されていたことだ。
「はは、なるほど。本来我々が反感を持つべき発言であるはずが、つい納得してしまったよ。このゲームに定められた使命も無ければルールも無い、何やったって自由なオープンゲームだ。その自由の一端を潰す行為こそご法度なのかもな」
「議論は分かれそうだけどネ。君がそういう解釈をしてくれるのは大いに助かるヨ」
「…なんか、これから戦うぞって雰囲気じゃなくなっちゃったなソーラ」
「田中の言う通りだな。なんだか、馬鹿らしく思えてきた」
「悪人を罰せずここで引き下がるつもりか!あんな道化の言葉に騙されるなど…」
「もし異論があるなら君一人で、ここを攻略すればいい」
「ソーラ…」
「まあまあ、お馬さん。ここは引き下がりなよ」
「そうだよ、お馬さん。私達には勝てないんだし」
「あぁ?調子にのんなよガキが!」
「「きゃー、怒った怒った」」
「そんな軽い挑発にあてられんなカルマ。あの双子とは今後一切戦いたくないんだから」
「あのアーラが潔く負けを認めてる…だと」
「そこ、サルゥ!今私のこと馬鹿にしてんだろ」
「あ、いつも通りだった」
「ほんと、愉快なのはお互い様なようで」
こうしてみれば、役柄が違えど同じゲームを楽しむプレーヤーなんだと実感し、それゆえお互いに親近感を持ったのだ。
「さて、じゃあここら辺で解散とするか。今この場にいない人には後で話…」
だが、この中で一人状況を理解していない者がいた。いやできなかったというのが正しいか。ここまで空気過ぎて話題のも上がっていなかった彼だ。
「よーし!やけに長く思えたスタンが解けた。今こそ発動せん、奥義『死んだ宴の時』発動!」
スラム街全体が紫色のドームで囲われた。今この時、スラムは死者が集う地獄へと変わり果てるのだった。
「なんか会話で時間を稼いでくれてたおかげで無事奥義を発動できたぜ!」
「何やってんの…グリコ」
「へ?」
「今すぐその奥義をやめなさいよ!」
「と、取り消すも何も時間経過で収まるよ。少なくとも俺の近くに居ればアンデットに襲われないから安心…」
「違う!そういうことじゃない。今和解してたのよ」
「若い?」
「和解!」
「ほんとなの?ソーラ」
「ああ…ホントだ」
「えっと、そちらは駒狐の方々かな。ホント?」
「ホント」
「俺馬鹿やった?」
皆、静かにうなずいた。まだ混乱気味ではあったが、自身がしでかしたことはよく理解できたようだ。
「悪いが、この馬鹿の尻ぬぐいをするぞ。目的はアンデットの排除だ。もちろん駒狐の皆様も協力してくれますよね」
「グリコを後でぶん殴れるのなら」
「あ、それは全然いいですよ」
「ひどい!」
和解の末、始まる共闘。後に伝説の日として語られることになるだろうが、それは少し後の話だ。
終われなかった戦いとして。
次回は月曜の朝五時だYO!




