101 正義がなんだ
投稿が遅れて申し訳ありません。しかし、長期休暇に入ったためこの間ストックをため投稿することを誓います。多分
姑息で最悪な狙撃の時間をかいくぐり、無事合流地点となるスラムの中心部へとたどり着いたフォーミラ。
しかし、目の前に仲間の姿はなく代わりにガラスのようなもでできたドーム状の結界が形成されていた。
「なによこれ…魔法の類なの?これが!?」
あまりにも巨大なそれに驚きを隠せなかった。
何かから身を守る結界にも思えたが、周囲にそれを攻撃する者の姿はない。他に考えられるのは中に誰かを閉じ込める結界。もしそうならこの中に仲間がいることになるが、戦力としては劣る彼女一人では突撃することに躊躇してしまった。
そこへ、彼女にとっての一筋の光が差し込む。
「おーい!ミラだろ、そこにいるのは」
「え、リースと田n…サルじゃないの」
「わざわざ言い直すことないだろ!?」
「そんなことよりミラ、これが何なのか説明してくれる?」
「私も今来たばっかりで良く分からないの。ただ、私の予想だと中に仲間の誰かが…おそらく西部方面から来たアーラ達が中で戦ってる可能性が高いのよね」
「マジかよ、そいつらは無事なのか!?」
「分からないけど、それ以前にグリコ達から応援要請が出てるの。今やるべきことは、ドームの中にいるであろう彼らを救出し、グリコ達の元へ合流する事よ」
「なるほど了解」
「わかったわ」
フォーミラは中へ侵入するための魔方陣を展開した。そばにいる二人も武器を構え待機する。
ちなみに、作戦などを話し合うことは無かった。みんな、互いの対応力を信頼しているが故に省いたのだ。
「行くよ二人とも!」
転移魔法が発動し、結界の内側へ侵入した。そこで目に入るのは、数えきれないほどのモンスターと戦闘を繰り広げるアーラとカルマの姿が見えた。
「目標発見!」
すぐさま田中が飛び出し、奥に見える二人の元へ走る。リースはその手に持つ弓で援護し、フォーミラは再び魔方陣を展開し始めていた。
「アーラ、カルマ。助けに来てやったぜ。早速だがついてきてくれ」
「え、田中!?どっから入って来たのよ」
「そういうのは後だ。来い!」
「わ、わかったわ」
「協力感謝する」
もとよりダンジョン攻略、モンスター討伐のプロフェッショナル。数多のモンスターを田中は一瞬で駆逐し、それを援護するリースの射撃も絶妙であった。瞬く間に元の場所へとたどり着き、フォーミラは叫んだ。
「転移!」
結界の中から騎士団の姿は消え、残ったのはモンスターと高所から見守る双子だけであった。
=☆☆=☆☆=☆☆=
無事結界内から脱出を果たした騎士団のみんなは、転移を多用しながらグリコ達の元へと急いだ
「ねえ、私まだ状況の把握ができていないんだけど」
「グリコが奥義を発動する条件がそろったこと、そのグリコ達が襲撃され苦戦していること、そのため応援が必要ってことよ」
「分かりやすくて簡潔的な表現。そう言いまわし好きよミラちゃん」
「しかし、そこにはソーラとダンテもいるはずだろ。彼らが苦戦するほどの相手がこの場にいるとは考えにくい」
「カルマもそう思うか。あ、でもソーラが警戒してたギルドがあったじゃん。えっと、こ…こ?」
「駒狐よ」
「そうそれ。犯罪プレーヤーじゃないにもかかわらずこのスラムでギルドを構える変人集団」
「言い方…」
「そいつらならワンチャン…おい、ちょっと待て嘘だろ!?」
「どうしたのよ田中?」
田中が突然足を止め、頭を抱える。その顔は何処か悔しそうな表情をしていた。その横に立つリースも何か言いたげな様子だった。
「ランマが、別行動してたランマが死んだ。ついいさっきその通知が来た」
「え、マジで!?確かに今ここにいなかったけど…てかミラたちのグループは?ほかに二人いたでしょ」
「…とっくの昔に殺されたわ、かなり遠距離からの正確な狙撃で」
「そういう君らも、ほらメービィーがいない」
「…あ」
「あー、彼女なら生きてる。その、拉致されてるの方が正しいか?先ほどの結界内で我々が戦う様子を横目に小さいスライムと遊んでた」
「「「………」」」
重い空気から、冷たい空気に変わる。今思えば加護の付与のためメービィーを優先して連れてくるよう言われてた気がするが…
「行きましょ、死んだやつのことなんか気にしてる暇なんてないわ」
「そ、そうだな」
「まあ、危険を承知で来たのもあるしね」
「今はグリコ達の元へ急がねばな」
「では…転移!」
その転移でちょうど、グリコ達が見える場所までこれた。もちろん襲撃してきた黒い狐の姿も。
その狐にめがけ、皆は攻撃を仕掛ける。
「射抜け、ウィング・アーツ」
「爆ぜろ、ミル・ボム」
「飛ばすは豆、スリングショット」
「虚空を貫け、ライトニングランス」
「転移魔法、アボイド」
攻撃を受けていた三人は、フォーミラの技であるアボイドでその場から転移し引き離す。残された狐影は攻撃の嵐を受けることになる。
コンドルの形を描いた矢が飛んできた。それを跳躍して華麗に避ける。
空中で無数の爆弾が連鎖爆発を起こした。それをシャドームーブで影の上に転移し回避する。
着地した矢先、地面から痛々しいとげの生えた蔓が襲う。ハンドアーツから赤い石が放たれたちまち炎上し、その蔓を燃やしきる。
燃やした蔓の影から猛スピードで飛んでくる槍。それは己の柔軟さを生かし、間一髪で避けきった。
「嘘!?あれを避けきったの!」
「あの動き…通りであの三人が苦戦するはずだ」
「あー、ちなみに俺痺れて動けない状態だから後よろしく」
「何やってんのよグリコ!」
「まあまあ、そう慌てなさんなアーラさん」
「ほんとこの顔殴りたい」
「ところでメービィーは?」
「「「「…………」」」」
「死んだやつのことはほっといて、戦いましょ。数でなら圧倒的有利なんだから」
「あれぇ、死んじゃったの?回復性能でいえば不死身に近いあの子が!?」
「はぁ…めんどくさ」
めんどくさ…その一言で、周りの視線が一斉に狐影を向いた。
彼らからあふれ出す感情。それは明確な怒りであった。
「なめてんの?あんた」
「狐影って名があるので、そう呼んでください」
「名前なんてどうでもいいだろ。なめてんのかって聞いてるんだ!」
「あ、そう。なめてるかって言われたらそんなことはない。流石にこの数のプレーヤーに攻撃し続けられたらひとたまりもない」
いまいち、行動原理のつかめない彼に騎士団皆は困惑し始めた。そこで、ソーラが説いた。
「ふーん…じゃあ、何で君はいまだ剣を向けてくるんだい?」
「…戦いが終わってないから?」
「この戦いを無謀だと思うのなら、逃げたっていいじゃないか。犯罪プレーヤーと違って、スラムを守るメリットは無いはずだ。ギルドも、わざわざこの町に固執しなければ、いくらでも土地は残っている。それでも戦う理由は何なんだい」
もし、逃げることができたならできた。むしろそうするべきだったはずだ。そうしなかった理由と言えば青空騎士団が気に入らなかったこと。だがそれでは犯罪プレーヤーを守る理由として乏しいだろう。
そもそも相手は、大規模ギルドである。それ相応の理由失くして戦っていい相手ではない。
「もし理由を述べてほしいなら、そんなものは無いと自分は答えます」
「…は?」
常識との矛盾。そんな中で戦っていたことは分かっていた。でも、ここで逃げる選択肢なんてない。
「何がどうあれ、君たちをぶちのめす。そこに理由はないって言ってる」
「つくづく面白く、変な奴だ。君ら全員」
狐影の背後に、いくつかの影が飛び込んできた。
奇妙な笑いを向ける道化のジェフリー。
瓜二つの顔と黒髪を持った双子座テイマーのクロムとノアル。
パンクな装備とマントを身に纏った青の鍛冶師ことホー。
駒狐のメンバーがそろって、青空騎士団に立ちはだかる。
「さあ、決戦の時間だ」
次回土曜だぜ




