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ゲームは狐と共にあり  作者: フィング
第4章みんな個性豊か
102/132

100 道化の遊び

 今まで2000文字以下を目安に書いていたが、やはり少なすぎると思った。否、書きたい欲求のまま書き続けた結果3000文字以上になってしまった。


 まあ、私自身読み応えあっていいけど(*´з`)

 田中とリースを見送り、残って戦うランマ。

 獣の本能のままに動いていた先程とは違い赤い、妖気をまとってからは理性的で狡猾になっていた。それは別人としか思えないほどの豹変ぶり。


 それに対し、息を切らしながらも盾を構えて必死の抵抗を試み続けるバルス。先程まではわざと受けの体制で戦っていたが正真正銘防戦一方となっていた。


「おっさんよぉ…タフなことは評価するが、肝心な攻撃手段が皆無じゃねぇか。まあ一人だと限界があるってことは俺も理解してるさ。だから、()()では戦わない」


 ランマはその腰につけたケースからはとある石を取り出し、地面へと投げつけた。すると、魔法陣を展開し狼の群れが召喚される。

 だがテイマーの使役するそれとは違い、体は赤く半透明で美しいガラス細工のようにも見えた。どちらかといえば白霊狐の扱う銀霊に近いだろう。


「タイマン張ってくれるのかよ思いきや、結局数の暴力で来るなんてな。犬野郎」


「脳筋扱いはよしてくれ。あとこいつ等はウルフェンって名前があるからそう呼べ」


「いや、干支で言えば犬だろアンタ。なんで狼なんだよ」


「ほぉ、馬鹿なこと言ってる余裕があるようだな!」


 掛け声と共に狼の群れは左右へと展開し、バルスへ攻撃を仕掛ける。

 動き自体は機械的でそこらのNPCとそう変わらない。それでも、数が多ければ全てを捌くことは困難になる。


「くぅ…!小癪な」


 たまらずバルスも動き出した。

 しかし、術者本体となるランマめがけて剣を振るうがこの時冷静であればと後悔するであろう。単純な剣撃は簡単に見切られ、弾かれてしまう。


「俺を狙う考えは良かった、だが残念だったな」


 結局バルスは背後に残してきた狼によって押さえつけられてしまう。敗北を噛み締めながらも、まだ諦めきれないバルスはランマをにらんだ。


「まあ、お前はよくやったよ。だがご愁傷さまだ。悪人は相応の報いを受けることは当然なんだからな」


「そうだろうな、イラつくがその通りだ。だが俺らには救いの手が残っている、覚悟しとけよ」


「はいはい、殺れウルフェン」


 四肢を噛み砕かれ己の死を確信したその時、目にする。ランマの背後で笑う存在を。そして、バルス自身も微笑んだ。


「あとは頼んだぞ…」


 最後はあっけなく、ガラスのごとく砕け散った。悪人であれど美しく善人とも平等な死の演出だ。


「気に入らねぇ…あとは頼んだぞ?ふざけんな、悪人のくせして」


「そこまで言うことないんゃないかナ?アンタはちょいと落ち着くべきだヨ」


 背後から聞こえる気味の悪い声。振り返り目をやれば、自身を庇い砕け散る狼の姿と、攻撃を仕掛けてきたであろう道化が見えた。


「なっなんだ!?」


「あらら、防がれちゃったヨ。ワタクシ悔しい!」


「ホントに何だこいつ」


「オット自己紹介が遅れました。ワタクシ、ギルド狛狐に所属するカラクリピエロのジェフリーと申します」


「狛狐…ソーラに警戒するよう指示されてたが、確かにアンタは危なそうだ」


「マア、無駄話はホドホドに。トリッキーナイフ!」


 ジェフリーはその手に歪な形体をしたナイフを取り出し、連続して投げつけた。

 歪なのはその形だけでなく軌道もそうであった。不規則に曲がり、飛んでくるそれはまるで弾幕。避ける事はままならず、狼を犠牲にしてやっと乗り切れた。


「なんなんだよ、いろいろ突然が過ぎるだろうが!」


 文句を投げつけるが、奴に体制を立て直させる気はない様子。そこでランマは青い石を一つ地面に投げつけた。同時に身に纏う妖気が青く変色する。


「こい、ローム!」


 今度は青い石で構成されたゴーレムが召喚された。ランマはそれに身を隠し、懐からポーションを取り出し口にした。


 ジェフリーはかまわずトリッキーナイフを投げつけるが、全てゴーレムの巨体に阻まれる。


「そんな攻撃で倒せる相手だと思うなよ。どんな小細工も圧倒的な力の前では無力に等しい、それを身をもって感じてるか!」


 少々挑発的に声をかけるが構わずナイフを投げ続け、ゴーレムをハリネズミのごとく仕上げていく。


「くっそ鬱陶しい。ローム、そいつを叩きのめせ!」


 その重たい巨体でなりふり構わず突っ込んでくる様は恐怖を覚えることだろう。それでも、いまだナイフを投げる手を止めない。

 そのことに違和感を持ち始めたその瞬間、背後から激痛とも似た痺れが走る。


「グハッ…!?」


 そう、ランマは切られたのだ。正面にいたはずの道化に背後から。もし、メービィーの加護が無ければ死んでいたであろう威力の攻撃。確実に不意打ちによる即死クリティカルが発生していた。


 つかさず自身の剣を振るうが簡単によけられてしまった。更にその直後、ゴーレムが倒れ地響きが走った。その巨体で相手を押しつぶしたのかと思いきや、爆発し無数の針が飛び散る。ゴーレムは粉砕、ランマも少なからず針によるダメージを受けた。


「何がどうなってるんだよ!?」


「それでは種明かし。ワタクシの背後にご注目くださいネ」


 ジェフリーの背後に潜む影。そこには彼とうり二つの道化が立っていた。


「「これはドッペル・ドール、我が分身であり凶器でもある作品。一見ドチラが本物か見分けがつかない。さっきまで対峙してたのはドッペルの方だネ。ワタクシ自身は隠れてたから、不意打ちが通ったのサ」」


 二重に重なる不気味な声、恐怖も二倍だ。だが、こっちも群れで戦っている分何も文句は言えない。吐き出しそうになる言葉を噛み殺し、再び赤い石と青い石の両方を惜しみなくばらまいた。


「ロームに、ウルフェンだっけネ?そして纏うは()の妖気…ちなみにさっき飲んでたポーションの種類は魔力ポーションで、魔法を使うプレーヤーが重宝するものだったはずヨ」


「…何が言いたい?」


「考察するに、その身に纏った光は魔力なんじゃないかネ。使う石によって消費量が決まっており、二色が混ざり紫となった今はその量も二倍。違うかナ?」


「勘がいいな。まあ、今更バレたところで問題はない。これが正真正銘最後だからな」


「なるほどフィナーレだネ。短いながらも素晴らしいパフォーマンスをどうも」


「最初っから短期決戦のつもりだったんだ。あんたのせいで予定が狂っちまったがよ」


 ランマに小細工なる攻撃手段は持ち合わせていない。できるのはラッシュのみ。


「全員、決死で突っ込むぞコノヤロー!」


 掛け声と共にモンスター達は動き出す。また、先ほどのような不意打ちが二度と無いよう警戒も怠らない。

 魔力が、石が尽きるまでとことんやり切って見せる…そう奮起したその時だった。


 一本、正面にいるゴーレムらを貫通し一本のナイフと体から切断された()が腹に突き刺さる。

 何より驚いたのはその腕が動いたのだ。ナイフからその手はランマの首にしがみつき、先ほどのような爆発が再び巻き起こった。


 至近距離で起こったそれはランマに大ダメージを与え、同時に針で地面に拘束された。


「なんだ…クソッ!畜生!」


 気が付けばモンスターの軍勢も先ほどの爆発によって過半数が倒され、残ったのも痺れているのか身動きできていなかった。


「爆発の中心は言わずとも大ダメージ、さらにばらまかれるのは針と毒霧サ」


「そんなことよりもさっきのナイフはなんだ?腕ごと飛んできたぞ。どんな感性を持ったらそんな狂気的な攻撃ができるんだ」


「ダイジョウブ!予備の腕があるヨ~ン」


「は?」


「言ったでしょカラクリピエロってネ。その特性はバラバラボディー、刃物での攻撃が通らず文字通りばらばらになる能力サ。使いずらそうで多様性のある素晴らしい体だヨ」


「どうかな、気味が悪いぜ」


「あらそう…じゃあ、負けてください狂犬ランマ」


 ジェフリーは倒れるランマの横に立つと、ナイフを取り出し足元の彼に落とした。心臓を貫きガラスの破片が飛び散る。

 倒れ伏すモンスターもまた砕け散り、戦いのフィナーレを飾った。


 そんな中、ジェフリーは何か物足りなさそうな顔をしていた。


「見逃したあの二人はまだ無事かネ?まったく、バルスの奴は子供相手に何を吹き込んでるのやら…好きなように楽しませればいいものを。やれやれだヨ」


 空を見あげれば隠れていた月が顔を出し、真っ暗な街を照らしていた。


 道化は三人の仲に走る亀裂が、これ以上広がらないことをこの満月に祈る。

次回月曜朝五時投稿予定。

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