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特許系エッセイシリーズ

~謎の白い物体~まさか現状では後10年はかかると言われた成層圏プラットフォームが日本に突如として現れるとは

 6月17日において福島と宮城で確認された謎の白い物体を直接見た者はさぞ驚いたことだろう。

 日本の上空にそれなりの大きさの物体が長時間滞空しているというのは、飛行船がまともに飛ばなくなった21世紀においては極めて珍しい。


 そんな時に仕事で奥多摩に行っていた筆者は完全にその話を知らずに車移動をしており、事実を知ったのは翌日の朝のニュースなのであった。


 本当だったら当日に話題にして一筆書きたいところだが、1日遅れとなってしまいある程度情報も出揃い始めているのではないかと思う頃合だが……改めて私なりに書いてみよう。


 さて、問題の物体だが、FacebookなどのSNSにおける長望遠レンズによる高画質映像を見る限り3つの点が確認できる。


 ・物体はそれなりに巨大である。

 ・ソーラーパネルが確認できる。

 ・プロペラが付属し、回転している。


 とくに注目したいのが飛行中の旅客機の窓から撮影された映像だ。


 雲より上を飛んでいて、航空情報(NOTAM)の情報を確認する限り撮影者の乗る機体の高度は間違いなく1万mをオーバーしていた状況でさらに上に位置しているという事実。


 これらを複合的に判断したらもう間違いないでしょう。

 「成層圏プラットフォーム」の試作型あるいは実験型あるいは軍用実用型のどれか。


 飛行中の機内から見た映像は相当大きい。

 望遠レンズからの画像、飛行中の機内からの画像などを複合する限り、SNSでも言われてるとおり球体だけで直径30m~60m。


 プロペラ径も相当にあると思われる。


 そしてこいつは当時の気象庁における風向きのデータからして風に流されたのではなく、風も届かぬ高高度において自らの動力によって飛行していた飛行物体だ。


  飛行経路はアップされた画像の撮影地域から逆算できる。

 それと風向きが完全に合ってないし、ジェット気流に乗っていたらこんな長時間も留まっていられない。(気球で長距離飛行を行っている人のデータを見ればわかるが、いわゆるジェット気流というのはちょっとしたレシプロ航空機並の速度に到達してしまう)


 それが意図したものなのか瑕疵あるものなのかはわからないが、ともかく浮遊……つまりは流されるままに浮いていたのではなく飛んでいたのだ。


 こういう最新鋭技術の塊のようなものを肉眼で見る事が出来なかったというのは本当に運が無いなとつくづく思わされる。


 一方で成層圏プラットフォームについては興味もあったので少しばかり解説を試みてみよう。


 成層圏プラットフォーム。


 こいつは一体なんなのかと言えば、人工衛星と超高層の通信塔の中間に位置する通信システム用として活躍が期待されている新世代の通信中継施設である。


 昨今の材料工学と構造力学の発展は、より軽く、頑丈で、かつ長期の活動に耐えられる素材や素材を用いた構造を可能とした。


 一連の技術を集約させることで高度2万m以上……


 ジェット気流も届かぬ高高度での極めて長大な期間飛行継続可能な航空機というものを作れるようになってきているのだ。


 この真新しい通信施設の最大の利点はコストと運用合理性。


 従来まで、通信関係と言えばケーブルか通信塔を利用した無線通信か、20世紀終盤になってようやく実用レベルとなった人工衛星を用いたものしか無かった。


 これらはそれぞれ、ケーブルは整備性に問題があり、無線関係は高さが必要だが物理的制約により限度があったり、一度飛ばしたら修繕などが出来ず移動もままならずコストも高いといった短所が存在している。


 いくら民間企業がロケットを作って飛ばせる時代となってきて打ち上げコストが下がったといっても人工衛星の打ち上げ費用は安くない。


 減価償却の面から見てもそう有利と言えるものではないのだ。


 また、人工衛星というのは絶えず変化する需要と供給のバランスを整える上では不向き。

 ある地域では一定の時期だけ需要が爆発的に増えるが、普段は過小というような状況などに対応しづらい。


 ひたすら最大需要を見込んで調整していく必要性があり、こいつだけに頼ってしまうと際限のないコストがのしかかることとなる。


 そこで見出されたのが、移動可能でかつ地上にも比較的容易に戻ってこれて整備が可能な成層圏を飛ぶ航空機というわけだ。


 航空機なら必要な時に飛ばし、必要とされている場所へ向けて移動させることが出来る。


 雲の上を飛ぶ事で天候に一切左右されず、風も微小な高度で飛び続けることが出来る航空機。 

 燃料は基本太陽光発電による電気などを中心とするが、夜間でも飛行し続ける必要性から内蔵バッテリーでの長飛行も視野に入れる。


 この"成層圏プラットフォーム"と日本国内でもっぱら呼称される航空機については、主として2つのタイプが考案されて日夜飛行実験が繰り返されている。


 1つは飛行船型ないし気球型。

 いわゆる浮力をバルーン等で稼いで、翼などを持たずに飛ぶもの。


 もう1つは、NASAなど合衆国がご熱心な全翼機というような極めて全幅の長い翼だけの航空機のように文字通り翼の力でもって揚力を生み出して飛ぼうとするものだ。(全翼機以外の開発も盛ん)


 このどちらが優勢かというと、NASAは"気球や飛行船なんて無理無理。ソーラーパネルで飛ぶ航空機が一番進んでいる"――などと言ってるが、正直言ってどちらも実用段階にまで到達した存在はまだ確認されていない。


 ただ1つ言えることは、米国の民間企業は前者に力を入れてそれなりに成果をだしていることと……


 世界で至上初めて成層圏の高さにまで飛行船という存在を飛ばしたのは他でもない"日本"であるということだ。


 時は20世紀末


 インターネット時代が幕を開けて実を結び始めた頃、すでに日本の国内の一部技術者は今後の通信関係におけるコストの増加と通信施設の逼迫に危機感を抱いていた。


 さらにいうと数十年後には訪れるかもしれない異常気象の数々もこの頃より一部研究者によって提起されており、より安価に日本の高高度の大気状況を観測できる観測装置というのも望まれていた。


 成層圏プラットフォームはそのような中において新たな市場開拓と日本が戦えるかもしれない航空関連事業を夢見て文科省を中心に立ち上げられたプロジェクトだ。


 表向きの宣伝は地球温暖化などの環境汚染に対してのモニタリングなどを主として行うなどとしていたが、当時提起されたばかりの3G通信の通信中継施設としての運用も視野に入れた壮大な構想だったのである。


 そして2003年8月。


 ついに日本は世界で始めて高度1万6400mの上空に全長46mの飛行船を飛ばす事に成功したのだった。

 

 ここで重要なのは、こいつは動力を持っている飛行船だということ。

 気球ではない。


 実はこの成功の前年、日本は気球でも最高到達高度の世界記録を更新している。

 直径約54mの薄いフィルムで作られた気球により高度5万3000mに到達しており、その翌年の話であった。


 いわば成層圏プラットフォームというのは、戦後航空機関係の開発を中断させられた日本において、研究を継続できたがゆえに唯一世界の追随を許さなかった航空機の分野だったのだ。(唯一あっちの本土を爆撃しようとしたアイツはさして脅威とみなされなかったらしい)


 この成功を皮切りにさらなる技術的躍進を……という期待が当時には十分にあった。

 本当に十分にあったのである。


 しかしこの計画は飛行船の飛行を成功させた約10年の間にいつの間にか消滅した。


 まあどうせまたどっかの政党がやらかしたんだと思うが、本当にいつの間にか予算申請もなにも無くなって話がパッタリと聞こえなくなった。


 理由として考えられるのは2つの矛盾を当時の技術では解消するに至らなかったこと。


 1つは通信拠点として用いる場合は基本的に住宅街など人が多い上空に飛ばさなければならないが、そういった装置を満載した飛行船の規模は大きくなり墜落時におけるリスクを解消できない。


 例えば山間部などで鉄塔を解体してその分を成層圏プラットフォームに置き換えるといった話はなくはないが、それはコスト的には赤字運用となり適していないのだ。


 もう1つは、日本の行政システム的に申請を出さねばならない所が多すぎて飛行ルールが確立されていない点。


 こういうのはこの国のお役所体質というのがいっつも妨害する。

 ドローンに関しては一時期野放しになっていた一方で、高高度を飛行する航空機に関しては制約だらけとなっていたのである。(日本での飛行試験は太平洋上だったり北海道だったりしたのはそのため)


 お役所そのものが構想を立てていたのに、地方自治体などまた別の役所が障壁となる……そんな矛盾に対抗しきれなくなり、最終的に名前すら殆ど聞かない代物となってしまったのだった。


 SNS上でも技術系の人間が"成層圏プラットフォーム構想はとっくに国内で頓挫したはずだ"といったコメントを述べる様子も見受けられたが、私もとっくに消滅したものと思っている。


 だとしてその実験型ないし軍用実用型が日本に飛んできたのだとしたらなんたる皮肉。


 あの頃本気で世界を目指して日夜研究に没頭していた技術者なんか、本件の関係者じゃなかったら血涙ものだろう。


 といっても、一方で私は本件が実は日本の極秘開発した成層圏プラットフォームの試作型であるという疑いももっている。


 なぜなら、あの手のバルーンを利用した40m以上の超大型の成層圏プラットフォームでまともに飛行を成功させているのは日本以外だとアメリカしかない。


 だがアメリカのタイプは飛行高度では日本に負けていた。


 要因は構成部材の質。

 この手の軽量化が求められる複合素材関係においてこと日本はここ30年不動の世界一である。


 そもそもが1万6400m飛ばせたのだって最新鋭の複合素材を用いてのことだ。


 高高度飛行が成功しない要因は気圧。

 海底探査と逆で高高度においては外に逃げようとする機体によって内部からすさまじい圧力開放が浮遊物体内において生じる。


 これに耐えられる素材でなければ浮力を確保できない。


 浮かぶために必要な浮力……つまり内部へ充填させるべきヘリウムなどの気体の容積とそれを支える構造物の耐久性のバーターが高高度浮遊にとって極めて重要。


 あのNASAが諦めている最大の原因はそんな素材を自国で調達できると思っていないからだ。


 唯一自国で調達できるこの国だからこそ世界記録を未だに保有しており、そして本気を出せば今回の浮遊物のようなものは作れるという話は実は2年前のちょっとした成層圏プラットフォームにおけるとある宇宙関係の組織の職員が話していた事。


 他国では出来ないがうちらならもう出来ると、そんな力説をされていた。

 あの頃よりこの手の素材はさらに進化している。


 今なら1万8000m以上も可能だと、そういう風にね。


 実際はロケットを飛ばすよりもよほど各種申請が煩雑で、ロケット1発分よりよほど金がかからずに作れるらしいが、技術的な問題よりも政治的な問題によって実現できないとの事だった。


 あれから2年。


 ほぼ確実に高度は1万5000m以上。

 サイズ30m~60m前後の巨大物体は突如として福島と宮城に現れた。


 まるでISSを気球で吊るしたような見た目のそいつは、間違いなくソーラープレーンの一種でありながらも、気球ではない動力をもった飛行船だった。(なぜか浮かばせるバルーンは球体形状だったが)


 あれが何を意図して飛んできたのか、何がしたかったのかはわからない。

 しかし筆者はかつてのプロジェクトの破綻から、どうしても変な夢を抱いてしまう。


 誰かがひそかに研究を続けて実を結んだのではないか……みたいな夢を。

 真実は関係者だけが知るわけだが、少なくても自分の周囲にそのような者はいないようだ。


 まったくもって情報は流れてこない。

 むしろこっちが知人から質問攻めされる始末である。


 可能か不可能かでいえば国内で作れるが、そんなの管理してるとしたら日立市のあそこぐらいしかないけど、あの場所にそんなものは無い。


 でも一方で飛行経路がかつて1万6400m飛んだ飛行船とほぼ同じというのは非常に気になる。

 そういう点に様々な思いが交錯するのだ。


 ……ところで、ふと冷静になって仮に他国がやった場合一体どこがやったのかという話になる。


 まず第一にSNSで騒がれる中国、韓国というのは無い。


 今の状況で飛行船に使う部材を調達しようもんなら、その量から間違いなく経産省が止める。


 この情勢下においてこの二国に軍用にも応用できるような材料関係を安易にその手のものに流用できるような方法で輸出はしないし、そんなガバガバな輸出管理などしていない。


 中国においては材料は調達できてもその運用は民業の限定的な、日本も正確に把握できる分野に限られる。


 一応、偵察用飛行船という開発はちゃんとしているしインドなどに向けて実際に偵察活動に用いている。


 ただし高度は1万m未満。


 1万m以上に関しては今後10年で順次達成と述べているが、彼らが実際はもっと飛べるのに低く過小報告しているとは思えない。


 過大に見せて公にするパターンはあるが、この手の兵器の性能で高度を偽る事は滅多になく、8000m程度が限界。(全長30m級)


 よって中国は自力でその素材を開発しない限り、横流しでもなければ不可能。


 韓国?


 まず実験機すら無いのに虚勢張って10年後の夢物語を語るような所は申し訳ないがコメントする気も無い。


 研究はしているだろうが、飛ぶという前提にすら立ってない。


 となると残るは民間企業が一定の成果を出している米国と、そして航空技術関係ではどの領域まで到達しているのかわからないぐらい危ないロシアぐらいだろう。


 ……が、そのロシアも大型高高度飛行可能飛行船については90年代に実証用のモデルを作ったものの財政危機で頓挫し、日本などがご熱心だった頃に民間企業が計画を復活して飛行可能モデルの開発を行ったが最終的にお蔵入りしている。


 やはり政府からのコメントを見てもアメリカではないかというのが筆者の本音だ。

 DARPAあたりがずっと研究してて、公に開発を公言している企業もある。


 しかし仮にアメリカとなるとどうしてもアレが思い浮かんでくるよな。

 パトレイバー劇場版二作目だ。


 目的が中国の監視や偵察中に何らかの理由で日本に来てしまった~とかではなく、単純に日本の国防意識を揺さぶるために――とかだったら完全にパトレイバー2なのだが、いやいや飛行船は後半に登場したもんだしそれが1発目に飛んできてもインパクト弱すぎるだろとかツッコミ所はたくさんある。


 政府コメントを見る限り、まるでかなり以前から飛行物体の存在は認識していたみたいだけど、自衛隊のスクランブル飛行の形跡もなけりゃ周囲に自衛隊が展開した形跡も無い。


 逆にそれが不自然にすら思える。

 それが許される組織なんて同盟国ぐらいしかないからね。


 だから筆者はアメリカだと思っているが、アメリカのどの企業かはわからない。


 ちなみに自衛隊が出動しなかったのはF-15の到達可能高度(1万5000m少々)より上を飛んでいたからだという話もあるが、だとしても敵性国家から飛来してきたならば接近を試みる事ぐらいはするだろう。


 そして日本のレーダー網に穴がなければほぼ間違いなく海上で打ち落としていたはず。


 考えてほしい。

 飛行物体の大きさは相当なもの。


 仮にこれが日本の住宅街に落下したら冗談抜きで死傷者が出る。

 重量に関しては非常に軽量であるとは思われるが、軽量だって高さが高さ。


 落下した細かい部品……例えば螺子類だって十分な威力となるだろう。


 ゆえに日本国内上空にきてしまえば"ミサイルで落とせ"なんて安易なことも出来ない。


 それこそパトレイバー2ではないけど、敵性国家ならヘリウム以外のガスに毒ガス仕込んでる可能性だって十分にあるわけで。


 例えば日本が2003年8月に高高度に飛ばした飛行船は高高度にてヘリウムが膨張した際、弁を開くとヘリウムによって押し出される別のガス(1気圧下の空気)をもう1つのガス袋に封入させていた。


 これは高度を保つには非常に重要で、空気の量が減れば減るほど軽くなって高度を上昇させる高度安定用のガス袋。


 急上昇による気圧の変化で破損してしまうことを防ぎ、同時にどうしても防ぎきれない浮遊用のヘリウムガスの微量な放出に大して酸素を抜くことで調整して長時間飛行を可能にできるようにした機構である。


 弁を開けばどんどん軽くなって上昇していくというのは、ある意味で潜水艦のバラストタンクに通じるものがある。(あちらは高圧の酸素でもって潜水艦内部を満たした水を輩出)


 類似した方法でこちらは高度を上昇させるわけだが、例えばここに毒ガスを仕込むという事は不可能ではない。


 だから仮に敵性国家が間違いないならば、すぐさま政府発表で領海上空にて破壊した事とそれが飛行する映像が出たことだろう。


 これが無いというのはレーダー網に穴があったか、見過ごさなければならない理由があったのかのどちらか。


 写真ではソーラーパネルが1枚破損しているように見えるが、飛行に支障は無さそうに見える。

(高解像度の画像を見る限り、ソーラーパネル自体が太陽へ向けてゆっくり動いてるので故障しているように見えない)


 結論から言えば見過ごしたのだろう。


 そもそも本土上空にて確認できる段階にて第一報を政府から出すのは難しい。(もっと言うとこれから本土上空に到達する見込みという発表も難しい)


 自衛隊が発見したとかいう場合、まず自衛隊という言葉と国旗を見るとSAN値が0になるような輩が軍靴がどうの騒ぎたてる可能性がある一方で、"いやいや打ち落とせよお前ら何やってたんだよ"――ってな感じで自衛隊自体に負のイメージが無い者もその状況に不満を持つことだろう。


 官房長官によるコメントである「状況は常に警戒監視できている」という言葉は、ある意味で全てを表しているのではないか。


 我々はそれを事前に発見できていたが、何らかの理由で具体的行動はしなかったと、そういうことだ。


 これならヘタに事前に報告したり、なんらかのアクションを起こすよりかよっぽど騒がれないように幕引きできる。


 国防意識を持っていて批判するような連中なんてTV関係者には殆どいないはず。

 ヘタにそうやって意識が高まる方が彼らにとっては喜ばしくない状況になるだろうからね。


 だから「コレナンダー?」――だけでニュースで取り上げて、領空侵犯などの問題提起を一切行わないような取り扱いにした。


 コメンテーターもコメントしないけど航空関係の専門家が昼のニュースなどで出てこないあたり、そういう問題提起をしたくないTV局の思想+事を荒立てたくない政府の考えが一致しているのだと思ってしまうのは私だけでしょうか。


 そして中国向けにそんな忖度はしないでしょう。

 もう来賓については無期限延期になってんだから。


 じゃあ逆に高高度飛行可能偵察気球などを積極的に開発しているとされるDARPAなどが関係していたとなると、それこそ筆者の頭の中ではつい先日亡くなられた方のボイスが脳内で再生されてしまう。


「なぁんてこった。実用型の成層圏プラットフォーム……それの試験型なんて……」

「そんなにすごいものなのか。あれは?」

「ああ。今の西側の大半の国じゃ、民間企業が全長20m程度の小型の評価試験型をそこそこの高度で飛ばすので精一杯だ」

「だが米軍も似たようなものを研究しているんじゃなかったか――」


 みたいな感じでずっと会話が脳内再生される。

 というか今日の仕事中脳内ではずーーっとパトレイバー2の荒川さんの声と、MGS3のシギントの声がループ再生されていた。


 「冷戦終結後、拡大の一途を辿るアジアの軍拡競争の流れの中で一向に軍備の増強を図ろうとしない日本に対して、彼等は根強い危機感を持っていた。そして、平和惚けの日本の政治状況を一挙に覆すべく、彼等は軍事的茶番劇を思いついた……憶えてますかね? 26年前。日本の防空体制と国防意識を揺さぶったミグ25の亡命騒ぎ。あれの再来ですよ」――みたいな話が。


 というかどうせならバルーンの形状を樹木っぽくして、木の根っこあたりに青いLEDでも光らせればよかったものを。


 そしたら別の意味で大騒ぎになってTwitterのサーバーが落ちたかもしれないのに。

 サービス精神が足りてないね。


 そしたら脳内ループにもう1名メガネをかけている男が加わったのに。


 ……で、そんな脳内再生中に同時に思い出したのが、自分の国が一番高い所まで飛ばせる飛行船を作れる事について。


 そして成層圏プラットフォームにかつて力を入れていたという事実。


 その2つが密接に絡み合い、そして最終的に結論を出すことは出来なかった。


 だとしても、成層圏プラットフォームは軍事ではすでに実用段階で、何らかの活用が期待されているのではないかということは頭にインプットされた。


 今回の飛行物体に関しては各所のマニアやら何やらが様々な方面から解析を試みている。

 中にはアマチュア無線を用いて飛行物体から電波が送信されているのではないか探っていた者もいたが、少なくても地上に向けて何らかの周波数による電波照射を行っている様子はなかったという。


 そこは当たり前だろうね。

 だって成層圏プラットフォームの操舵は基本衛星通信だもの。

 こいつほどGPSを有効活用できる航空機もないでしょう。


 飛んでる高さが高さだから、地上から操舵を試みる場合は専用のかなり大規模な施設が必要だし、そういうのがコントロールを試みていたら今の時代ならその手のアマチュア技師が何らかの証拠を掴むでしょう。


 でも違ったというのは、最新鋭の成層圏プラットフォームの思想に漏れずに衛星通信による手動操縦または遠隔操縦かGPSによる自動操舵のどちらか。


 地上から観測して一切の電磁波の流れがなくコントロール不能であったのではないかという考え方は、それそのものだけを理由にそう述べるのであれば結論を出すのがやや性急すぎると思われる。


 というかあの高さでコントロール不能ならずっと滞空しているはず。

 望遠レンズでの映像ではプロペラの動きが良く見えるし、プロペラの動きと向かう方角は同一。


 事実として残るのは、高高度を飛ぶ大型の物体は、静かにゆっくりと太平洋側へと飛んでいった……それだけだ。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 今回米国を飛んでいたのが中国のだとするとこっちはどうなのか気になります
[良い点] また浮かんできたみたいですね。色々謎が多い。
[良い点] 日本飛行船社が倒産した時には、飛行船の未来について話したり、日本の技術力を畏れた某国による政治的な何かをあれこれ語ったものです。
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