表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Heart Loser  作者: Nicola
114/125

114 Backward Z

「ゼカリア、か……。いい名前」

「あ、そ」

「……そんな顔するなら、――後悔したんなら、俺とはもう関わらないで」

「――なァ。名前って、親がくれる最初のプレゼントなんだぜ」

「うん?」

「だから、大事なもんで、捨てるもんじゃねェって教えてもらった。ちゃァんとその名前で生きていけるまで、世話する誓いなんだって」

「……それは、君にあんなこと頼んだ俺への説教? 少し、遅くない?」

「違ェよ。別に、お前の名前なんてどうでもいい。変えようが捨てようが僕には関係ねェ。――でも、お前に名前をつけたのは僕になった」

「うん……? ありがとう?」

「だから、僕はお前の親みてェなもんだろ。お前に大事なもんを――その名前の生き方を与えたのが僕なら、その責任くれェちゃんと背負ってやる」

「どういうこと……?」

「最後まで、僕ん手を離れるまでは……僕がちゃんと守ってやるから」

「何言って……。俺は大人だし……。そりゃあ殺してくれは大げさに言い過ぎた。だけど、偽名をつけてくれただけで十分な――」

「うるっせェ。……僕は、お前を……僕みてェに捨てたくねェの」



「テレンス、そこの砂糖取って」

「……テリー」

「うん?」

「てめェにテレンスなんて呼ばれたくねェよ、ボケ。テリーでいい」

「じゃあ、テリー」

「おう」

「砂糖、取って」



「あはははは! ザック、バッカみてェ! それくれェ避けろよ!」

「……テリー」

「超絶だっせェ! やべェ、腹痛ェ!」

「テリー!」



「――ッ! 今、銃声ッ」

「わ、びっくりした! 寝てたんじゃなかったの」

「ザック、今、銃声が……」

「……隣の部屋の誰かさんが盛大なくしゃみをしただけ。――テリー、落ち着いて。あんな大きな抗争が終わったところなんだ。暫くはセミチェルキオもリネアも大人しくしてるはずなんだろ?」

「くしゃ、み……」

「うん、くしゃみ。君のボスは無事だったんだろ。ご褒美に、ほら、それも貰ったんだろ?」

「これ……、うん」

「だから、大丈夫。落ち着いて」

「……でも、僕――また、ボスが撃たれるんじゃねェかって……。僕がいねェ場所で、撃たれたら、どうしよう……」

「そのボスが君に休むよう言ったんだろ? それで君がここへ休みに来た。だから、しっかり休んで。ほら、寝ていて」

「でも、ザック……寝たら夢に見んの。――あの日、ボスが撃たれて、死ぬ夢。僕じゃなくて、ボスが死ぬ夢なんだよォ――!」



「最近の君は見ていられない」

「へェ。じゃァ見るんじゃねェよ、ボケ」

「君が俺のところに来るくせに。……あのボスのことばっかり。気にしすぎじゃない? 他に気の紛れる話とか――」

「うるっせェ! てめェに分かるかよ! うるっせェ! うるせェうるせェ――!」

「わっ! テリー危な――ああっ、もう! グラスなんて投げるから……!」

「ああァ! くそったれ! なんで、なんでェ! あの日、僕がいたのに、なんで――」

「テリー、落ち着いて」

「ボスが撃たれて――なんでェ……! 僕が、僕がボスの前に立ってたら、ボスは――」

「もう終わったんだ。落ち着いて、テリー。テリー!」

「僕が守らなきゃならねェのに――僕が撃たれなきゃいけねェのに――なんで! なんで、僕がいたのに……! なんで、ボスが撃たれて――!」

「動くと危ない! テリー、座って! 薬持ってくるから……」

「うるっせェ! 僕にはボスしかいねェんだよォッ!」



「分かった。ボスだけじゃねェよ。てめェも大事大事ィ。……てめェの言うこともなんでも聞いてやる。てめェのためになら、なんでもしてやる」

「そういうことじゃないだろ……。あとさ、そういうことは軽く言わないで」

「うるっせェ。責任取るっつっただろ。そのためなら、なんでもしてやるよ」



「……てめェ」

「なんでもしてやる、君はそう言った。責任、取るんだろ」



「ようく来てくれたな。例の話も随分と引き伸ばしちまって悪かった。あんなちびの坊主でも俺の大事な戦力なんでな」

「いえ。それが分かっていてこの話を持ってきました。話を聞いてもらえるだけでも、ありがたいです」

「ふん、そりゃあ結構だ。ところで、心変わりはしてねえだろうな、ゼカリア」

「はい、もちろん」

「ようし、それなら話を進めてやろうじゃあねえか。セミチェルキオからテレンスを手放す用意は出来てる」

「それじゃあ……!」

「おいおい、喜ぶには少し早えんじゃねえか? ――うちの可愛い可愛い愛するファミリーの一人をやるってんだ。無条件でやるわけにもいくまいよ。さあ、ゼカリア。お前さんは、本当にテレンスを救えると思ってんのか。覚悟があるならくれてやろうじゃあねえか。――ケン、契約書を持って来い」

「はい、ボス」

「そんなに怖い顔をするな、ゼカリア。なあに、難しいもんじゃあない」

「お持ちしましたぜ。――ゼカリア、サインをこちらへどうぞ。そして、血判を」

「テレンスは先に合意した。内容もきっちり理解させてある。――お前さんがここにサインをするなら、その瞬間からテレンスはお前さんのもんだ。テレンスを生かすも殺すも、ぶっ壊すも、お前さん次第だ」



「てめェは、絶対に許さねェ」

「許さなくていい。俺もそんなものは望んでない」



「俺は、絶対に君を救うんだ……」


【ゼカリアの過去】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ