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第4話 -洞窟-

 再び私はタカとクプゥちゃんに目を向けるが、タカは相変わらず私の視線に気づかずにクプゥちゃんと楽しげに遊んでいた。その時、クプゥちゃんがつまずき、倒れそうになった。それをタカが受け止めクプゥちゃんを抱きしめる。そんな二人を見た私は一層胸がざわめき出し、耐えきれなくなってその場を離れた。


「タカのバカッ、変態……幼女好きっ……」


 歩きながら私は、そんな罵倒を一人つぶやく。頭では事故だと分かっていても、抱き合う二人を見ていられなかった。

 機嫌を損ねた私は一人寂しく湖沿いをトボトボ歩く。すると、いつのまにか地面が砂浜じゃなくなり、辺りは大きな岩がいくつも佇む場所に出ていた。こんな場所もあるんだと辺りをキョロキョロしていると、一つの人一人入る事ができそうな穴を見つけた。覗くと奥に続いているようだ。好奇心に駆られた私は恐る恐るその穴に入っていったのだった。


 穴の中は思ったよりも広かった。入り口こそ小さかったが、入ってしまえば中は立てるくらいの広さがあり下にどんどん続いているようだった。


「なんだか自然の洞窟じゃないみたい……まっすぐ下って行っているような気がするし、足元も階段みたくなってる。ここはいったい――」


 だがその時、足元が濡れていたのか私は足を滑らしそのまま奥に向かって転げ落ち、衝撃で意識を失った。


「――うっ……ここは……?」


 しばらくして意識を取り戻した時、私は開けた場所にいた。小さな広間のような場所で、これ以上洞窟は続いていないようだ。とにかく戻らないと……


「いっ! 足が……」


 立とうとした私は足に激痛を覚え、暗い中、自分の足を見る。転げ落ちた時に付いたのか、足を怪我してしまったようだ。痛みで立ち上がれない。自力では地上まで上がれないだろう。仕方なく私は誰か来るのを待つしかなかった。


「何やってるんだろう、私……」


 ひとりぼっちの洞窟の中、私のつぶやきが静かに響く。自分勝手に嫉妬して、自分勝手に拗ねてその挙句にこんな目に遭っている。暗闇の中、うずくまった私は一人顔を伏せて泣いていた。かすかに漏れる泣き声はつぶやき同様、静かに洞窟内に響き、私の下へ帰ってくるだけだった。


(タカ……!)


 私は心の中でタカを呼ぶ。このまま誰にも見つからず、ずっとここに取り残されるのだろうか。そんな恐怖が脳裏を掠める。


(いやだ。タカにもう一度会いたい。もっと一緒にいたい……! わがまま言ってごめんなさい。嫉妬しちゃってごめんなさいっ。バカって言ったことも、変態って言ったこともちゃんと謝るから……だからもう一度、謝る為にタカに会いたい!)


 すすり泣きながら、私は心の中でそう懇願する。誰に対してのものでなく、ただ漠然とした願い。この時、私は無意識にタカの言っていた“神”に願っていたのかもしれない。あるいは、タカに対しての謝罪と懇願だったのかもしれない。暗闇の中、沈んだ私の心はひどく混乱していた。ただ、タカに会いたい、その想いだけは確かだった。


「ミィア……?」


 静寂の中、開けた洞窟にしっかりとした声が響き渡る。聞きたかった声、呼んでほしかった名前。私はとっさに顔を上げる。会いたくてたまらなかった、タカの姿がそこにはあった。


★次話はこの作品の根幹をなす、あるものが登場します。また、次話はちょっと更新が遅くなると思います。4日後……くらいかな?

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