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第4話 -就活I-

「にぃに、どこいくー?」


 色々あったがやっとの事でミィアを()いた俺は、クプゥと一緒に街を歩いていた。楽しそうに俺の手を握りながら歩くクプゥは、俺に向かってそう聞いてくる。ちなみに、学校では俺が反抗軍を撃退したことを隠しきれないので被らなかったが、街に出る時は勇者だなんだの騒がれては困るので帽子を被るようにしている。


「あーそれなんだけど、遊ぶ前にやりたいことがあるから、それが済んでからでもいいか?」


 ミィアを撒くためとはいえ、クプゥと遊ぶって言ったからな。でも今はやるべきこと、そう、仕事を探さないと。


「うん、いいよ。なにするの? クゥもてつだう!」


「ありがとう。それじゃあまず、職業紹介所って場所を探さなきゃいけないから一緒に場所を聞くの手伝ってくれ」


 俺はそう言うと、クプゥと一緒に街の人に職業紹介所の場所を聞いて(まわ)った。やがて、一つの建物にたどり着き、俺たちはその中へと入って行ったのだった。


「――というわけで、仕事を探しているんですが何かありませんか? 力仕事でも構いませんので出来れば学校の時間外で働ける所がいいのですが」


「んーいくつかタカ様のご都合に合う仕事をご紹介出来るのですが、素性のわからない方を雇いたがるかどうか……」


 職業紹介所にたどり着いた俺は、受付の人とそんな会話を先程から続けている。ちなみにクプゥは待合用のイスに座って暇そうに脚をパタパタしている。あまり時間をかけるとクプゥが駄々をこねそうだ。とはいえ、身元のわからない人を雇いたがる職場はあまりないらしい。世知辛い世の中だ。


「そこをなんとか。どんなにきつい仕事でも構いません!」


「ですが、そう言われましても……」


 俺の押しに身を引きながら困惑する受付に、なおも懇願(こんがん)する俺だったが突然背後から声をかけられた。


「君、仕事を探しているのか? だったらうちで雇われないか」


 驚いた俺はサッと後ろを振り返る。そこにいたのは大柄の、オーク族ほど大きくはないが、オルガに負けず劣らずの隆起した筋肉を(たずさ)えた、捻じ曲がったツノが頭の左右から生えている男だった。


中尉(ちゅうい)! いらしていたのですか。こちらへはどういったご用件で?」


 ツノの生えた男を見るなり、受付は急にかしこまる。中尉? 軍人か何かか?


「よしてくれ、もう退役した身だ。なに、この街に面白い男がいると聞いてな。わしの管轄でもあるから、ちょっと様子を見にきたのだよ」


 そういうと、男は俺を見てかすかに笑う。


「まあ、こんなに早くザパルクの勇者殿に会えるとは思ってもみなかったがね」


「ッ!!?」


 この男、帽子を被っている状態で俺がザパルクの勇者と気付いた。只者じゃないな……俺はとっさに身構え、男から一歩後ろに下がる。いざとなったらクプゥを掴んで逃げよう。だが、ツノの生えた男はにこやかに笑い


「まあまあ、そう警戒するな。少なくとも君がこの街を救ってくれたことは知っているし、感謝している。それに、君が反抗軍の誘いを断って奴らと敵対するのなら、わしら(・・・)は君の敵ではない」


と言った。

 どうやら学校襲撃以外に、このあいだの誘拐事件のことも知っているらしい。俺の後ろで、俺がザパルクの勇者と知った受付が口元に手を当てて驚きながらガクガク震えているのをよそに、俺は男に警戒しながら質問する。


「あんた、何者だ? 俺をどうするつもりだ」


 すると、男は急に笑い出し、俺の質問に答えてくれた。


「ハッハッハッハッ! これは失敬。わしの名はムォウという。これでも昔は軍人でな。退役した時の階級が中尉だったこともあってか、今でもわしを中尉と呼ぶ者が多い。だが、君は無理にそう呼ばんでいいぞ! 普通にムォウでかまわん。それで君をどうするかだが最初に言った通り、君にはぜひうちに来て欲しいのだ。まあ、こんなところで立ち話もなんだ。ここには確か特別雇用のための個室があったな。そこを使わせてもらうぞ」


「ははは、はい! どうぞ!」


 ムォウと名乗る男はそう言うと、一つの部屋に入っていった。俺も半信半疑ではあったが、とりあえずクプゥに待つよう言い、意を決してその部屋の中に入っていった。

★ 新キャラ、ムォウ中尉とは一体何者なのでしょうか!? 次話で明らかとなります!

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