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第14話 -世界II-

★ 今回はタカくんとオルガによる第1章最後のバトル回となります。なんとか、第1章を書き終えました! 最終話は自分的にはかなりいい感じに書けたと思うので楽しみにしていてください!

それでは、本編へどうぞ!

 どれだけの時間が経っただろうか。ほんの数秒しか経っていないのか、何時間も経ったのか、わからない。先程から俺とオルガは、ずっとお互いの動きを警戒して睨み合っている。よほど俺から感じたチカラが凄かったのか、オルガはピクリとも動かない。そういえばさっき、オルガは俺の動きが見えなかったと言っていた。それなら隙をついて攻撃できるかもしれない。

 長い膠着(こうちゃく)の末、最初に動いたのは俺だった。全力で走り、警戒しながら大回りでオルガの背後にまわると、俺はオルガの背中に向かって拳を突き出す。最初、俺を見失ったオルガだったが走った後に舞った砂埃で軌道を読んだのか、オルガを警戒して大回りしたせいで攻撃が遅れ、すんでのところで(かわ)されてしまった。


「おおっと、あぶねぇな。間一髪だったぜ! 見えねぇとやっかいだな! だが、だからこそ(たぎ)るってもんだぜ!」


 ギリギリのところで俺の攻撃を躱したオルガはピンチをもろともせず、嬉しそうに叫ぶ。そして、今度はオルガが俺に向かって突進してくると、手に持つ棍棒を思いっきり振り下ろした。ミィアの時のクレーターを(かんが)みてなるべく遠くに避けた俺だったが、オルガの一撃は凄まじく棍棒が地面に激突した衝撃で爆風が起き、俺の体をさらに遠くへ吹き飛ばした。なんだかデジャヴを感じながらも、今回は意識を失わなかった俺はすぐさま立ち上がりオルガの位置を捉えようとする。だが、新たにできたクレーターにはすでにオルガの姿はなく、周りを探す俺の頭上からオルガの雄叫びが聞こえてきた。


「オラァ! これでもくらいやがれ!」


 ハッと上を見た俺の視界の中央に、棍棒を振りかざしたオルガ映る。とっさに俺は避けたが、再び爆風に吹き飛ばされてしまった。だが、今回は体勢を崩さずに着地し、すぐにオルガを視界に捉えた。再びオルガは俺に向かって突進してくるが今度は俺もオルガに向かって突進し、棍棒を振り上げてガラ空きになったオルガの胴めがけて拳を突き出す。流石に避けられなかったのか、俺の拳はオルガの腹にクリーンヒットした。


「ウグゥ」


 腹を殴られたオルガは微かにうめき声を上げて立ち止まると、振り上げた棍棒をゆっくりと下ろした。俺は当てた拳をオルガから離すと、距離をとる。俺が殴ったオルガの腹は依然、(ひび)一つ無い鎧で守られている。


「くっ……クハハハハ! いい一撃だったぜ、タカ! やっぱり闘いはこうでなくっちゃな! 俺をもっと楽しませてくれよ!」


 俺の一撃が全く効かなかったのか、余裕を見せるオルガは嬉しそうに笑う。マジか……どんだけ硬いんだ、あの鎧。壊れないにしても、もうちょっと痛がってくれよ……あまりのオルガの強さに俺は苦笑いする。だが、そんな俺をよそにオルガは棍棒を構え直すと、再び俺に襲いかかってきた。


 俺とオルガの闘いは、しばらく膠着状態を続けていた。オルガの強烈な一撃を俺はすんでのところで躱し、俺も何度かオルガに攻撃を当てていたが頑強な鎧にそのことごとくを防がれていた。


「ハハハハハ! やるじゃねぇか! 俺と互角に闘える相手はそうそういねぇからな。嬉しいぜ!」


 そう楽しそうに笑うオルガはあれだけ暴れまわっているにもかかわらず、疲れる様子を見せない。それに対して、約一年引きこもりをしていた俺は強くなったとはいえ、流石に体力が限界を迎えていた。まともに殴れるのはあと一回が限度かもしれない。だとしたら、最後の一撃は確実にダメージの通る、鎧で守られていない顔を狙うしかない。どうにかしてチャンスを作らないと。そんなことを考えていると、再びオルガが話しかけてきた。


「オメェ、ホントに強えな! メスオークにこんな強えヤツがいたなんて知らなかったぜ!」


 またか。ここに来てからよく女と間違われる。非常に腹立たしい。頭に血が上った俺は


「俺は男だ!!!」


と言いながら、とっさにオルガの腹を殴った。

 しまった。ついカッとなって……案の定、鎧は傷一つ付かず、代わりに体力を使い果たした俺はその場で片膝をつく。その隙を見逃さなかったオルガは俺に目掛けて棍棒を横薙ぎに振るった。だが、体力が底をついた俺は躱すことすらできない。身動きのできない俺はそのままオルガの攻撃をモロにくらい、はるか後方の校舎まで吹き飛ばされてしまった。その一撃は凄まじく、体力のなくなった俺は指一本動かせない。校舎の壁にもたれかかり、必死に呼吸する俺は朦朧(もうろう)とする意識の中、確信する。


(ああ、やっぱり。俺は主人公じゃなかったんだな……ただの引きこもりの俺に、誰かを助けることなんてできない。こんな恐ろしい相手に勝てるはずがない。俺はただ、別の星に流れ着いた『孤独な流星(ソリチュード)』だったんだ……)


 自分に勝ち目がないと諦めた俺の目の前に、オルガが立ちはだかる。そして、変わらぬ不敵な笑みを浮かべると、ゆっくりと棍棒を振りかざした。


「オメェが男だったとはビックリしたが、なかなか楽しかったぜ、タカ。だが、もう終わりみてぇだな。オメェの名前、忘れねぇぜ!」


 オルガは俺に向かって最期の一撃を振り下ろす。俺の人生もここまでか。親の亡くし、学校にも行かず、怠惰な生活を送っていた俺の死に場所がまさか遥か彼方の異星だとはな……死への恐怖が全身を覆う。胸を締め付けられるような感覚に襲われる。動けなくなった俺は最後の力を振り絞り、スッと重い瞼を閉じた。


 ――暗闇の中、鈍い音が響き渡った……

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