表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/87

第1話 -異変-

★ ここからやっと第1話です。

気を失った(たか)くんが目を覚ました時、彼が見たものとは!?

では本編へどうぞ!

 吹き飛ばされてから、どのくらい時間が経っただろうか。

 暗闇の中、最初に聞こえてきたのはサラサラと風になびく草の音。そこから徐々に体の感覚が戻って行き、心地よく吹く風や暖かい陽の光、爽やかな草花の匂いを感じ始めた。


「うっ……」


 最後に全身の痛みを感じ、ぼんやりとしていた俺の意識は覚醒し、目を覚ました。ゆっくりと広がっていく視界の中に、眩しく輝く太陽と不気味なくらいに真っ青な空が広がっている。だが、そんなものはどうでもいい。それらよりもずっと手前、視界の中央で麦わら帽子のようなものを被った少女が、俺の顔を心配そうに覗き込んでいた。

 目鼻立ちの整った顔、凛としながらもパッチリとした瞳を持つ綺麗な少女が、長い黒髪を風になびかせながらこちらを見つめている。


「天使……」


 ポツリ、俺の口からそんな言葉が(こぼ)れる。死んだと思い、目が覚めてこんな美少女がいたら誰でも天国に来たと勘違いするだろう。だが口を開いた少女の言葉を聞いて、俺は一気に現実に戻された。


「ブォジア?」


 聞いたことのない言葉だ。死んで天国に来たのなら、知らない言葉で話しかけてくる天使がいるだろうか。そんな不親切な天国には、正直行きたくない。となると、思い当たるのは外国か? そういえば、日本は冬だったはずなのに、ここは春のように暖かい。だがそうなると、隕石墜落の衝撃で外国まで飛ばされたってことか? そんなバカな。

 身を起こし、全身の痛みに耐えながら今の状況を考察していると、またも少女が何か話しかけてくる。だが何を言っているのかさっぱりわからない。とりあえず少女に向かって肩をすくめ、首を傾げてみた。これで伝わるといいのだが。

 それを理解したのかどうかはわからないが少女は話すのをやめ、代わりにこちらをまじまじと見つめ始めた。中学一年くらい、いや下手したら小学校高学年くらいの可能性もあるか。小柄な身長、華奢な身体の少女でも、美少女に見つめられるのはちょっと恥ずかしい。というか、引きこもりしてた俺にその視線は痛い。

 気恥ずかしくなり頬を指で掻くと、その動作を見た彼女は俺の首に視線を落とす。すると、少女は何かに気づいたのか表情が明るくなり、自身のポケットから幅の広い、無地の平たい紐のようなものを取り出した。そして、自分の首に()めている模様の付いた紐を指差し、取り出した方を俺に差し出した。


(俺にもそれを同じように首につけろってことか? テレビとかでよく見る友好の証ってやつかな)


 そんなことを考えながら、俺は紐を受け取る。想像していた重さより少し重いと感じながら、それを彼女と同じように首に嵌めた。


「うっ……」


 紐を首に嵌めた瞬間、首から頭にかけて一瞬ビリッと電気が走ったような感覚がして、俺は苦悶(くもん)の声とともに表情が険しくなる。だがすぐに痛みは(おさま)り、元の感覚に戻っていった。


「今のは一体……静電気にしてはかなり痛かったし、この紐に何か仕込んであるのか?」


 もちろん、他者に対しての質問ではなく自分に向かっての独り言だったのだが、予想だにしていない返事が返ってきた。


「知らないの? それは万能翻訳機って言って、どの種族の言葉も自分の言語に自動で変換されて聞こえるものだよ」


 いきなり日本語が聞こえた俺は、ビックリして声の主を探す。しかし、周りには黒髪の少女と俺しかおらず、ただ草原が向こうの方まで広がっているだけだった。辺りをキョロキョロ見回していると


「おーい、聞こえてる?」


と再び女性の声が聞こえ、声のする方に顔を向ける。


「うおっ!」


 そこには先程まで座っていた少女が()ってきたのか四つん()いになりながら、俺の顔を至近距離で覗き込んでいた。驚きと恥ずかしさから思わず後ずさりする俺を見て、彼女はくすくすと笑い、ひとしきり笑うと


「ごめんなさい。あんまり驚くから笑っちゃった」


と謝った。

 その声は先程から聞こえていた日本語の声だった。


「あれ? さっきまで変な言葉で話してたのに、日本語で喋ってる……どうなってるんだ?」


 また、自分に向かっての問いかけだったが、自分で答えを出す前に少女が答えてくれた。


「あなたの言葉、日本語って言うのね。さっきも言った通り、この首の翻訳機がお互いの言葉を自動的にそれぞれの理解できる言葉に変換してくれているの。だから、私にはあなたの言葉が私の言語で聞こえているんだよ」


 そういうと、少女はニッコリ笑った。さっきの笑っている時もそうだったが、美少女だけあって笑うとめちゃくちゃ可愛い。加速する心拍に、俺はロリコンじゃないと心の中で言い聞かせつつ少女に話しかけた。


「そ、そうなのか? 便利なものが発明されてたんだな。知らなかった……」


「へー今時、万能翻訳機を知らない人の方が少ないと思うけど……あ、そうだ! まだ自己紹介してなかったね。私はミィア。あなたは?」


「俺は宮ノ内(みやのうち) (たか)


「み、みや? のちたか? 変な名前だね」


 そうか、ここは外国だから苗字と名前が逆なのかもしれない。


「宮ノ内が苗字だから、空だけでいいよ」


「そう、タカね。よろしく! ところで、どうしてタカは傷だらけでこんなところに寝てたの?」


 まあ確かにそう思うよなと思いながら、正直信じてもらえないような話だが下手に嘘をつくのもよくないだろうと、俺は素直に今までの経緯を説明した。


「――というわけで気がついたらここにいて、君が俺の顔を覗き込んでいたってわけだ」


 だが、そこまで言うとふと自分に違和感を感じる。


(あれ? 俺ってこんなにすらすら他人と話せたっけ?)


 この疑問の答えを探そうと腕を組み、考えようとしたがそれをミィアが遮る。


「隕石の爆風で他国まで飛ばされた、なんて信じ難いけど嘘をついてるようにも見えないし……」


 今度はミィアが腕を組み、考え込み始める。それを聞いて、俺は今一番聞かなきゃいけないことがあるのを思い出した。今、一番知らなきゃいけないのは自分の現在地だ。ここがどこか分かれば、大使館とかに行って日本に帰ることができるかもしれない。


「そういえば、ここってなんて国なん――」



 だがそれを聞こうとした時、突然強い風が吹き抜け彼女の帽子を持ち上げる。しかし、たまたま俺の方に風が吹いたおかげですぐに帽子をキャッチできた。


「はいこれ。あぶなかっ……た――」


 掴んだ帽子を彼女に返そうと帽子を差し出すが、彼女の姿を見て言葉が詰まる。なぜなら帽子の脱げた彼女の頭の上に、ひょこひょこ動く可愛らしい三角の獣耳のようなものが二つ、生えていたからだった。

★ というわけで来ちゃいましたね、別の世界!

タカくんの飛ばされた場所は、異世界モノでよくみかける、ケモミミの生えた獣人が居る所のようですね! といっても、キーワードにがっつりケモミミって書いちゃってるので気付いてた人もいると思います。

ちなみに尻尾は生えておりませんのであしからず。

今回も誤字、脱字等ありましたらご指摘お願い致します!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ