表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/87

第11話 -蛮

★ 更新遅れました! インフルエンザにかかってしまい、数日ダウンしてました。今はもう熱もなく体調もいいのですが、いかんせん咳が止まらなくて困っています……では遅れましたが、本編へどうぞ!

 突如、グラウンドに現れたオーク族の男たちは近くの生徒たちに襲いかかってきた。だが、怪我をした者は少なく、グランドにいた殆どの生徒と教師は無事に逃れられた。だが、さっきの爆発を見る限り、校舎の方にもオーク達がいるようで校舎に逃げ込むわけにもいかず、みんな散り散りに逃げている。私も早くここから逃げないと。そう思った私は学校から出ようと走り出す。


「キャーーー!!!」


 しかし、一人の女生徒の叫び声に、私は足を止めて振り返る。そこにいたのは恐怖で腰を抜かしたのかへなへなと地面に座り込み、目の前までやってきた巨漢のオークに怯えるミュウだった。ふと、私の頭の中で昨日読んだ本の内容が鮮明に浮かぶ。


(――オーク族。顔の横についた小さな耳と大きな下顎の犬歯が特徴。大きいもので三メートル近くする大柄な体で、恐ろしく力持ちの種族――)


 あんな大きな身体で力の強い種族に、私なんかが勝てるはずがない。だが、理屈とは裏腹に私の足はミュウの方へと向かっていった。


 オークは高く持ち上げた拳を、ミュウに向かって振り下ろした。だが、恐怖で動けないミュウは、それをかわすことができない。オークの拳が彼女に当たろうとするさなか、私は間一髪のところで彼女を掴んで拳をかわした。地響きとともにオークの拳は地面に激突し、小さなクレーターを作る。あんなのをまともに食らったらひとたまりもないだろう。


「ミ、ミィアさん……? どうして……」


 ()けた衝撃でやっと我に返ったのか、ミュウはなぜ私が自分を助けてくれたのか、わからない様子だった。


「私にも分からないよ。でも、体が勝手に動いちゃったの。……それにまだ、友達になってくれるかどうか、返事を聞いてないから」


 そういうと、私はオークの方に向き直す。流石にこの距離では易々と逃してはもらえなさそうだ。こうなったら一か八か戦うしかない。勢いよく飛び出した私はすかさずオークの懐に飛び込み、胴に一撃を撃ち込む。


「ウグゥ」


 だが、オークは軽く(もだ)えただけで、あまり効いてはなさそうだった。一度距離をとり、今度は相手の脚を蹴って体勢を崩すと、背中からもう一撃入れる。オークはそのまま体勢を崩し、膝をついた状態になった。


(これならいける!)


 そう確信した私は膝をつくオークの前に立ち、低くなったオークの顔めがけて回し蹴りを入れた。


「ウガァァ!」


 今度は効いたのか、オークは叫び声を上げてその場に倒れこみ動かなくなった。おそらく気絶したのだろう。それを見た他のオークは恐れをなしたのか、皆私から一歩後ずさる。よし、あとは彼らが警戒しているうちに、ミュウを連れてここから離れればいい。オークたちの様子を伺い、ミュウを連れて走り出そうとした、その時だった。

 ――ズシン、ズシン、ズシン

 オーク達の後ろから大きな足音を響かせながら三メートル近くあるだろうか、全身を鎧で覆い隠した一際(ひときわ)大きなオークが現れた。鎧のオークは倒れたオークと私を見ると、不敵な笑みを浮かべ私に話しかけてくる。


「おう小娘、ちびっこいクセになかなかやるじゃねぇか! オメェ、なんて名だ?」


 鎧のオークは手に持っていた大きな棍棒を私に向ける。このオークは明らかにほかのやつらとは違う。見た目だけじゃなく、全身から強さと余裕を感じられる。私では絶対に勝てない。どうにかして隙を見て逃げないと。


「わ、私の名前はミィア。あなたは?」


「おおっと、こりゃ失礼したな! オレは反抗軍オーク隊隊長、オルガだ。ミィア、オメェの名前覚えたぜ」


 そういうと、再びオルガは不敵な笑みを浮かべる。反抗軍……確か種族間の平和条約を快く思っていない者たちが集まって出来た組織だったはず。何故こんなところに……悩む私をよそに、オルガは嬉しそうに私に話しかけてくる。


「オレはなぁ、闘いが大好きなんだ。特に強いやつと闘うと最高に(たぎ)る! オメェもなかなか強そうだ。ちょっくらオレと殺り合わねぇか?」


 嬉しそうに語るオルガは棍棒を構えた。これはマズイ状況だ。私がオルガに勝つのは万に一つもありえない。だが断れば、私達二人とも殺されるだろう。


「……わかった。だけど一つ約束して。彼女は逃がしてあげてほしい」


 二人やられるくらいなら私がオルガと闘って、負けてもいいようにミュウだけは逃がしてもらう。こうするしかない。


「あー……まあ、いいぜ。校舎の方で、もう何人か殺ってるだろ! 一人ぐらいわざと逃しても上は怒りゃしねぇ」


 そういうと、オルガはミュウの方を見て手であっち行けと合図した。それをみた私はミュウに


「ミュウさん、私は大丈夫だから、早く逃げて」


と指示する。

 だがミュウも、とてもじゃないが私がオルガに勝てるとは思えないのか


「で、でもそんなことをしたら貴女が……どうしてそこまでしてくださるの? わたくし、貴女に酷いことばかり言ってきたのに……」


と聞いてきた。


「んー、確かに酷いこと言われたし、正直言ってミュウさんのこと苦手だったよ。でも、ミュウさんも一人ぼっちだったから、もしかしたら同じ一人同士、仲良くなれるのかなって思って。なんだかんだで嫌味ばかりだったけど、毎日話しかけてくれたのってミュウさんだけだったからもしかしたら私、嬉しかったのかも。一方的だけど私今、ミュウさん……ううん、ミュウのこと友達だと思ってるよ。だから逃げて。あなたまで死ぬことはないよ」


 私はミュウを立たせて後ろを向かせると、彼女の背中を強く押した。私に押されたミュウは数歩よろめきながら歩いたが、立ち止まるとそのまま振り返らずに、私に話しかけてくる。


「わ、わたくし……た、助けを呼んできますわ……だから、絶対戻ってきますわ……絶対ですわ!」


 その声はひどく震え、今にも泣き出しそうだった。それでいい。プライドの高いあなたが逃げることを選ぶなんて似合わない。助けを呼ぶため、そうやって自分を騙してここから離れればいい。たとえ助けを呼ぶのが嘘だとしても、私はそれでも構わない。そう思った。


「うん、わかった。だったらほら、早く行かないと……ね!」


 私の言葉を聞いたミュウは腕で目元を拭うと再び走りだし、どこかへ行ってしまった。そんな彼女を背に、再び私はオルガを前に身構える。正直言って怖い。それでも逃げ出すわけにはいかないんだ。私が勝手に思い込んでるだけだけど、やっとできた二人目の友達の彼女のために!

★ 第一章終盤に来てついに現れた中ボス的存在。そして後半は、タカくんがついに能力を解放する!?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ