地下室
九話の続き
地下室の扉が開き、中に入ると、天上に設置されている自動魔灯が付いた。
普通の民家とそう代わりのない石造りの内装が姿を表す。
「これは魔灯ですか?」
それに驚いたルルが、魔灯を見上げる。
「正確には自動魔灯、魔素の吸収、変換、点灯、消灯まで自動でやってくれる。」
「そんなものが…」
地上にあったものは魔素を貯めることができる魔昌石、もしくは魔力で充ちている魔石を使用したものだ。魔素を吸収することは原理的に難しい。何がそれを可能にしているだろうか?とルルの疑念はさらに深まる。ここはどこなのか?と。
「ここには地脈が通っているからな、魔素はたっぷりあるんだ。もし地上の魔灯を全部これにしたら街中の魔素が枯れてしまう。」
「地脈ですか…確かに地脈は多くの魔素が地中に流れているものですから、そこから溢れる魔素は多いですが……それでもこの光源を確保できますか?」
「ん?あぁ、光源だけじゃない。ここにあるすべての魔道具は地脈から魔素を組み上げて使っているからな。」
「地脈から魔素を汲み上げる!?そんなことが可能なのですか!?」
「その様子だとこの技術もまだのようだな。」
ふっ、と笑う俺にルルは頭を抱えている。
「魔素の吸収は人の身体を媒介にしてじゃないとできないはずなのに、それも地脈からなんて、どんな莫大な量…。それをできる魔法装置があるってこと?えっ、あ…まさか…」
すると、なにかに気がついてしまったような、そんな情けない声をあげた。
そして、ギギギーーと効果音が聞こえるような動作でゆっくりとこちらを振り返ると。
「ま、まさかこの地下に魔素のポンプ代わりの人が大量に薬品に浸けられている…とかじゃあないですよね…」
蒼白とはまさにこのことを言うのだろうというくらい真っ青な顔をしているルルが、そこにいた。
「なるほど、その発想はなかった」
獲物をみるような目でルルをみると、ルルはブルブルと震えた。
そこにゴーンゴーンゴーンと、鐘が鳴る。
「ヒィ!って九の鐘ですか…驚きました。」
露骨にビックリしていたルルが胸を撫で下ろす。
「さて、今日はこのくらいにして一先ず宿舎に帰るか。そろそろ皆も何かしら動く頃だろう。」
少し待っていてくれと、本来の目的であった金になりそうなのものを探す。
元々私が使っていた部屋の隅の金属の棚を開け、袋を取り出す。
「それは?」
取り出した袋の中身を聞いてきたルルに、持ってきた袋の中身を見せると
「こ、これすべて魔石ですか!?それもどれも凄く大きい!魔力もいっぱい溜まってますし。こんなの今では手に入らないです…」
「まあ、大戦時代の遺物だからな、これでも小さい方だぞ?」
「これで…小さい……?」
言葉を失ったルルを見て思わず笑ってしまう。そして帰るぞと言って地下室の扉を閉め、商業ギルドに戻った。
地上に戻ると、まだオーナーとサシャがいた。
「随分とお早かったですな。」
「ああ、ものを取りに来ただけだからな。」
「左様ですか」
それだけを交わし、鍵をオーナーに返す。
そして後日また来るとだけ言って去った。
サシャの顔はまだ少し険しいままだったが、少しは納得出来ただろうか。
外はまだ人が多く歩いていた。
明日、時間があったらまた来よう、そう思いながら、人の波に逆らうようにして、宿舎に戻った。




