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第41話:実技本戦


『――これより選抜試験、実技本戦を開始いたします。なお参加生徒は当アナウンスが終わるまでにVRC端末へのエントリーを済ませてください』


 VRCルームでは選抜試験参加生徒に向けたアナウンスが既に始まっていて会場は熱気に包まれていた。


「あっ、おーいナユーっ! コウヤー! こっちこっちッ! もう遅いよー! どうせまた鏡見てたんでしょっ? カッコつけちゃってはずかしーっ」

「なんでだよ! 身だしなみだって大切だろーが!! そ、それにかっこつけてないし!!」


 いくら周りが騒がしいからといって大声でそういうことを言わないでほしい……。カッコつけてるのに恥ずかしい。


「……よかった、まだ形式的な挨拶だけみたいだな」


「にしてもスゲー熱気だなー。練習の時から気合入ってるチーム多かったけどよ、やっぱ本番となると意気込みがちげーよ……みんなガチだ。うっ緊張、してきた……かも」


 先に着替え終わった二人が既にチームエントリーを済ませていて、俺は遅れてきた分なにか聞き漏らしたことはないかと確認しながらアナウンスに聞き耳を立てた。


『――試験は代表者の学籍番号順で十チームごとに三回に分けて行います。前のモニターを参照してください。――』


「学籍番号ってことは私たち一年生だから最後だねっ」

「やったぜ! サンキュー神様愛してる」


 メインモニターに挑戦順とチーム分けが映し出され、喜ぶ俺とは反対に発表された順にコウヤが不満を溢す。


「シンガリかー。待つの苦手なんだよなーオレ」


 ソンナバカナ。挑戦するのは出来るだけ後半の方が良いに決まってる! ほかのチームのプレイも見れるしな。

 でも終えた生徒の注目が集まるから緊張するってのはわかる。逆に遅すぎると不利になる場合もあるが、今回はそうじゃない。

 遅ければ遅いほど勝率が上がる。

 なぜなら、明確な攻略法が分からないままの俺達には他人のプレイがアドバンテージとして蓄積されるからだ。


「「おおー!? アタシら第一陣じゃんかーっ!! くぅうッッっ幸先良いのか悪いのかさっぱりわっかんねーっ! ハハ」」


 盛り上がる会場で一際大きな『聞き覚えのある』声が聞こえたが、前の方にいるのか人だかりが邪魔で声の主の姿は見えない。


「いまの声ってパイパイ先輩、だよな?」

「その呼び方本人の前で絶対にするなよ? マジで。 殺られるぞコウヤ」

「はぁ……」


 デリカシーに欠ける野郎共を蔑むような目で見つめるユナの視線が痛い。


『――第一陣のチームの生徒は指示された端末からリマインを開始して下さい。その他の生徒は観戦エリアに速やかに移動して待機してください』


 順番待ちのチームを観戦エリアに誘導するアナウンスが流れ、第一陣のチームは意気揚々とVRC端末に着き選抜試験開始の合図を待つ。


 今から戦うチームはどんな心境なんだろうか。待ってる側でコレだけ緊張しているんだ。やべえな。コウヤの言ってた通り待つのが苦痛にさえ感じる……。


 高鳴る心音にシンクロして開始までのカウントダウンがメインモニターに映し出され、一層緊張感が強まる。


『――スリー、ツー、ワン……スタート!!!』


 咆哮のような重低音がブザーのように鳴り響き、声援と共に待ちにも待った選抜試験が遂に開始された。


 メインモニターに一番最初に映し出されたのは楽しげにピースサインを向けるパイセンのアップだった。

 その事に気づいたのか、嫌がるそぶりはなく寧ろカメラに向かって二つのパイを寄せてポーズを取っていた。

『――ほーれほれサービスっ! ふふっ――』

 もう戦闘が始まっているってのに何をやっているんだか……やっぱり変な先輩だな。


「お兄さんがたー? どこ見てるのかなぁー?」

「そうだぞナユ。鼻の下伸びきってんぞ」


 そういうお前は鼻血出てるけど? 小学生かよ。


「いや、コウヤもだよっ。もうー、ほらっこれ使って」

「おおー、ユナちゃんすまんね」


 さすが女子ってやつか。男子でティッシュ常備してるやつってなかなかいないよね?


「女性をイヤラシイ目で見るのはマナー違反なのは分かってはいる。だけどなユナ。不可抗力というか、あれだけアピールされたら男なら誰でも見るってもんだ。俺を怒るのは矛先違いだ。パイセンを叱ってくれ」


 必死に言い訳する姿は『情けない』の一言だった。


 会場にいる半分以上の男子生徒が画面に釘付けになっていると、敵のターゲットが集まり始める。

 ヘラヘラとした表情でファンサービスしていたパイセンは眼つきを変えて斧型のツールを振り上げて先陣を切った。

 そのギャップと迫力ある大斧の一撃も相まってVRCルームは歓声に包まれる。


「すげー。参加生徒以外にも気になって見に来てる生徒チラホラいるなーこりゃ。人に見られるのってオレ苦手なんだよなぁ」

「嘘付け。見られてた方がイイ動きすんじゃんお前」

「そーなんだけどよ、正直つかれんだよ……ファンの期待に応えねーといけねえし、人気者はつれーんだよ? ナユくんには縁のない話かもしれねーけど」


「ッな! お、おまえのは自意識過剰ってやつだぞ」


 勘違いも甚だしいぞ……。みんなきっとお前の中二病を笑いたくて盛り上げてんじゃないのか? いやきっとそうだよ。そうあってほしい。

 そんなコウヤの自虐風自慢を動揺しながらも受け流すと、そこにユナが余計なひと言を口にする。


「そういえば私、コウヤのファンクラブに勧誘されたことあるよーっ?」

「な……ん……ですと?!」

「ほれみろッ! へっへー!! 見てる子はいるんだぜッ!! ふはははは」


 ――神様。世の中不公平過ぎやしやせんか?


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Nameless Hero/ネームレス ヒーロー
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