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【 完結 】OVER ENDING-オーバー・エンディング- Re:bit編 【 イメージ小説 】  作者: KAITO×NORA
第13節 見えてくるゲームの内側
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第38話:ラクガキ


 さて今日の議題(ひまつぶし)は何にしようか、ホットな話題……。

 ここ最近の事を振り返るとやはり一番は榊さんとの会食(ディナー)かな。有名人と食事をしたってだけでも十分印象的な思い出だが榊さんと話した、というか榊さんに投げかけられた言葉には未だ頭を悩まされている。


 仮想と現実の違い……VRCとゲーム……それから座学、か。

 榊さんがどこまで本気で言っていたのかは分からないが、あの時会話の中で出てきたモノ。

 それは大きく分けて三つの解い。

 ≪VRCとゲームの関係性/仮想世界と現実世界の違い/座学授業の必要性≫

 要約すれば『関係性』『違い』『必要性』となるが、いくら言葉を還元し都合のいい解釈をしたところで答えは未だに分からないままだ。

 恐らく子供相手に冗談半分で投げかけられたであろうこの『三大難問』について今日は頭を捻ることにしようか。


 データシフト以降人類世界は大きく変化した。データワールドへ構造数列化して転生する行為……俗にいうリマインが一般化されたことにより二つの世界の境目が取り払われた。

 一昔前までは二つの違いは物理的干渉の有無という明確な差別化ができてたのにな。今ではそうはいかない。

 技術革新した現代ではコントローラーやモニターをかえさず電子情報世界(デジタル)とシームレスに行き来できるようになった。リアルとヴァーチャルは何が違うといえるのだろうか?


『――電子世界(あちらがわ)をゲームとするなら現実世界(こちらがわ)もまたゲームだ』


 電子と量子の関係はあやふやになり、デジタルが今まで以上に日常生活の一部に組み込まれるようになった。その結果、いまでは現実(リアル)という単語その物の定義が曖昧になってしまっている。

 榊さんはそう言っていたが世界は未だ旧世代の名称やロジックに囚われている。

 古い言葉を使い回したせいで矛盾や語弊が進化の妨げになってるんだよ。

 大雑把に説明するなら新型のゲーム機とソフトが普及したけど旧式の古い考え方が未だに業界には浸透している。結果として時代の流れに乗り切れずにいる人が多く存在しているってことだ、勿論俺を含めて。


 いい例として『VR』という二文字がある。昔は|VirtualRealityヴァーチャルリアリティの略称で使われていたが、今では|VirtualRemainnigヴァーチャルリマイニングの事をさす。

 すなわち電子世界が人の手によって管理されていた時代の考え方を引きずったままでは風雲児(榊さん)考え(問い)には答えを出せないって事なのか?


『――リマイナーとゲーマーの違いは何だと思いますか?』


 昔はリマイナーとはプレイヤーの別称として使われていた。そしてゲームを極めたプレイヤーはゲーマーと呼ばれていた。だけどそれは世界の差別化がされていた時代の考え方だ。

 境目がなくなった現在、はたしてリマイナーとプレイヤーを同じ意味合いで使っていいものなのか?

 そもそも土俵が違う二つを比較したところで欲しい答えなんて見つかるはずがない気もするが……電子(データ)現実(リアル)の関係と同じように。

 自分でもわけわからなくなってきた。


 榊さんの意味深な言葉が頭の中でこだまして、一向に答えを見つけられない俺を急かしてくる。


 ちょっと対象を狭めてみるか……。

 元々は軍用品として開発されたリマイニング端末(デバイス)をゲーム感覚で使用して戦闘技術を磨く。そう考えるとやっぱりVRCの本質は訓練プログラムなのか?

 とすればリマイナーはプレイヤーの別称ではなくて兵士の別称とするのが妥当……でもそうすると榊さんの言っていたことは間違っていることになる。

 俺達、生徒が行うVRCの立ち位置は<お遊び(ゲーム)>なのかそれとも<訓練(トレーニング)>なのか……。


 通りは間違っていないがなんだかリマインの本質そのものを履き違えているような違和感が拭いきれず小言が口からこぼれ出す。


「はあっ……どっかに攻略本落ちてねえかなあ。あっ、やべえ。思考回路がアホと被っちまった……」


 以前コウヤが同じような事を言っていたのを思い出してハッとし、すかさず自己否定する。

 でも正直な所、攻略本というものが存在しているなら是非とも拝みたいものだぜ。


 ――出題(ルール)を理解して課題(クエスト)を把握し、実技(ゲーム)消化(クリア)する。


 俺が得意として理想とするプレイスタイル。

 攻略法……言い換えればルールにクリア条件を当てはめて導かれた正解のプレイ。

 そして、ソレが載っているのが攻略本だ。

 どんなゲームにも攻略法は存在している。それは絶対だ。『クリアできる』それがゲームの条件……そうじゃなけりゃ無理ゲーどころか単なる糞ゲー。ある意味ゲームであるが、それは似て異なるもの。

 だからVRCにしろ人生にしろ、攻略本あってもいいとおもうんだけどな……。


 反省会の時に似たような会話をしたのを思い出し、ユナのツッコミが頭に浮かび脳内再生される。


『やっぱりゲームだよねっソレ』


 っく! またそれを言うかッ……いや、思い出したのは俺なんですけども。

 考えてみれば榊さんもユナも、一応コウヤも同じような事を言ってるな……。

 それぞれ似たような事を言ってはいるものの、どれも矛盾していて何が正しくてどれが間違っているのかは分からず終いのまま時間が過ぎていく。


 こういう時は書きだすのが一番だと考え、新品同様のノートを開き筆箱の中からシャーペンを取り出す。


『ゲーム・VRC・仮想空間・電子世界・リマイナー・ゲーマー……ドラゴン』


 頭の中をグルグルと回る単語を箇条書きにしてノートに書き出すがこれと言って何か閃く事は無かった。

 その代わりに書き出したリストの最後の単語を見て自分が置かれた状況を思い出す。

 三大疑問の答えは見つからないままだが新た問題が浮上する。


 つーか、そうだドラゴン……ドラゴンだよ! アイツを倒さなきゃβテスト以前に選抜試験突破できねーじゃんか!

 とりあえず、攻撃パターンだな。……大きく分けて遠距離と近距離っと。


 授業そっちのけでノートのページを進めてドラゴン対策を小さな声で呟きながらドラゴンの攻撃手段とそのリーチを図にして書き出す。

 

「(遠距離の範囲攻撃と衝撃波はモーションが大きく分かり易いし発動後の移動硬直があるから避けやすいしタイミングを計りやすい……問題は近距離でのランダム攻撃……あと間合い変更時の伸びる尻尾(アクティブカウンター)が曲者なんだよな……)」


 ランダム攻撃に至っては攻撃の間合いは何度も身を持って体験してきたからほぼ正確に把握できているが未だに確実なタイミングは掴めないでいた。

 今更考えてもわからないものはわからないので、代わりに授業前に見ていた明人さんの動きからどうにかして攻撃のタイミングを逆算できないかと不慣れな数学を駆使して計算してみようかとも思いたつも、乱数計算の方程式なんて知る訳もなく、仕方なしにシャーペンからカラーペンに持ち替え分かっているドラゴンの情報の横に明人さんの回避行動を事細かに書き出してみる。


 ドラゴンの攻撃に対して行ったステップの数、左右の割合、カウンターを仕掛けるタイミング、間合い。

 思い出せる限りの要素を隣に描いた図と関連付けてみると想像していたものとは少し違う結果が浮かび上がる。

 動画では洗練された動きに見えていた明人さんの動きの方がパターンが無いメチャクチャなものでドラゴンの攻撃の方がよほど数値化されていたのだ。


 コレってもしかして明人さんはただ避けていただけじゃなくてドラゴンの動きを制限して攻撃を誘導していた? 選考会で俺がカウンターをワザと誘発させた時みたいに……だけど選考会のは所詮レベルダウンされたモンスター(CPU)だ。ハイレベル設定のドラゴンの攻撃を思い通りに操作するなんてこと可能なのか?


 明人さんの動きの秘密とランダム攻撃に隠されたパターンが見つかりそうな気がして、授業中であることをすっかり忘れ夢中でノートに落書きを続けた。


「 「コラッ! 間ッ! 授業中だぞッ」 」


 まあそんなことをすれば、後ろから音もなく近づく脅威に気づくことが出来ないのなんて至極当然。

 喝を入れるように丸めたテキストで頭頂部をスパーんと叩く授業に集中するようにと教師に注意された。

 叩かれたつむじを擦るように撫でながら言い訳を述べる。


「いったぁ、あ、す、すんません。選抜戦の事が気になってて……つい出来心で、今は反省していますッ」

「お前なあ……珍しく筆記用具を持っていると思ったら、……まー、分からなくもないがそういうのは休み時間にやれ。どれ。何書いてたか見せてみろッ――」

「ぬぁ!なあああっ! ちょっ、せ、先生! マジで勘弁ッ! 恥ずかしくて死ぬ!!」


 必死にノートを渡すまいと抵抗をしたが没収技量(スティールスキル)に長けた教師には通用せずあっさりと俺の手から離れ教師の手に渡ってしまった。

 悩みながら書いたノートには手持無沙汰でつい落書きしたドラゴンと戦う明人さんのヘタクソなイラストも一緒に描かれていて、落書きを怒られるよりも絵心の無さを笑われる方が心配だ。


「――ってなんだ、出来てるじゃないか。この変な落書きはいただけないが、悪くない。まったく、普段からそうして真面目に授業を受けるようにッ! 分かったかッ?」

「猛省しますマジですんま……はぁっ? 出来てる(・・・・)……って? え?」


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【Voドラマ】
≪VRゲーム × 日常≫がテーマのボイスコンテンツ
OVER ENDING Voice/オーバー・エンディング ヴォイス
小説に登場するキャラクターたちに今…声(いのち)が宿る!
【原作楽曲】
OVER ENDING(5:12)
【公式サイト】
(アンエク)UNDOT EFFECT
【関連作品】
アニメのようなヒーローにはなれないお話。
Nameless Hero/ネームレス ヒーロー
- 一度もヒーローにはなれない -
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