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第2話:A.シャンプー


 これだけ技術革新したのにも関わらず未だに紙媒体のテキストとノートというアナログな文具を使っているのは『大人の都合』ってやつか。技術革新のスピードに司法整備が間に合っていないらしい。≪アンチデータ≫やら≪フォルト≫の問題が優先されるのは当たり前だろうけどもソレに対処する人材育成の場でもある教育現場を二の次にするってのはどうなんだろな。舞台裏では子供には分からないご都合主義の政治活動があるんだろうけどもさ。


 まあ、そもそも座学の類に興味が無い俺にとっては文句を言う資格なんてないんだろうけれども。テキストやノートなんて持ってても使わないし俺。


 そんな政府に対して多少不満を溢しはしたものの、最新の≪Virtual・Remainning(VRC)・Combat端末≫が配備されているこの学校にはそこまでの文句は無い。

 政府軍直下に位置する技育専には『NEST(ネスト)』の最新技術が導入されているから学習環境自体は最高なんだ。さっき見た全自動室内環境管理システム、俗にいう<オートルーム>も『NEST』の提供する技術の一つだ。


 『NEST』は≪アンチデータ≫のもたらしたパラダイムシフト後にハードウェア面、特に≪リマイニング装置(デバイス)≫で目覚ましい成長を遂げ今では軍事産業にも手をだして政府軍お抱えの企業となっている。

 こう説明するとお堅く聞こえるかもな。

 けれども≪リマイニング装置(デバイス)≫を使った軍事行動ってのは≪リマイナー≫によるデジタル世界の正規化を指している、つまりはそれを使ったゲームの開発及びそれの発展のことなんだ。ハードも開発してるゲームソフト会社といえば分かりやすいか。


 ただし、ゲームソフトと言っても軍事利用もされているものだけどな。


 そしてその『NEST』が先月発表した最新作『 bit(ビット) 』には俺もユナも期待しているんだ。VRCではなく、≪リマイニング装置(デバイス)≫を使った正規の<リマイニングゲーム>でありながらオープンワールドのMMOアクションRPGらしい。しかも俺が“一番好きなゲーム”を基にしているっぽいようだ。一般的には軍事目的で開発されているリマイン系のゲームにはストーリーのある作品は珍しいから凄く楽しみでしかたないわけだ!

 ちなみに『らしい』とか『っぽい』と婉曲な表現をしたのは、まだ発表されたばかりで詳しい情報がそんなに多くは公開されていないからだ。


 近々クローズドβテストと呼ばれる事前テストプレイが行われる予定だけれども、その参加資格はゲーミングスクール在学中のリマイナー候補生で且つ実務教練を終えた生徒に限られる。

 技育専では実務教練であるOJTのカリキュラムは三年生から実施される。つまりは一年生である俺たちは参加資格を得る事さえ出来ない……事実上、選抜試験に挑戦する事さえ許されないんだ。

 とはいえ参加資格に条件を設けるのは当たり前だ、クローズドβは遊びというよりも動作不良やエラーを探すデバッグに近い作業なのでそれは仕方ないと理解している。


 でも……でも、せめてチャンスぐらいは欲しかったな。

 最新作を誰よりも早くプレイしたい。ゲーマーとして当たり前の欲求が満たされないこの感じ。

 そうだな、四文字に集約するならば『欲求不満(・・・・)』だ。


「ナユ何か怒ってるの? 顔怖いよっ、ほら眉間にしわ」


 ッやば。表にでるもんだな不満てのは。

 隣を歩いてたユナが前に飛び出したかと思うと自身の眉間を指しながら教えてくれた。


「えっと、強いて言うなら世の中のシステムに怒りを覚えている……って感じ。『 bit 』のクローズドβ参加にできないのが悔しいってことだよ」

「あぁ、欲求不満ってことね! まあ……仕方ないよね。参加できるのは3年生だけだし。私も参加したかったなぁ」


 何もかんも見透かしてんのね。読心術でもできんのか?

 あと、公共の場で欲求不満とか言うなよ。誰かに聞かれたら誤解されるだろッ! ただでさえ肩身が狭いのに!


 幸い廊下には生徒は少なく誤解は生まれなかったが、少しヒヤッとした。みんな食堂か中庭に出てしまったのだろう、出遅れた分急いで俺たちも食堂に向かわなくては……別に食い意地が張っている訳ではない。日課だから。昼休みは食堂に集合。それが俺達の<暗黙の了解(ルール)>なんだ。食堂には『アイツ』も待たせてることだし。


「あ、あのな! 変なこと言ってないで、前向いて歩け。転んでも知らねえからな!」

「あーッ! なにさー、せっかく心配してあげたのに! 転ばないしっ! ていうか変なことって何よ⁈ もうっ!」


 ユナはそういうとまた体をクルッと回して前を向き、再び隣に戻ってくる。

 そういや、一つ疑問がある。


 ――何で女子って動くたびにいい匂いがするのか。



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