四百三十三文字
雪解け水が屋根から滴る
ポッ ポッ ピチャン ポチャン
滴った雫は 集まり 流れる
チロチロ チョロロ
カラスの鳴き声 近くに 遠くに
カァカァ グワァグワァ
工事現場のけたたましいドリルの音
名前も姿も分からない鳥の鳴き声
自転車が
シャーッと軽快に追い越してゆく
タン タン タン タン
単調な 自分の足音
そよ風が耳の傍を掠めてゆく
立ち止まると
足音も消える
速度を緩める 速める
不規則になるリズム
刻む自分の気分次第
このままどこまで歩いてゆこうか
穏やかな二月の午後の散歩道
家の外を通り過ぎる 車のエンジン音
風が窓をカタンと揺らす
冷蔵庫の低い唸り声
身じろぎに合わせ
かすかな衣擦れの音
髪の毛が枕に落ちる
小さな音さえはっきり聞こえる
自分の呼吸 吸って 吐いて
スゥ スー スゥ スー
自分はこんな風に息をしていたのか
こうして酸素を取り込み
身体を 脳を 心臓を
動かしていたのか
枕に耳を付けると
耳の中にゴーと音がする
血管を流れる血液の音だろうか
不意にお腹がキュゥと鳴った
私の身体は生きている
自分の意志とは無関係に
辺りは寝静まる 午前一時のベッドの中
人間が外界から得る情報は、視覚によるものが多いように思います。
視覚情報以外に意識を向けて情景を描写したら、表現の幅も広がるだろうかという試みでした。
周りの音に集中してみると、普段は意識しない、自分が発する音に気づきます。
そういうことを考えていたら、「4分33秒」をテーマにしていたのに、最後には「praan」という別の曲が頭に浮かんでしまいました。