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未分類の短編小説

四人の王による奴隷制度に関する考察

作者: 魚の涙

●春の国

 私、ウルアム十二世は異世界から転生した。

 この事は誰にも明かしていないし、これからもそうだろう。

 前世では平凡な日本人であった私は、この世界で王族の末弟として生を受けた。

 兄達が様々な理由で命を落とし、末弟である私が王となった。

 私は転生者であるが、肉体的な能力はこの世界の普通の人々と変わらない。

 因みにこの世界の文明は前世の世界より劣っている。

 どの位劣っているかと言うと、農業高校の一年生であった私の知識で生産性が飛躍的に上昇する程度には、劣っていた。

 現在私は農王と呼ばれて国民から親しまれている。

 我が国の食糧自給率は二十割を超えている。

 識字率は上がったし、子供の死亡率も低くなり、我が国は大きく発展しようとしている。

 僭越ながら我が国を取り囲む夏秋冬三国に対しても国力において圧倒的優位を保っている。

 まあ、これは先王の時代も先々王もそうなのだが、それでも同盟国同士仲良くやって行きたいと思う。

 春夏秋冬四国は遥か昔から同盟を維持していて、その関係を確認する為に毎年会議を開いている。

 当然今年も四国の王は我が国に集まって会議を開く事になっている。

 そこで私は一つの提案をしようと思っている。

 それは奴隷制度の撤廃だ。

 非常に残念な事なのだが、春夏秋冬四国では奴隷制度が存在する。

 元々は自力で生計を維持できない人々の救済措置でもあったらしいが、豊かになったのだからこの制度を撤廃したいのだ。

 既に生活保護の様な制度と孤児院の様な組織を立ち上げる準備は整っている。

 奴隷を嬉々として利用する夏の国からは反発を受けそうだが、秋の国と冬の国の理解は得られるだろう。

 きっと私は歴史に名を残すだろう。



●夏の国

 俺様、ライツ二世は異世界から転生した。

 まあ、そんな事はどうだっていい。

 最近春の国が農業革命を成し遂げた。

 あそこの王は農業の天才とか持て囃されているらしいが、俺様はそのカラクリを知っている。

 十中八九奴は俺と同じ転生者だ。

 まあ、そんな事もどうだっていい。

 春の国が俺様の国に食糧と奴隷を融通してくれる限り、俺様は楽が出来るからだ。

 俺様の国は海に面している関係で海産物が豊富だが、それだけの国だからだ。

 海棲生物の被害が結構出るが、下々の被害なんぞ俺様の知った事では無いし、そうやって死ぬのは大抵春の国から貰える奴隷だから気にする必要もない。

 広大な穀倉地帯があり豊富な森林資源を独占するあの国は、食うのには困らない国だ。

 そのせいもあって雑草の様に人が増える。

 その癖周囲を取り囲む三国に護られる地形のせいで人が大量に死ぬようなイベントも余りない。

 奴等は食糧と奴隷で三国を餌付けして、その上屈強な正規軍で三国を威圧して、そうやって栄えた国だ。

 まあ、それもどうだっていい。

 三国は春の国の傘下に収まる代わりに、安定を手に入れていた。

 それをぶち壊そうとしてるのが、あの平和ボケした農王だ。

 この前の会議であのボケは奴隷制度を撤廃するとか言い出しやがった。

 奴隷制度はヨクナイとか訳の分からない理由でだ。

 俺様は利己的だが暴君では無いと思っている。

 下々の事なんてどうでもいいとよく言っているが、それは不幸になろうが幸せになろうが気にしないって事だ。

 奴隷制度を撤廃したいなら最低でも俺様の国を春の国と同等の水準まで豊かにしてからにしろってんだ。

 まあ、だが、あの国も長くはないだろう。

 奴隷にしなかった国民は孤児院を作って養う積りらしいが、どこまで持つのやら。

 幸いあの平和ボケは正規軍の予算を大幅に削っている様だから、ある程度弱体化したら乗っ取ればいい。

 その際秋の国の協力が得られるの最善にも思えるが、人を人と思っていない秋の国と共闘作戦をするのは不安があるし、夏の国だけで乗っ取る方が最善か。



●秋の国

 僕の名前はストライン四世。

 秋の国の国王である。

 今年で僕も三十五歳。前世と併せて五十歳。

 いつの間にか前世の倍以上今生を生きている訳だ。

 三十五年を過ごしたこの秋の国は、一言でいえば過酷な国だ。

 まず食糧事情が最悪だ。

 僅かなイモ類しか安定した収穫が無く、自給率は一割にも満たない。

 国力豊かな春の国が隣に無ければ僕が生まれる遥か昔に滅びていたに違いない。

 次に立地が悪い。

 春の国を中心とした同盟四国は、北は山脈が、西は樹海が、南は海が防壁の役割を果たしている。

 結果東に位置する我が国は侵略を受け易い。

 豊かな春の国を落とす足掛かりにと攻め込まれる。

 国民総軍人とも言われる秋の国は数多の犠牲を払いながら、侵略者達を退けて来た。

 それらの犠牲を払う事で秋の国は上から下まで戦闘狂と評価され、ここ百年程大きな侵略を受けていない。

 そこで問題になったのは、食糧事情だ。

 侵略を受けないので国民は増える。春の国から融通される食糧は年々増えているが、正直このペースではいずれ足りなくなる。

 奴隷制度を改良して人身売買を合法化して口減しを進め、東方諸国に傭兵等を輸出して外貨を稼ぐ事で何とか凌いでいるが、ここ二十年程ずっと自転車操業である。

 そこに追い討ちを掛ける様にここ数年東方の情勢が安定しつつあり、止めが春の国の奴隷撤廃宣言である。

 弱り目に祟り目とはこの事だ。

 農王は農王なりにいろいろ考えてはいる様だが、基本的に短絡的なのだ。

 唯一の吉報は、春の国の軍事関連予算の大半を、農王が掲げる生活保護制度と孤児院設立の予算へ付け替えさせる事に成功した事だ。

 どうやって内政干渉をしたかって?

 秋の国は傭兵の輸出大国として知られているが、実はスパイ輸出大国でもあるのだ。

 このままの状態なら夏の国と冬の国に気付かれる前に春の国を傀儡化出来そうだったのだが、ここ最近夏の国の動向がキナ臭い。

 あの国の国王、口では国民を蔑んでいるが、その実国民大好きだからな。

 危険な事は全部奴隷にさせる法律があるのがその証拠だ。

 国民最優先の夏の国にはスパイが極少数しか送り込めていないので情報不足ではあるが、夏の国のやり方で春の国を何とかしようとしているのだろう。

 スパイの送り込みづらさでは冬の国の方が厄介なのだが、冬の国は殆ど発言もしないしどうでもいいか。

 暫くは春夏両国にとって最悪な会戦時期を探りつつ、様子見だろう。

 人身売買を合法化させる奴隷制度は、秋の国にとって絶対必要なのだから。



●冬の国

 儂はドールマン三十九世。

 冬の国の王じゃ。

 儂も大分歳を取った。

 前世も十分に生きたのじゃが、まさか今生でその記録を塗り替えるとは思っとらんかった。

 人生は驚きの連続じゃ。

 同盟三国が揃って崩壊したのもまた驚いた。

 儂の目が黒い内に、そんな事が起きるとはのう。

 秋の国も無謀な事をしたもんじゃ。

 冬の国と負けず劣らぬ貧弱な土地しか持たぬ秋の国が平和を謳歌出来ていたのは、過去の実績と同盟があったからこそじゃ。

 タイミングも最悪じゃった。昨今東側がまとまりつつあったからのう。

 背後が不安定な状態で東側諸国連合に攻め込まれれば当然耐え切れまいて。

 秋の国に唆されたとは言え、春の国と夏の国も浅はかじゃった。

 春の王は農業以外の才能はからっきしじゃったし、夏の王は国民を思う心しかない無能じゃったからの。

 そう言った意味では秋の国が一番見所があったのう。現実は真っ先に滅びたのじゃが。

 その秋の国も冬の国の真の強さには気付かぬままじゃった。

 国土の殆どが険しい山である冬の国は、国全体が要塞の如き堅牢さを誇るのじゃ。

 四国同盟が結ばれる以前、唯一春の国の侵略を防ぎ切ったのが我が冬の国じゃ。

 それは東側諸国に対しても同じじゃった。

 今回の戦争は非常に有益な物じゃった。

 どさくさに紛れて冬の国は春の国が持っていた穀倉地帯の一部と樹海を奪う事が出来たのじゃ。

 余分な領地は全て東側の連合国にくれてやった。

 東側諸国は四国全体が高い自給率を誇っていると勘違いしていたからのう。

 冬の国の一人勝ちだった事に気付くのは何年先の事じゃろうか。

 それにしても、旧同盟三国だけが奴隷を使うのかと思えば、東側もそうであったのは驚きじゃった。

 そもそも今回の戦争は奴隷制度の撤廃と言う春の国の英断が引鉄じゃった。

 全く、あんな制度は撤廃して然るべきじゃと言うのに、東側も旧三国も痴れ者の集まりじゃったと言う事よの。

 正しき方法は粛清じゃ。

 無能を罪として、国民を積極的に間引くのじゃ。

 奴隷等と言う生産性の低い国民を維持するのは愚か者のする事じゃろ?

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― 新着の感想 ―
[良い点] それぞれの国がそれぞれの思惑で動いた結果、 四国のうち三国が滅びるという結果になり、ぞくりとしました。 一見上手くいっている国々も、 実はちょっとしたきっかけで…などと考えさせられますね。…
[一言] 春が中国夏がインドネシア秋がイギリス冬がソ連みたいなノリかなまあ特色だけやけど
[良い点] ナチスかな?(冬の国に対して) 一番の敵は無能な味方、てのはいつの時代、どこの国でも共通する事実だものな。日本人としては笑えねえな。
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