表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

第一話

 VRMMOがこの世に誕生してから、もはや四半世紀。


 紆余曲折を経てなおも運営を続ける人気VRMMOもあれば、消えていったVRMMOもある。


 そんな最中、【ソリチュード】という名のVRMMORPGの開発が発表された。


 多人数型オンラインゲームなのに孤独ソリチュードとはこれいかに?


 と物議をかもし出したりもしたが、特にこれといった独自性のない内容であるため、注目度はそれほど高くなかった。


 利点といえばソフト価格の安さと、グラフィック面でそれなりに優れているということくらいである。


 ソリチュードのβテストは滞りなく終了し、後は発売を待つのみであった。


 事象は淡々と進行して行く。これから起きることとなる、最悪の絶望に向かって。






「……という訳で、お兄ちゃん。いよいよ今日、ソリチュードの正式サービス開始だね!」


 妹が嬉々としてそう言った。


「ああ、それにしても運がいいよな。俺もお前も、ソリチュードを買うことができるなんて。

 初回ロットは5000本だろ?」


「うん。注目度が低いソフトとはいえ、一生分の運を使い果たしたんじゃないかってくらい幸運なことだよ。

 でも、カイトさんはβテストで当選してるから、来世分の運も使い果たしちゃったかもね……」


「あー……そうだったらむしろ気の毒だな」


 カイトというのは俺のクラスメイトであり、友達だ。


 俺たちがこのゲームに手を出した理由は、夏休み中暇なのでVRMMOでもやってみるか、どうせならこれからサービス開始されるゲームにしよう。


 などと言い合ってた頃、たまたま広告を目にしたからだ。


「ところで、お兄ちゃんはどんな職業とスキルにするか決めた?」


「いや、まだ決めてない。説明書を読んですらいない」


「それくらい読んでよ……それじゃ、私が説明してあげる」


 お、頼もしいこった。


「このゲームでは、まず最初に9つの職業からやりたいものを選択するんだって。

 一度決めたら変えられないから、慎重に決めようね」


「ほう、どんな職業があるんだ?」


「えっと、防御力が高くてみんなの盾役になれるウォーリアーとナイト。

 近接攻撃が強いモンク、サムライ、アサシン。

 遠距離攻撃が強いハンター、ガンスリンガー、ウィザード。

 最後に支援役のプリーストだね。

 ウォーリアーは、味方を守るのも敵に攻撃するのも得意なハイブリット職だよ。

 ナイトは攻撃力があんまり無いかな。でも防御力はトップクラスだから、死ににくいね。

 モンクは攻撃力がトップクラス。一撃の重みで敵を圧倒するタイプかな。

 サムライは逆に、手数で勝負するタイプだね。

 アサシンもサムライと同じ手数で勝負するタイプだけど、こっちは対モンスターより対人戦に強いの。

 ハンターは死にやすいけど攻撃威力はあるよ。

 ガンスリンガーもハンターと似たような感じ。でも対人戦向きかな。

 ウィザードは最も死にやすいけど、魔法が使えるから攻撃範囲に優れてるよ。

 で、プリーストは味方を回復したりするのが得意。ある程度攻撃手段もあるけど。

 ステータスポイントをどう振るかによって違いが出るけど、だいたいはこんなところかな」


「そ、そうか。んー迷うなあ」


 いろいろありすぎて全部は理解できなかったが……。


 ここはひとつ、消去法で決めるとするか。


 プリーストは責任が重そうだからパス。気を抜いたら仲間が死んじまうからな。


 遠距離攻撃も俺の性に合ってないからパスだ。


 盾役もつまらなそうだな。がんがん責めるタイプが良い。


 そうなると、拳で戦うモンク、刀使いのサムライ。二刀ダガーのアサシン、か。


「二刀流ってカッコよさそうだな」


「お兄ちゃん、それ厨二病っぽい」


「うるせー」


 という訳で、職業はアサシンにあっさりと決まった。


「ところで、ミツキは何の職業にするんだ?」


「私はウィザードかな。範囲魔法で雑魚を一掃できたら楽しそうだし」


「ふーん、なるほどね」


「と、それじゃもうすぐ時間だし、さっそく起動してキャラメイクしようよ。私は自分の部屋に戻ってやるから、それじゃあね」


 ……行ってしまった。


 できればスキルについても色々聞きたかったが、仕方ない。


 俺は【インヴァイト】という名のハードウェアを手に取った。黒くてゴツいそれを頭に到着すれば、あっという間にヴァーチャル世界へ誘われる。


 これを使うのも久しぶりだな、と感慨にふけりつつ、俺はインヴァイトのスイッチを入れた。






 ……まずは、キャラクターネームの入力か。


 これは本名のエイタでいいだろう。……よし、誰かと被ってはいないみたいだ。


 キャラクターの性別は本人と同じものしか選べないらしく、体格もそれほど大きく変更できない。


 なので、少しだけいじった後さっさと次の項目に移ることにした。


 髪と目の色は、現実と同じ黒髪黒目でいいだろう。顔立ちは、現実よりもうちょっと格好良くして……。


 いよいよ職業とスキルか。職業は前に決めたとおりアサシン、と。


 スキルはいろいろあるなあ。この中から5つ選ぶのか。


 確か、アサシンは対人戦に強いって言ってたな。こうなったら対モンスター戦は捨てて、対人に特化させてみよう。


【短剣修練】ダガー使用時の攻撃力を増加させる。パッシブスキル。


【ソウルブレイカー】自分の周囲の敵に大ダメージを与える。アクティブスキル。 


【ステップ】瞬間的に2メートルほど移動することができる。アクティブスキル。


【毒属性付与】攻撃時、一定確率で敵を毒状態にする。パッシブスキル。 


【騎乗】一定時間、乗用生物に乗って移動できる。パッシブスキル。


 こんなものかな。なんとなく対人戦に有利そうなのを選んでみた。勘だけど。


 最後はステータスポイントを振り分けるのか。


 えっと、なになに……。


 STR(力)AGI(速さ)VIT(体力)INT(知力)DEX(器用さ)に、所持ポイント100を好きなように振り分けると。



【名前】エイタ

【STR】0

【AGI】0

【VIT】0

【INT】0

【DEX】0



 ん~、どうすればいいんだ? スキルもだが、ミツキにもっと詳しく聞いておけばよかった。


 マジでどうしよう。


 ……とりあえず、死ななければなんとかなるか? VITってのが防御に関わるステだよな。



【名前】エイタ

【STR】0

【AGI】0

【VIT】100

【INT】0

【DEX】0



 よし、これでいいや。


 さて、ゲームの世界を楽しみにいくとしますかね。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ