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彼がお姫様になった理由(わけ)

楽しんでってください。

 部屋の中央で一組の男女が踊っていた。

 彼らは窓から差し込む光を浴びて、まるで一枚の絵画のように様になっていた。

 時折、男性が女性にステップの指導を行う。また、踊りを見ていた女性が、教わったステップを練習する女性に助言を与えていた。

 ゆるく波打った栗色の髪が、彼女の大きな瞳に少しかかっている。襟足は彼女の白い首を隠す程度の長さだ。指導を行う男性の胸のあたりまでの背の高さで、女性としては少し背が高い。

 彼女は形の整った細い眉をしかめながら、熱心に教わったステップを繰り返す。しかし、ステップを踏む度広がるスカートをしきりに気にする素振りを見せていた。

 それも当然の話しで彼女はその日初めてスカートを履いたのだった。

 誰が見ても美少女としか言いようのない風貌の女性。

 それは利央だった。

 何故こんなことになったのか。

 利央は昨日のユニテルの言葉を思い出していた。


「ワイトダウに向かう前に舞踏会が開かれる。名目上はワイトダウへ向かう私たちの無事を祈願してとのことらしい。」ひどく憂鬱そうにユニテルが言う。

「晩餐会ではなく、舞踏会というのがひどく作為的じゃな。言ってしまえば姫様の婿探しも兼ねておるのじゃろう。」

 兄たちの策は、ここにも仕掛けられていた。彼らにしてみれば、ユニテルが皇位を継げなければそれで良いのだ。そのため、ユニテルが貴族の誰か、もしくは他国の王族か貴族と結ばれればそれでも良かったのだ。ユニテルが嫁ぐことで国内の有力な貴族、もしくは他国と絆を持つこともでき一石二鳥と言える。北風と太陽でいうところの太陽策であった。

「兄上たちも懲りぬ性格をしているな。いい加減諦めて欲しいものだ。」ユニテルはため息をついた。

 過去に何度もユニテルの婿探しのための舞踏会は開かれてきた。国の治安のため各地を転々としてきたユニテルであったが、帝都へ戻ってくる度、舞踏会は開催された。

 ユニテルは舞踏会を好まなかったが、戦勝を祝してだとか、勝利を祈願してなどとお題目を挙げられては断ることもできず、止む無く参加してきたのだった。


「また、馬鹿な息子や娘たちの見え透いたおべんちゃらで耳を汚されると思うと今から憂鬱だ。」

「じゃが、皆が皆、愚かとは言えぬじゃろう。少なくとも、彼らはこれからの帝国を支えていく礎となるのじゃ。なかにはまともな奴もいるじゃろう?」

 ユニテルの愚痴にセキバが応じる。

 ユニテルは不服そうな眼をセキバに向けた。

「まあ確かに。少なくとも十家の子息、令嬢のなかにはまともな奴がいるな。まあそれでも、数は限られているが。」

 十家とは、ノキテイル帝国の貴族の十の名家だ。ノキテイル帝国の建国にあたり、最初から初代皇帝に仕えた、あるいは特に功績をあげた十名の家臣たちが、十家の祖先である。

「ファニシング家のステムなどはどうじゃ。見てきた限り、大分お気に入りのようじゃったが。」

「なっ。ステムとのことは誤解だ!お気に入りなどではない!

 リオウも誤解するなよ。私はきちんとリオウのものだからな。」

 そうは言っても顔を赤らめ、声を荒げられては説得力がない。

 誤解するなと言われた利央もきょとんとしている。

 それを見たユニテルは、もう少し妬くなり、気になるというような態度をとってくれてもと呟いていた。

「誤解とは異なことを。先の舞踏会では二人で姿を消しておられたではないか。二人が庭で乳繰りあっておったという噂もありますぞ。」

「ちっ、ちちくっ!下品な言葉を言うでない。」ユニテルは益々顔を赤くする。

「まあ冗談はこれぐらいにするとしてじゃ。」

 冗談かいっとユニテルが切り返す。

「まあ、舞踏会を断ることができないとして…。男除けを考えるなら簡単じゃぞ。姫様が特定の男をパートナーとして連れて行けば良いのじゃ。

 男連れの女性を誘うような野暮はそうはおるまいて。」

 なるほど名案じゃなとユニテルも相槌を打ちつつ、ちらりと利央に目をやる。「おっ、俺はだめだぞ。舞踏もできないし、礼儀も知らない。そんな場所にいけるわけないじゃないか。」

 そうだろうなとユニテルとセキバは頷いた。

「まあ、よしんば、利央を連れて行ったとしても、何の身分もない利央ではものの役に立たんじゃろうな。

 男を連れて行くのが無理なら、そうじゃな。姫様よりも美しい、会場の注目となる美女を連れて行くとかはどうじゃ。

 もっとも姫様よりも美人の女性となるとそうなかなか……。」

 ここで二人の視線が利央に向いた。

「おっ、俺?」

 利央は自分の非凡な外見を呪った。


 その後、利央はユニテルに拝み倒され、女装することを渋々了承した。それほどうまく踊れなくてもある程度は踊れた方が良いということで、こうして利央は今、舞踏の指導を受けているのだった。

少し暗い展開が続いたので、明るさ強化話し。

女装を賛美する変態小説ではありません。多分。

何かこのノリでどんどん脇道に逸れていきそうな気がする。


技術向上のため、評価して頂けると幸いです。

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