四話・二重の美味しさ
トゥットゥルー♪
お母さんです。
もうすぐ帰ってくるであろう子供たちのためにお茶を入れています。
「まあ、なんて気の利くお母さんなのでしょう♪」
ただいまー
「帰ってきたわね」
私はそう呟いて―お茶をお盆に載せ持ち上げて―玄関に向かった。
「お帰りなさい、私のも買ってきたわよね?うふふ……」
「買ってきたから!、その不気味な笑い声止めて!」
まったく、失礼しちゃうわ。
誰に似たのかしら?
「ふふ、お茶入れたから皆で食べましょう」
さてさて、マルチちゃんは、ショートケーキにチョコレートケーキにフルーツタルト、リュウちゃんは何時も通りプリン、残っているのは……モンブラン
好きなのだけれど、モンブランっておばちゃんってイメージがあるのは私だけかしら?
もちろん私は永遠に麗しのお姉さまなのですけど……
そんな事を俯いて考えていると、ケーキより甘い匂いが流れてくる。
そして、部屋の雰囲気がピンク色に!
こ、これは!?
向かい側の席でマルチちゃんにリュウちゃんがあ、“あ~ん”をしている!
それも大好物のプリンを……
あ!今度はマルチちゃんがショートケーキをリュウちゃんに食べさせている!
なんて羨ましい事でしょう。
私にもあんな時代がありましたね~
さて、もうすぐリュウちゃんの学校が始まっちゃいますね~
後でマルチちゃんに聞いて行きたいようならあの学園長とOHANASHIしなければなりませんね♪
ケーキを食べた後、リュウちゃんに内緒で聞いてみたところ結論行きたいそうです。さて忙しくなりそうですね……
お金?家はかなりお金持ちなのです。
外国に居るお父さんに感謝ですね♪
* * *
――マルチside
待ち望んだケーキ。
流兎の横に座り、箱を開ける。すると、甘いケーキ屋さんで嗅いだ匂いと同じ匂いがリビングに広がった気がした。
流兎が買ってくれた三つのケーキ、里奈さんはモンブランを持ったまま俯いている、しかし、今の私は気にしていられなかった。なぜならケーキが目の前にあるから!
同梱されていたプラスチックのフォークでショートケーキを一口大に切って口に運ぶ。
衝撃が体中駆け巡った。
クリームの甘さ、スポンジの食感、苺の酸味……知識は有ったけど実際に食べてみると感動
を覚えた。この世にこんな美味しい物が有るのだと……
他の人にもこの美味しさを分かって欲しくて、フォークで刺して流兎の方に向いた。
「流兎!美味しすぎますよこれ!食べてみてください!」
流兎が何度も食べたことがある事を忘れて。
その行為がリア充カップル共がやっている“あ~ん”だということも忘れて
勿論流兎は一回断ったが、あまりにもマルチの目が輝いていたものだから断りきれず顔をほのかに赤く染めて……
あ、あ~ん
「如何ですか?美味しいですか?」
「(二重の意味で)美味しいよ」
「そうですか!」
その後、自分のプリンをあのキラキラ輝く黄金の瞳に負けて食べさせてあげた。