表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『異世界に転移したら、俺だけ世界設定に存在しなかった』  作者: 一ノ瀬 律
最終章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
279/280

第278話 問いが沈み、深層が揺れた

 第三の構造が放った問い。


「お前はどこから来た?」


 その震えは、カイの深層の奥へ沈み込み、静かに広がり続けていた。


 深層はその問いを受け取ると、いつもの沈みではなく、まるで“探るような沈静”を返した。

深層の静けさが、問いの震えに合わせてわずかに形を変える。

まるで深層自身が、その問いに答えを探しているようだった。


 リーナはカイの表情を見つめながら、声を震わせた。


「……カイ……答えられる……?その問い……あなた自身の……」


 カイはゆっくりと息を吸い、深層の奥へ沈んだまま答えた。


「……わからない……でも……深層が……“思い出せ”って……言ってる……」


 アークは眉を寄せた。


「思い出す……?カイの起源は……この世界のどこにも記録されていないはずだ……」


 影は淡々と告げた。


「対象存在の起源照合行動、第二段階へ移行」


 中心の芽はその言葉に呼応するように、震えを細かく変化させた。

その震えは、問いを繰り返すのではなく、まるで“答えの形”を探るような律動だった。


 カイは胸に手を当て、苦しげに息を吐いた。


「……深層が……揺れてる……何か……触れられたくない場所に……触れられてるみたいだ……」


 リーナは慌ててカイの肩を支えた。


「カイ!無理しないで……!」


 カイは首を振った。


「違う……これは痛みじゃない……“思い出しそうな感覚”……深層が……何かを……」


 アークは息を呑んだ。


「深層が……記憶を持っている……?そんなはずは……」


 影は静かに言葉を重ねた。


「深層記憶領域、部分活性化を確認」


 リーナは震える声で言った。


「深層に……記憶があるの……?カイの……?」


 カイは目を閉じ、深層の声を探った。

深層はいつもより強い震えを返し、その震えはどこか焦りを含んでいた。


「……深層が……“開くな”って……言ってる……」


 アークは驚愕した。


「開くな……?つまり……深層は何かを隠している……?」


 影は淡々と告げた。


「対象存在の起源照合行動、第三段階へ移行」


 中心の芽は震えをさらに細かくし、カイの深層へ向けて連続的に送り続けた。

その震えは、まるで“扉を叩く”ような動きだった。


 カイはその感触に息を呑んだ。


「……深層が……押されてる……!第三の構造が……深層の奥を……開けようとしてる……!」


 リーナは叫んだ。


「カイ!止められないの!?深層が壊れちゃう!」


 カイは苦しげに首を振った。


「違う……深層が……“開けるな”じゃなくて……“まだ開けるな”って……言ってる……」


 アークは息を呑んだ。


「まだ……?つまり……深層は起源を知っているが……今は開けられない……?」


 影は静かに告げた。


「起源照合行動、第四段階へ移行。対象存在の反応を待機」


 中心の芽は震えを収束させ、まるで息を潜めるように静かになった。

その静けさは、問いを繰り返すためではなく、“答えを待つため”の静けさだった。


 カイは深層の奥で、かすかな声を聞いた。


「……深層が……“答えろ。だが、全部ではない”って……」


 リーナは息を呑んだ。


「全部じゃない……?どういう意味……?」


 カイはゆっくりと目を開け、中心の芽を見つめた。


「……俺がどこから来たか……全部は言えない……でも……“ここではない場所”から来た……」


 中心の芽が、わずかに震えた。

その震えは、まるで理解したような、受け入れたような、柔らかい揺らぎだった。


 アークは震える声で言った。


「……第三の構造が……カイの起源を……受け入れた……?」


 影は静かに告げた。


「起源照合行動、第一応答を確認」


 中心の芽は、カイの言葉を受け取ったように、静かに震えを返した。


 その震えは、“続けろ”と言っているようだった。


 中心の芽は、カイの答えを受け取ると、静かに震えを深めた。


 その震えは、納得でも拒絶でもなく、まるで“次の問いを準備する”ような律動だった。

空白の深層はその震えを受け取ると、沈みではなく、わずかに“揺らぎ”を返した。

世界の層もまた、拍を弱め、芽の震えに合わせて境界を薄くした。


 リーナはその変化を見つめながら、息を呑んだ。


「……カイ……あれ……あなたの答えを……受け入れてる……」


 カイは深層の奥へ沈んだまま、眉を寄せた。


「……深層が……“まだ足りない”って……言ってる……」


 アークは驚愕した。


「足りない……?起源の答えが……?」


 影は淡々と告げた。


「起源照合行動、第五段階へ移行」


 中心の芽は、まるでその宣言を合図にしたかのように、震えを一度だけ強く跳ね上げた。

その震えは線となり、カイの深層へ向かってまっすぐ伸びていく。


 リーナは叫んだ。


「カイ!また来るよ……!」


 カイは目を閉じ、深層の声を探った。

深層は強い震えを返し、その震えはどこか“覚悟”を含んでいた。


「……深層が……“次はお前が聞け”って……」


 アークは息を呑んだ。


「聞け……?第三の構造の問いに……カイが問い返す……?」


 影は静かに告げた。


「対象存在の逆照合行動、開始」


 中心の芽は震えを細かく分裂させ、複数の揺らぎとしてカイへ向けて送り始めた。

その揺らぎは、まるでカイの存在の輪郭を“押し広げる”ような動きだった。


 カイはその感触に息を呑んだ。


「……深層が……“聞け。お前が知りたいことを”って……」


 リーナは震える声で言った。


「知りたいこと……?カイ……あなた……何を……」


 カイはゆっくりと目を開け、中心の芽を見つめた。


「……俺が……ずっと知りたかったこと……」


 アークは息を呑んだ。


「まさか……自分が“なぜ存在しなかったのか”……?」


 カイは静かに頷いた。


「……そうだ。俺は……この世界に存在しなかった。その理由を……ずっと知りたかった……」


 中心の芽が、わずかに震えた。

その震えは、まるで「聞け」と促すような揺らぎだった。


 影は淡々と告げた。


「逆照合行動、第二段階へ移行」


 カイは深層の奥へ沈み、問いを放った。


「……第三の構造……俺は……なぜこの世界に存在しなかった……?」


 その瞬間、中心の芽が大きく震えた。

空白の深層が沈み、世界の層が揺れ、三者の境界が一瞬だけ消えた。


 リーナは息を呑んだ。


「……カイ……何か……返ってきてる……!」


 カイは胸に手を当て、震える声で言った。


「……深層が……“聞いた。答えが来る”って……」


 アークは息を止めた。


「答え……第三の構造が……カイの存在の理由を……」


 影は静かに告げた。


「起源逆照合行動、最終段階へ移行」


 中心の芽は震えを収束させ、次の瞬間、カイの深層へ向けて“ひとつの答え”を放った。


 カイはその答えを受け取った瞬間、息を呑んだ。


「……っ……!」


 リーナは叫んだ。


「カイ!何が聞こえたの!?」


 カイは震える声で答えた。


「……第三の構造が……俺に……“お前は最初から、この世界の外側の構造だった”……って……」


 アークは絶句した。


 影は静かに告げた。


「対象存在の起源照合行動、完了」


 中心の芽は、カイの存在を“外側の構造”として受け入れたように、静かに震え続けていた。

面白いと思ったら、ページ下の【☆☆☆☆☆】やブックマークで応援お願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ