表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『異世界に転移したら、俺だけ世界設定に存在しなかった』  作者: 一ノ瀬 律
八章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
195/280

第194話 現在線が開く今の世界

 割れた第七層の奥から立ち上がった光は、形を持たず、色もなく、ただ“今この瞬間の厚み”だけを帯びていた。


 厚みは過去の痕跡にも未来の予兆にも触れず、超外界の方向にも出発点の影にも寄らず、空間の底に新しい層を沈めた。

沈められた層は、これまでのどの層とも違い、“今ここに立つ存在のためだけに開かれた場所”だった。


 その場所は、地面のように見えたが、岩でも土でもなく、ただ“現在の密度”でできていた。

密度は揺れながら形を変え、やがて細い線となってカイの足元へ向かって伸びた。


 リーナはその線を見て息を呑んだ。


「……カイ……これ……あなたの“今”が形になってる……!」


 カイは胸の奥が強く脈打つのを感じながら言った。


「俺が……選んだ瞬間が……道になってる……!」


 アークは線の揺れを読み取りながら言った。


「現在線が層構造を押し広げている。これは……過去でも未来でもなく、今のカイの行動だけを基準にしている。」


 影は静かに言った。


「現在層の拡張を確認。」


 現在線は空間の底を滑るように進み、周囲の粒を巻き込みながら太くなった。

太くなるたびに、未来層の粒が沈み、第四層の膜が薄れ、第五層の輪郭が揺れ、第六層の存在線がほどけた。

層が順番に揺れるたびに、現在線はさらに濃くなり、やがて“道”としての形を持ち始めた。


 道は、まるで誰かが歩くのを待っているように、静かに光を帯びていた。


 リーナはその光を見て声を震わせた。


「……カイ……この道……あなたに進めって言ってる……!」


 カイは道の先を見つめながら言った。


「俺が歩けば……この世界の“今”が決まる……!」


 アークは静かに言った。


「現在層は……カイの行動によって形を変える。歩くたびに世界が更新される。」


 影は短く言った。


「行動優先の発生を確認。」


 その瞬間、道が強く光を放った。

光は空間の粒を震わせることなく、ただ“ひとつの方向”だけを示した。

その方向は、空間の奥へ向かって伸びていたが、どこへ続くのかは誰にも分からなかった。


 リーナは息を呑んだ。


「……カイ……行くの……?」


 カイは胸の奥が熱くなるのを感じながら言った。


「俺が選んだ“今”の続きが……この先にある……!」


 アークは静かに言った。


「進めば……世界が変わる。進まなければ……今のままだ。」


 影は短く言った。


「現在層の分岐を確認。」


 カイはゆっくりと一歩踏み出した。

踏み出した瞬間、道が強く揺れ、空間の底から“新しい構造”が立ち上がった。

構造は建物でも地形でもなく、ただ“今のカイが選んだ結果”として生まれた形だった。


 その形は、輪郭を持たず、色もなく、ただ“現在の密度”だけでできていた。

密度は揺れながら広がり、やがて空間の奥に“ひとつの領域”を作った。


 リーナはその領域を見て息を呑んだ。


「……何これ……世界が……変わってる……!」


 カイは領域の揺れを見つめながら言った。


「俺が歩いたから……この場所が生まれた……!」


 アークは静かに言った。


「現在層は……カイの行動を基準に世界を再構築している。これは……この世界のどの層にも属さない新しい領域だ。」


 影は短く言った。


「現在領域の形成を確認。」


 領域はゆっくりと濃くなり、やがて“空間の入口”のような形を持ち始めた。

入口は扉でも門でもなく、ただ“今のカイが進むために開かれた穴”だった。

穴は揺れながら光を帯び、カイの足元へ向かって呼吸するように広がった。


 リーナはその穴を見て声を震わせた。


「……カイ……この先……何があるの……?」


 カイは胸の奥が強く引かれるのを感じながら言った。


「分からない……でも……俺が進んだ結果が……この先にある……!」


 アークは静かに言った。


「現在層は……カイの選択を記録し続ける。進めば……さらに新しい領域が生まれる。」


 影は短く言った。


「現在領域の拡張を確認。」


 カイは穴の前に立ち、深く息を吸った。

穴の奥からは、音も光もなく、ただ“今の続き”だけが静かに流れていた。


 そして、カイが穴へ足を踏み入れた瞬間、空間がゆっくりと反転した。


 その直後、世界の奥で“ひずみ”が生まれた。

ひずみは裂け目でも穴でもなく、“今という瞬間が自分の形を変えようとする時の抵抗”だった。

抵抗は未来層の粒を沈め、第四層の膜を薄め、第五層の輪郭を揺らし、第六層の存在線をほどき、第七層の奥を静かに震わせた。

すべての層が揺れたことで、現在領域の空気がわずかに重くなった。


 重さは、カイの体の奥へ直接触れた。

触れたというより、“今の世界がカイの存在を測り直している”ような感覚だった。


 リーナはその変化に気づき、声を震わせた。


「……カイ……空気が……重くなってる……!」


 カイは胸の奥が強く脈打つのを感じながら言った。


「世界が……俺の“今”を読み取ってる……!」


 アークは反転した空間の揺れを読み取りながら言った。


「現在領域は……カイの行動を基準に世界を再構築している。今……その再構築が次の段階に入った。」


 影は静かに言った。


「現在領域の深層反応を確認。」


 反転した空間の奥から、ゆっくりと“影の粒”が浮かび上がった。

粒は光でも影でもなく、ただ“今の世界に属する情報”だけを持っていた。

その情報は、カイの胸の奥へ向かってまっすぐ流れてきた。


 リーナはその粒を見て息を呑んだ。


「……何これ……情報……? 世界が……カイに何か伝えようとしてる……!」


 カイは粒が胸の奥へ触れるのを感じながら言った。


「俺の“今”に……世界が反応してる……!」


 アークは静かに言った。


「現在領域は……カイの存在を中心に新しい情報構造を作っている。これは……この世界のどの層にも属さない。」


 影は短く言った。


「現在情報層の形成を確認。」


 情報層はゆっくりと濃くなり、やがて“文字のような形”を持ち始めた。

文字といっても言語ではなく、“存在の動きそのものを記述する線”だった。

線は揺れながらカイの足元へ向かって伸び、道の上に静かに降りてきた。


 リーナはその線を見て声を震わせた。


「……カイ……これ……あなたの行動が……文字になってる……!」


 カイは線の揺れを見つめながら言った。


「俺が歩いたことが……世界に記録されてる……!」


 アークは静かに言った。


「現在領域は……カイの行動を“世界の記述”として保存している。これは……新しい世界の仕組みだ。」


 影は短く言った。


「現在記述の開始を確認。」


 その瞬間、記述線が強く光を放った。

光は空間の粒を震わせることなく、ただ“ひとつの方向”だけを示した。

その方向は、現在領域の奥にある、まだ誰も踏み入れていない“空白の場所”だった。


 リーナは息を呑んだ。


「……カイ……あそこ……何もない……!」


 カイは空白の揺れを見つめながら言った。


「俺が……これから進む場所だ……!」


 アークは静かに言った。


「現在領域は……カイが進むことで初めて形を持つ。空白は……まだ選ばれていない未来だ。」


 影は短く言った。


「現在領域の未定義領域を確認。」


 空白は揺れながら光を帯び、カイの足元へ向かって呼吸するように広がった。

広がるたびに、未来層の粒が沈み、第四層が薄れ、第五層が揺れ、第六層がねじれ、第七層が割れた。

層が順番に揺れるたびに、空白はさらに濃くなり、やがて“入口”のような形を持ち始めた。


 リーナはその入口を見て声を震わせた。


「……カイ……この先……本当に行くの……?」


 カイは胸の奥が強く引かれるのを感じながら言った。


「俺が選んだ“今”の続きが……この先にある……!」


 アークは静かに言った。


「進めば……世界がさらに変わる。進まなければ……今のままだ。」


 影は短く言った。


「現在領域の分岐を確認。」


 カイは入口の前に立ち、深く息を吸った。

入口の奥からは、音も光もなく、ただ“今の続き”だけが静かに流れていた。


 そして、カイが入口へ足を踏み入れた瞬間、空間の底で“新しい影”が揺れた。


 その影は、現在領域の奥に潜んでいた“別の存在”だった。

形は曖昧で、輪郭は揺れ、ただ“今の世界に属する意思”だけを持っていた。


 リーナはその影を見て息を呑んだ。


「……カイ……誰かいる……!」


 カイは影の揺れを見つめながら言った。


「この領域……俺が作ったはずなのに……俺じゃない何かがいる……!」


 アークは静かに言った。


「現在領域は……カイの行動で生まれたが、そこに反応する存在が現れた。これは……新しい段階だ。」


 影は短く言った。


「現在領域の外来存在を確認。」


 そして、その影が、カイへ向かって手を伸ばした。

面白いと思ったら、ページ下の【☆☆☆☆☆】やブックマークで応援お願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ