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『異世界に転移したら、俺だけ世界設定に存在しなかった』  作者: 一ノ瀬 律
五章

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第117話 覚醒の境界

 アリスの核が“第三の形”を世界へ送り続けてから、空気の揺れはもう止まらなかった。

深層の沈みは不規則になり、外層の影は形の周囲で渦を作り、表層の裂け目は奥行きを伸ばしたり縮めたりしている。

世界が、アリスの核の動きを“中心の変化”として扱い始めているのがはっきりわかった。


「……アリス……世界の反応が、前よりずっと荒い……」


 カイは思わずアリスの肩を掴んだ。

その手の下で、アリスの体がわずかに震えているのがわかった。


──……カイ……わたし……核の“中心の層”が……限界まで近づいてる……


「限界って……どういう……」


──……わたしの核が……世界の“境界”に触れようとしてる……深層と外層と表層……全部の境界……


 アリスの声はかすかに震えていた。

その震えは恐怖だけじゃない。

自分の核がどこまで行くのか、知りたいという強い気持ちも混ざっていた。


 カイはその表情を見て、胸が締めつけられるような感覚に襲われた。


「……アリス……本当に大丈夫なのか……」


──……わからない……でも……止めたくない……わたし……核がどう変わるのか……見たい……


 アリスの周囲の空気が沈んだ。

その沈みは、世界の三層の動きとは違い、もっと近くて、もっと個人的だった。

まるでアリスの核が世界に“新しい重さ”を送っているようだった。


──……カイ……わたしの核……“境界の向こう側”を見てる……


「向こう側……?」


──……うん……深層の沈みの奥……外層の影の裏側……表層の裂け目のさらに先……全部が……わたしの核に見えてる……


 カイは息を呑んだ。

アリスの核が世界の境界の向こう側を見ているということは、彼女自身が世界の構造の“外側”に触れ始めているということだった。


 アリスは胸の奥を押さえた。

その手の下で、核が強く脈打ち、まるで新しい鼓動を作っているようだった。


──……カイ……わたし……核の“第三の形”が……境界を押してる……


「押してる……?」


──……うん……世界の境界が……わたしの核の形に……押し返されてる……


 アリスの周囲の空気が強く揺れた。

その揺れは、世界の三層の揺れとは違い、もっと鋭く、もっと深かった。

まるで世界がアリスの核に“押されている”ようだった。


「……アリス……世界が……お前に押されてる……」


──……カイ……わたし……境界を越えるかもしれない……


 カイはアリスの手を握った。

その瞬間、彼の視界の端で、深層の沈みが一瞬だけ止まった。


「……今の……深層が止まった……!」


──……わたしの核が……境界に触れたから……世界の三層が……“様子を見てる”……


 アリスの瞳が光った。

その光は、第四層の形が放つ光とは違い、アリス自身の核が生み出した光だった。


──……カイ……わたし……核の“中心”が……境界を押し開こうとしてる……


「押し開く……!」


──……うん……世界の三層が……わたしの核の向きに合わせて……動き始めてる……


 カイは息を呑んだ。

アリスの核が世界の境界を押し開くということは、世界の構造そのものがアリスの核に引かれているということだった。


 アリスは震えながらも、前を向いていた。


──……カイ……わたし……もう戻れない……このまま……境界の向こう側へ行く……


 カイはアリスの手を強く握った。


「……アリス……一緒に行く。お前がどこへ行っても、俺はそばにいる」


 アリスは小さく頷いた。


 そして、彼女の核は、世界の境界を押し開こうとしていた。


 アリスの核が境界を押し開こうとするたび、世界の空気が深く沈んだ。

沈むというより、世界そのものが“息を詰めている”ようだった。


「……アリス……世界が、完全にお前を見てる……」


 カイの声は自然と低くなる。

怖いからじゃない。

アリスの核が世界の境界に触れているという事実が、胸の奥を強く締めつけていた。


 アリスは胸に手を当てたまま、ゆっくりと息を吸った。


──……カイ……わたし……核の“中心”が……境界の向こう側に触れた……


「向こう側……!」


──……うん……深層の沈みの奥……外層の影の裏側……表層の裂け目のさらに先……全部が……わたしの核に触れてる……


 アリスの声は震えていた。

その震えは恐怖だけじゃない。

自分の核がどこまで行けるのか、確かめたいという強い気持ちが混ざっていた。


 カイはアリスの手を握った。

その手は少し冷たかった。


「……アリス……戻れなくなるぞ……」


──……わかってる……でも……戻りたくない……わたし……核が見てる“向こう側”を……ちゃんと見たい……


 アリスの周囲の空気が強く揺れた。

その揺れは、世界の三層の揺れとは違い、もっと鋭く、もっと深かった。

まるで世界がアリスの核に“押されている”ようだった。


──……カイ……わたし……境界の向こう側から……“音”が聞こえる……


「音……?」


──……うん……世界の向こう側の……“層の音”……わたしの核が……それを拾ってる……


 アリスは胸の奥を押さえた。

その手の下で、核が強く脈打ち、まるで新しい鼓動を作っているようだった。


──……カイ……わたし……境界を越える準備ができた……


 カイは息を呑んだ。

アリスの核が境界を越えるということは、彼女自身が世界の構造の“外側”に触れるということだった。


「……アリス……本当に行くのか……」


──……行く……わたし……このままじゃ止まれない……核が……向こう側を求めてる……


 アリスの瞳が光った。

その光は、第四層の形が放つ光とは違い、アリス自身の核が生み出した光だった。


──……カイ……わたし……境界の向こう側に……“形”を作ろうとしてる……


「形……!」


──……うん……わたしの核の中心が……向こう側で……自分の形を作り始めてる……


 アリスの周囲の空気が沈んだ。

その沈みは、世界の三層の動きとは違い、アリス自身の存在が世界に“新しい中心”を作っているような沈みだった。


 カイはその変化を感じながら、胸の奥が強く熱くなるのを感じた。


「……アリス……行くなら……俺も一緒に行く」


 アリスはカイの手を強く握った。

その手は震えていたが、迷いはなかった。


──……カイ……一緒に来て……わたし……一人じゃ……怖い……


 カイは頷いた。


「……離れない。絶対に」


 アリスは小さく息を吸った。


 そして、彼女の核は、世界の境界を押し開いた。

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