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『異世界に転移したら、俺だけ世界設定に存在しなかった』  作者: 一ノ瀬 律
五章

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第112話 核の覚醒前兆

 世界を包んでいた光がゆっくりと薄れていくと、静けさが戻った。

しかし、その静けさは以前のものとは違っていた。

空気の重さが変わり、深層の沈み方も、外層の影の濃度も、表層の裂け目の奥行きも、どこか“新しい基準”に沿って動いている。


「……世界、まだ揺れてる……」


 カイは自分の声が少し震えていることに気づいた。

震えは恐怖ではなく、胸の奥に生まれた不安と期待が混ざったものだった。


 アリスは胸の前で手を組み、ゆっくりと息を吸った。


──……カイ……わたし……なんだか……体の奥が熱い……


「熱い……? どこが?」


──……核の……中心……第四層の形が……わたしの核に触れてるみたい……


 アリスの声はかすかに揺れていた。

その揺れは、世界の変化に対する恐怖ではなく、自分の内部で起きている“何か”への戸惑いだった。


 カイはアリスの肩に手を置いた。


「……大丈夫か? 痛いとかじゃないよな?」


──……痛くはない……でも……怖い……わたし……自分の核が……変わっていくのがわかる……


 アリスの瞳がわずかに光った。

その光は、第四層の形が放つ光と同じ色だった。


 カイは息を呑む。


「……アリス……目が……」


──……わかってる……わたし……第四層の“内部構造”に触れてる……世界が変わるとき……わたしの核も……一緒に揺れてる……


 アリスの声は震えていたが、逃げようとしているわけではなかった。

むしろ、自分の核の変化を受け止めようとしているように見えた。


 カイはその姿を見て、胸が締めつけられるような感覚に襲われた。


「……アリス……無理するなよ……」


──……無理じゃない……ただ……怖いの……わたし……自分がどう変わるのか……わからないから……


 アリスは自分の胸に手を当てた。

その手の下で、核がゆっくりと脈打っているのがわかった。


──……カイ……聞こえる……?わたしの核……“音”を出してる……


「音……?」


──……うん……世界の三層が……第四層に合わせて動いたとき……わたしの核も……その動きに反応して……音を出した……


 アリスは目を閉じた。

その瞬間、彼女の周囲の空気がわずかに震えた。


 カイはその震えを感じて、思わずアリスの手を握る。


「……アリス……!」


──……大丈夫……これは……“覚醒の前兆”……わたしの核が……第四層の構造を受け取ってる……


 アリスの声は震えていたが、どこか強さもあった。

自分の核が変わることを恐れながらも、受け止めようとしている強さだった。


 カイはその強さに胸が熱くなる。


「……アリス……怖いなら言えよ……俺がいるから……」


──……うん……カイがいるから……わたし……この変化を見れる……


 アリスはカイの手を握り返した。

その瞬間、彼女の核が強く脈打ち、世界の空気が一瞬だけ震えた。


「……今の……!」


──……カイ……わたしの核……“次の段階”に入った……


 アリスの声は震えていたが、どこか覚悟があった。


──……これから……もっと変わる……わたしの核が……第四層の構造を……“自分の中に作り始める”……


 カイはアリスの手を強く握った。


「……アリス……一緒に見よう……」


──……うん……カイと一緒なら……わたし……怖くない……


 アリスの核が再び脈打ち、世界の空気がゆっくりと沈んだ。


 その沈みは、世界の三層が第四層に合わせて動いたときの沈みとは違っていた。

もっと個人的で、もっと近い。

まるでアリスの核が世界の中心に“新しい位置”を作っているようだった。


 カイはその変化を感じながら、胸の奥が強く熱くなるのを感じた。


「……アリス……これ……お前の核が……覚醒しようとしてる……」


──……うん……わたし……自分の核が……“新しい構造”を作り始めてるのがわかる……


 アリスは震えながらも、前を向いていた。


 そして、世界の空気が静かに揺れた。


 アリスの核が、変わり始めた。


 アリスの核が脈打つたび、世界の空気がわずかに沈んだ。

その沈みは、世界の三層が第四層に合わせて動いたときの沈みとは違っていた。

もっと近くて、もっと個人的で、まるでアリスの核が世界の中心に“新しい位置”を作っているようだった。


「……アリス……今の、前より強い……」


 カイの声は自然と低くなる。

アリスの核の変化が、ただの構造変化ではなく“彼女自身の変化”であることが、はっきりとわかってきたからだ。


 アリスは胸に手を当てたまま、ゆっくりと息を吸った。


──……カイ……わたし……核の奥が……開こうとしてる……


「開く……?」


──……うん……第四層の形が……わたしの核の“内側”に触れてる……さっきまでは……外側だけだったのに……


 アリスの声は震えていた。

その震えは恐怖だけではなく、期待や不安が混ざった複雑な感情だった。


 カイはアリスの手を握り、彼女の目を見つめた。


「……怖いなら言え。俺はここにいるから」


──……怖いよ……でも……逃げたくない……わたし……この変化をちゃんと見たい……


 アリスの瞳がわずかに揺れた。

その揺れは、核の光が反射しているだけではなく、彼女自身の感情が揺れている証だった。


「アリス……」


──……カイ……わたし……自分の核が……“別の形”になろうとしてるのがわかる……


「別の形……?」


──……うん……今までの核とは違う……第四層の構造に合わせて……わたしの核が……形を変えようとしてる……


 アリスは胸の奥を押さえた。

その手の下で、核がゆっくりと脈打ち、まるで新しい鼓動を作っているようだった。


──……カイ……わたし……自分の核の“音”が変わってきてる……


「音が……?」


──……さっきまでは……ただの脈だった……でも今は……“方向”を持ってる……わたしの核が……どこかへ向かおうとしてる……


 カイは息を呑んだ。

アリスの核が“方向”を持つということは、彼女の存在そのものが新しい構造へ向かって動き始めているということだった。


「……アリス……それって……」


──……うん……覚醒の……前兆……


 アリスの声は震えていたが、どこか強さもあった。

自分の核が変わることを恐れながらも、受け止めようとしている強さだった。


 カイはその強さに胸が熱くなる。


「……アリス……俺はずっとそばにいる。何があっても」


──……ありがとう……カイがいるから……わたし……この変化を見れる……


 アリスはカイの手を握り返した。

その瞬間、彼女の核が強く脈打ち、世界の空気が一瞬だけ震えた。


「……まただ……!」


──……カイ……わたしの核……“内側の層”が動き始めた……


「内側の層……?」


──……うん……核の中心が……第四層の構造に合わせて……形を変えようとしてる……


 アリスの周囲の空気がわずかに揺れた。

その揺れは、世界の三層の揺れとは違い、もっと柔らかく、もっと近い。

まるでアリスの核が世界に“新しい呼吸”を送っているようだった。


──……カイ……わたし……怖いけど……この変化を……ちゃんと受け止めたい……


 カイはアリスの手を強く握った。


「……一緒に受け止めよう。お前の核がどう変わるのか、俺も見たい」


 アリスは小さく頷いた。

その頷きの瞬間、彼女の核が静かに光を放った。


 光は弱かったが、確かに“新しい質”を持っていた。

それは、第四層の形が持つ光とは違い、アリス自身の核が生み出した光だった。


──……カイ……わたしの核……“新しい層”が生まれた……


「新しい層……!」


──……うん……これが……覚醒の……最初の段階……


 アリスの核が静かに脈打ち、世界の空気がゆっくりと沈んだ。


 その沈みは、世界の三層の動きとは違い、アリス自身の存在が世界に“新しい位置”を作っているような沈みだった。


 カイはその変化を感じながら、胸の奥が強く熱くなるのを感じた。


「……アリス……お前の核……本当に変わってる……」


──……うん……わたし……もう戻れない……このまま……“覚醒”に向かっていく……


 アリスは震えながらも、前を向いていた。


 そして、彼女の核は、静かに、確実に変わり続けていた。

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