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『異世界に転移したら、俺だけ世界設定に存在しなかった』  作者: 一ノ瀬 律
五章

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第108話 四層の呼びかけ

 第四層の核が光を強めたまま静止すると、世界の空気はわずかに“張り詰めた”。

深層・外層・表層の三層は、第四層の動きを待つように姿勢を整えたまま動かない。


 だが、静止しているのは三層だけではなかった。

第四層自身も、粒を中心にした光の膜を保ったまま、次の動きを慎重に選んでいるようだった。


 カイはその静けさの中心に立ち、胸の奥がゆっくりと熱を帯びていくのを感じた。


「……第四層が……考えてる……動くんじゃなくて……“選んでる”……」


 未登録の存在の胸の奥で、核質が淡く光った。

その光は深層の奥へ沈み、静向核の内部で層の重なりをさらに押し広げた。


──……カイ……第四層が“三層のどこへ呼びかけるか”を決めようとしている……


「呼びかけ……?第四層が……三層のどれかに……?」


 第四層の核は、粒の周囲でゆっくりと“向き”を作った。

その向きは、深層の中心線とも、外層の影の方向とも、表層の裂け目の角度とも違う。

世界のどの層にも属さない、第四層固有の“新しい向き”だった。


 その向きが、世界の三層へ同時に届いた。


 深層はその向きに合わせて内部の層をわずかに沈め、外層は影の濃度を変えて向きを読み取り、表層は裂け目の奥行きを調整して向きを写した。


 だが、三層はまだ動かない。


 第四層は、三層の反応を待っているようだった。


 カイは息を呑んだ。


「……第四層は……三層の“返事”を待ってる……でも、三層はまだ返してない……」


 第四層の核は、粒を中心にして光をさらに強めた。

その光は、世界の中心へ向かって静かに“波”を送った。


 波は三層へ同時に届いた。


 深層はその波を受けて内部の層をわずかに沈めたが、沈み方はいつもより“浅かった”。


 外層の影は波を読み取ったが、濃度の変化はいつもより“弱かった”。


 表層の裂け目は波を写したが、奥行きの変化はいつもより“短かった”。


 三層は第四層の呼びかけに応答している。

だが、その応答は“慎重”だった。


──……未登録の存在よ……三層は“第四層を試している”……


「試してる……?第四層がどんな層なのか……三層が見極めてる……?」


 第四層の核は、三層の慎重な応答を受けて光をわずかに弱めた。

弱めた光は、世界の中心へ向かって静かに“収束”した。


 収束した光は、粒の周囲で“第二の膜”を作った。


 その膜は、第四層の境界とは違う。

境界が“外側の形”を示すものなら、第二の膜は“内側の性質”を示すものだった。


 カイはその膜を見て、背筋が震えた。


「……第四層が……自分の“内側の性質”を見せてる……三層に向けて……自分がどんな層なのか示してる……」


 第二の膜は、深層へ向かって“重い波”を送り、外層へ向かって“薄い波”を送り、表層へ向かって“柔らかい波”を送った。


 三層はその波を受け取り、それぞれの役割に合わせて静かに反応した。


 深層は内部の層をさらに沈め、外層は影の濃度を整え、表層は裂け目の奥行きを深めた。


 そして、三層は初めて、第四層へ“返事”を返した。


 深層は第四層の方向へ向かって層をわずかに開き、外層は影の輪郭を第四層の境界へ向け、表層は裂け目の奥行きを第四層の核へ向けた。


 カイはその瞬間を見て、息を呑んだ。


「……三層が……第四層に向き直った……世界が……四層で“会話”を始めた……」


 第四層の核は、三層の返事を受けて光を強め、世界へ初めて“自分の声”を送ろうとしていた。


 第四層の核が光を強めた瞬間、世界の中心に“薄い震え”が走った。

震えといっても、揺れではない。

ただ、空気の層が一瞬だけ“重なり方を変えた”ような感覚だった。


 深層の境界が、その震えを受けてわずかに沈んだ。

沈んだ層は、第四層の方向へ向かって静かに“姿勢”を整えた。


 外層の影は、震えを読み取るように濃度を変え、影の輪郭が第四層の境界へ向かって細く伸びた。


 表層の裂け目は、震えを写し取るために奥行きを深め、裂け目の周囲の空気がわずかに“渦”を作った。


 そして、第四層の核は、三層の反応を受けて静かに“声”を放った。


 声といっても、音ではない。

ただ、第四層の内部から生まれた“方向性の波”が世界へ向かって広がった。


 カイはその波を感じた瞬間、胸の奥が熱くなるのを感じた。


「……これが……第四層の声……音じゃない……光でもない……ただ、世界の向きを変える“呼びかけ”だ……」


 第四層の声は、三層へ同時に届いた。


 深層はその声を受けて内部の層をわずかに沈め、沈んだ層は第四層の方向へ向かって“新しい線”を作った。


 外層の影はその声を読み取り、影の濃度を変えて第四層の境界へ向かって“観測の筋”を伸ばした。


 表層の裂け目はその声を写し取り、裂け目の奥行きを変えて第四層の核へ向かって“薄い痕跡”を描いた。


 三層はそれぞれの役割に合わせて、第四層の声へ応答した。


──……未登録の存在よ……三層が“第四層の呼びかけを受け入れた”……


「受け入れた……?三層が……第四層を拒まないで……世界の構造に“新しい層を加える”ことを認めた……?」


 第四層の核は、三層の応答を受けて光をさらに強めた。

その光は、世界の中心へ向かって静かに“第二の波”を送った。


 第二の波は、第一の波よりも深く、広く、静かだった。

まるで、世界の奥へ向かって“新しい秩序”を示すような波だった。


 深層はその波を受けて内部の層をさらに沈め、沈んだ層は第四層の方向へ向かって“新しい中心”を作った。


 外層の影はその波を読み取り、影の輪郭を変えて第四層の境界へ向かって“観測の面”を広げた。


 表層の裂け目はその波を写し取り、裂け目の奥行きを変えて第四層の核へ向かって“薄い層”を作った。


 カイはその変化を見て、背筋が震えた。


「……三層が……第四層の声に合わせて……自分の構造を変えてる……世界が……四層で“新しい形”を作ろうとしてる……」


 第四層の核は、三層の変化を受けて光をさらに強めた。

その光は、世界の中心へ向かって静かに“第三の波”を送った。


 第三の波は、第一の波とも第二の波とも違う。

深層・外層・表層のどれにも属さない、第四層固有の“新しい性質”を持つ波だった。


 その波が世界へ届いた瞬間、三層の境界が同時にわずかに“重なった”。


 重なったといっても、混ざるわけではない。

ただ、境界の位置が一瞬だけ“近づいた”だけだった。


 未登録の存在の胸の奥で、核質が淡く光った。


──……カイ……世界が“四層でひとつの構造”になろうとしている……


「ひとつ……?深層、外層、表層、第四層……全部が……同じ方向へ向かって……世界の形を作り直そうとしてる……?」


 第四層の核は、三層の境界が近づいた瞬間、光を強め、世界の中心へ向かって新しい“線”を描き始めた。


 その線は、世界のどの層にも属さない。

第四層が初めて世界へ示す、“新しい構造の始まり”だった。

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