1.属性の空白
「まず、認証板で確認いたします」
受付の女性は、透明な板と小さな表示窓が付いた装置を、俺たちの前へ置いた。
「一人ずつや。ハナからいき」
俺に促され、ハナが認証板へ手を置いた。
板の内側に青い光が走る。
表示窓へ文字が浮かび、受付の女性が内容を確認した。
《水属性》
《所属国家:水王国》
《戦闘ギルド登録:適合》
「問題ありません」
受付の女性は、小さな金属板をハナへ差し出した。
「こちらが登録証です。ランクは最下位からの開始となります」
説明を聞きながら、ハナは金属板を両手で受け取る。
「もう終わりですか?」
ハナは拍子抜けしたように、登録証と受付を交互に見た。
「はい。登録証を提示すれば、依頼を受けられます」
受付の女性は変わらない笑顔で答えた。
「できた」
ハナは嬉しそうに、登録証を俺へ見せる。
「問題なしやな」
俺はその笑顔を見てから、受付の前へ進んだ。
透明な板の上に手を置く。
何も起きず、青い光も文字も出なかった。
受付の女性が表示窓を見て、わずかに眉を寄せる。
「恐れ入りますが、もう一度お願いします」
一度手を離し、置き直す。
今度は装置の奥で、何かが引っかかるような音がした。
透明な板に、白い線が何本も走る。
表示窓が、一度だけ黒く沈んだ。
《属性接続なし》
《所属国家を特定できません》
《登録処理を停止します》
登録処理を、停止。
ハナの手には、もう登録証がある。
俺の手の下では、白い線だけが走り続けていた。
「……これ、やり直せるんか?」
俺は受付の顔を見た。
低い警報音が、部屋の奥で鳴った。
周囲の話し声が止まり、いくつもの視線がこちらへ集まる。
受付の女性の笑顔が消えた。
机の下で何かを押すと、奥の扉の向こうから足音が近づいてきた。
「……手を離さないでください」
受付の女性は、俺の手から目を離さなかった。
「そのまま、動かないでください」




