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『桜川、白妙の梨 〜過ぎゆく季節と、止まらぬ流れ〜』第1話:ピョコさんとの出会い

桜川の春。日常の中に現れた、少し風変わりで瑞々しい出会いです。

 四月。桜川の両岸から伸びた太い枝が、川面を淡い色に染め上げている。  休日の早朝、僕はいつものように紺色のシャツを羽織り、側道を走っていた。  蛇行する川に沿って桜が咲き誇るさまから、いつしか人々はここを「桜川」と呼ぶようになった。だが、四月も半ばを過ぎれば、花はすでに葉桜へと姿を変えている。

 城址公園のお濠に映る「逆さ城」を写真に収め、図書館へ向かって少し早足になったときだ。

「キーッ!」

 激しいブレーキ音とともに、一台の赤い自転車が僕のわずか五十センチ横で止まった。  黒いニット帽を被った女子高生が、慌てて自転車を降りる。彼女は気まずそうに帽子を脱ぐと、ピョコンと深く頭を下げた。

「すみません!」

 顔を真っ赤にして走り去っていった彼女に、図書館の列で再会した。目が合うと、彼女はまた、あの「ピョコン」という独特のお辞儀をくれた。  僕も思わず、同じように頭を下げて微笑んでしまう。

 それ以来、彼女を見かけるたび、僕は心の中で彼女を『ピョコさん』と名付けた。  桜は散っても、川は絶えず流れていく。この小さな挨拶が、止まっていた僕の時間を動かし始めることなど、この時の僕はまだ知る由もなかった。


「ピョコさん」という愛称に込めた俊夫の親しみ。この小さな挨拶が運命を繋いでいきます。

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