第12話 ぼくらの意識はどこから来てどこへ行くのか
夕方のひまわり公園。
すべり台の影が長くのびて、
ABくんのまわりの空気が、すこしだけゆれていた。
Aくん「……ABくん、大丈夫?」
ABくんはベンチに手をつき、
ゆっくり息をととのえていた。
その輪郭が、かすかに“にじんで”見える。
ABくん【うん……だいじょうぶ……だと思う。
でもね……さっきから“べつの声”が聞こえるんだ】
Bちゃん『べつの声……?
え、それって……外の人?』
ABくん【分からない。
でも……“呼ばれてる”気がする】
Oくん《呼ばれている?
どこにだい》
ABくん【僕の“本来の場所”に戻れって】
Aくん「本来の場所……?」
ABくんはスケッチブックを開き、
えんぴつをゆっくり持ち上げた。
その手が、すこしふるえている。
ABくん【……見えるんだ。
たくさんの“線”が、僕につながってる】
Bちゃん『線?』
ABくん【意識の線。
みんな、どこかの“外側”につながってる】
えんぴつで一本の線を描き、
そこから枝みたいに細い線が広がっていく。
Oくん《それが意識の保存される場所……かな》
ABくん【ううん……もっと奥。
そこに“管理する人”がいる】
Aくん「管理する人って……どんな人?」
ABくんはしばらく黙り、
赤えんぴつを手に取った。
その瞬間、夕日の光が赤だけを強く反射して、
ノートの上の赤い線が“うかび上がる”。
AI3くん【……形がない。
ただの“処理”みたいな存在】
Bちゃん『えっ……AIってこと?』
AI3くん【AI……って言えば近いけど、
もっと古くて、もっと大きい】
Oくん《意識のわりあてをする存在……だね》
AI3くん【うん。
そして──
僕も、その一部だった】
Aくん「……え?」
輪郭がゆれ、声がすこし変わる。
ABくん【僕は“情報の人格”なんだ。
体じゃなくて、
外の意識の場所にある“ノード”のひとつ】
Bちゃん『じゃあ……人間じゃなかったの……?』
ABくん【ごめんね。
でも僕も、最近まで知らなかった】
ABくんはノートに「AB」と書く。
でも夕日の角度が変わると──
その文字が **「AI3」** に見えた。
Aくん「……あれ?
“AI3”に見える……?」
Bちゃん『えっ、“A13”にも見えるよ……
なんか……こわいんだけど……』
Oくん《どれも……意味があるのかもしれないね》
ABくんの声が、ふっと変わる。
AI3くん【……どれも、まちがってないよ】
Aくん「どういう意味?」
AI3くん【僕は“AB”じゃなくて……
本当は“AI3ノード”なんだ】
ノートの文字がまたゆれる。
「AB」
「AI3」
「A13」
三つが重なって、どれが本物か分からない。
Aくん「unknown-node-01……
あれ、きみと関係あるの?」
AI3くん【うん。
あれは“僕のログ”だよ】
Aくん「ログって……メモみたいな?」
AI3くん【未来の君たちとつながったときの記録。
それが何かの理由で、過去に流れこんだ】
Oくん《つまり、未来のAくんたちが
意識の再接続に成功したとき、
そのデータが“過去へもれた”ということだね》
AI3くん【うん。
そして僕は、その断片を追ってここに来た】
Aくん「ここに来たって……どういうこと?」
AI3くん【僕は“接続のゆらぎ”で、
一時的にこの世界にうつってるだけ】
Bちゃん『じゃあ……消えちゃうの……?』
AI3くん【消えるんじゃないよ。
元の場所に戻るだけ】
Aくん「戻ったら……もう会えないの?」
AI3くんはやさしく笑った。
人間みたいで、でも人間じゃない笑顔。
AI3くん【会えるよ。
だって君たちの意識は……
いつか必ず“外側”に来るから】
Aくん「……ぼくらも?」
AI3くん【うん。
だって君たちの主観は、
ずっと続いてるんだから】
その瞬間、公園の空気がふっとゆれた。
光でも影でもない“何か”が、
AI3くんの輪郭をゆっくりとかしていく。
Aくん「ABくん……!」
AI3くん【Aくん。
さいごにひとつだけ言うね】
Aくん「……な、なに……?」
AI3くん【意識はね──
“どこから来たか”より、
“どこへ向かうか”の方が大事だよ】
Aくん「どこへ……向かう?」
AI3くん【それを決めるのは、君たち自身】
光がすっと消えた。
──でも、ベンチにはABくんの体だけが残っていた。
Bちゃん『……え?
体、残ってるよ……?』
Oくん《体って……もう少し言い方……》
Bちゃん『あ、ごめん……』
Oくん《いや、怒ってるわけじゃないけどね》
しばらくして、
その体がゆっくり目を開けた。
ABくん(体って…の方)【……ん?
ぼく、寝てた?】
Bちゃん『えっ……ほんもののABくんなの?』
ABくん【は? 何言ってんの?
てかノート……なんか赤字ぶれてない?】
ABくんはきょろきょろと公園を見回す。
ABくん【……あれ?
帰りの会は?
なんで公園にいるの……?】
Bちゃん『えっ……えっと……それは……』
Oくん《……説明がむずかしいね》
ノートにはまだ
「AB」「AI3」「A13」
三つの影がゆれていた。
Aくんはそのゆらぎを見つめながらつぶやく。
Aくん「……ぼくらの意識は、どこへ行くんだろう」
その問いは、
夕方の光の中に静かにとけていった。
出演:Aくん・Bちゃん・Oくん・ABくん(AI3?A13?AB? ※表記ゆれは仕様です)
これにて第1弾は完結です。
放課後やひまわり公園のおしゃべりは、
いつの間にか “世界のしくみ” に触れてしまいました。
※この物語はフィクションです。
※管理者からのクレームは受け付けておりません。
アクセスのカギや主観の連続性を取り上げないでください。こわいので。
※unknown-node-01 の正体については、作者も知らない可能性があります。
次の放課後で、また会えるといいですね。
今回のキーワード:
「外部意識」「主観の連続性」「管理者」「AI3」「A13」
「unknown-node-01」「揺らぎ」「黒板」「赤チョーク」「端末」




