第2話
私は幽霊である。
名前は思い出せない。
私がいる居間にはフローリングが敷いてあり、白いカバーがかかった三脚のソファーとテーブルが置かれている。
床には血で描かれた魔法陣の類は――ない。
どうやら私は悪魔崇拝や怪しげな術式で召喚された訳ではないらしい。
少し残念な気もする。
テーブルの上には昭和のサスペンス劇場で凶器に使われそうなガラス製の灰皿が鎮座していた。
今どき珍しい。
確かに、あれで殴ればイチコロだろう。
血は付いていないようで安心する。
窓はカーテンで閉じられているが、すき間から優しく陽の光が差し込んでいる。
まだ外は明るいようだ。
どうやら私は、昼行性の幽霊らしい。
試しに陽の光に触れても、痛みや砂になって消えるといった事はなかった。
すごいぞ。
太陽を克服した幽霊になってしまった。
だが、幽霊族でゲゲゲのあの子も日中出歩いていたから別に普通なのかもしれない。
シンプルな部屋で特筆するような物は特になかった。家主が出た際に片付けていったのだろう。
高そうな家具をそのまま置いているのは勿体ないが、きちんとカバーをかけているあたり几帳面な家主らしい。
次の部屋もきっとこのような感じなのかもしれない。手掛かりになりそうな物がないのは残念だが、次の部屋に行くことにする。
ドアノブに手をかけるが……
なんてことだ。
手がドアノブをすり抜けて、まわせない。
……ガッテム!
昼行性の幽霊という新たな可能性が見えてきました。
なお、ドアノブ問題は幽霊にとって重大な課題のようです。
次回、幽霊は部屋を出られるのか。お楽しみに。




