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帰れなくなった日常

【規定人数まで、あと708325人。】

…。

【規定人数まで、あと9946人。】

…。

【規定人数まで、あと143人。】

…。

【規定人数に達しました。保存個体を解放します。】



俺は、気づくと、アパートに戻っていた。

部屋には、ダンジョンへの階段もない。

俺は、狐に化かされたような気持ちで、ダンジョンの階段があった位置を調べるが、そんなことに意味はなかった。


外は、夕焼け空。

街は、奇妙に静かだった。

俺は、外に出る。

人も動物もいない。


「…まさかな。」

俺は、嫌な予感を感じながら、呟く。


「ステータス…閲覧。」


目の前に、半透明のボードが現れる。


「…ここは、ダンジョンの16階層ってことか。」


ボードを閉じる。

すると、いつもの声が聞こえてきた。


【16階層到達おめでとうございます。早速ですが、17階層への階段は、16階層のボスを倒すことで、出現します。

ボスは、コンビニ近くの交差点にいます。それでは、ご健闘をお祈りしています。】


ここらへんにコンビニは1つしかない。

おそらく、あそこだろう。

俺は、当たりをつけると、歩き出す。


「…よくわからないな。16階層のボスを倒せば、いったんは帰れるのか?」


信号だけが規則的に光ったり消えたりしている車も走っていない交差点の真ん中。

そいつはいた。


俺と同じくらいの背丈で、細身だが、筋肉はある。

何かの毛皮をまとって、棍棒を携えている。


「緑の体だし、角もあるからゴブリンの上位種か?」


俺は、交差点の真ん中のそいつを刺激しないようにしながら、近づいていく。


【ボスは、すでにこちらに気づいています。ボスに挑戦するには、先制攻撃をヒットさせてください。攻撃がヒットすると、ボスを縛る呪縛が消えます。】


「先制攻撃は、譲ってくれるってわけか。それだけ、強いモンスターってことなのかな。…まあ、局所放電が当たりさえすればいいか。」


俺は、ボスの後ろから、局所放電を最大で放つ。


その瞬間俺は、地面に転がっていた。

「え?痛い…。」


局所放電を放った左手が変な方向に曲がっている。

俺は、回復の魔法も忘れ、呆然としてしまう。

ゆっくりこちらに向かってくるゴブリンの上位種。

ゴブリンの上位種は、俺の目の前で、棍棒を振りかざし、俺の頭目掛けて振り下ろした。


俺は、頭に強い衝撃を受け、倒れ込む。

体が自由に動かない。

思考も止まる。

粒子になっていく体。

そうして、粒子は吠えるゴブリンの上位種に吸収されていった。


深い眠りが俺を待っていた。

眠りの中で、俺は窮屈な箱に閉じ込められていた。

俺は、箱から手足を出そうともがく。

どんどん窮屈になる箱。

諦めて、深呼吸。

まずい空気を体に取り込みつつ、時々暴れ出す何かを抑え込む。


そうして、窮屈さがなくなったなあと思って、目を開ける。

俺は、誰もいない夕焼けの交差点の真ん中に立っていた。


【16階層のボスの魂の消滅を確認しました。】


俺の横に階段が現れた。

体は何ともない。

一応ステータスを確認する。



ミナト・カガ

魔法盾士(適正:雷、回復)

LV37

スキルポイント1


最大攻撃力 3→6 (+2)

基礎攻撃力 1→3

耐久力 4→5 (+1)

体力 2→5

魔力 2

精神力 1→4

知力 10

魅力 0→3

運 0→6 (+2)


習得技

・大防御LV3

・オーラ外殻LV1

…体力を2消費して、オーラ外殻を作る。LVに応じて、オーラ外殻の強さは変わる。LV1では、耐久力0.1くらい。

・重撃LV3

…吸収したホブゴブリンの技。体力を消費して、通常攻撃を強化する。


習得魔法

・局所放電LV6

・電撃LV1

…手のひらから、電撃を放つ。強い光に加え、熱によるダメージと痺れを与える。射程は2mくらい。威力は、同LVの局所放電の10倍。1回の消費魔力は、10。

・微弱回復LV2

・弱回復LV1

…微弱回復の10倍回復する。深い傷が1回で治る位の威力。1回の消費魔力は10。

・麻痺回復LV1


習得スキル

・弱所の見極めLV4

…吸収したホブゴブリンのスキル。何となく、攻撃のタイミングや、するべき攻撃がわかるようになる。


装備

武器:怨嗟棍棒…最大攻撃力+2

防具:ダンジョン小イノシシのジャージ…耐久力+1

その他1:スライムの首飾り…運+1

その他2:スライムの首飾り…運+1



レベルも上がっているし、増えた技を見るに、俺を吸収しようとしたホブゴブリンを逆に吸収したようだ。


ステータスが軒並み上がった今なら、ある程度、戦えるかも。

ちなみに余っていたLV30時の、ステータスポイント+1は、魔力に振った。


17階層に進む。

階段を降りると、そこは真っ白い空間だった。

目の前には、天使を模したようないびつな機械的なものがいる。

3mくらいのそいつは、俺に近づいてくるなり、口からレーザーを放った。俺は、まともに食らってしまう。

焼けただれる肌。

ダンジョン小イノシシのジャージがパリンと服らしからぬ音で、割れる。

多分、もう装備として成り立たないだろう。


俺は、弱所の見極めを使う。

どうやら、天使人形は、首と羽が弱いようだ。

知能も低い。

飛ぶスピードも速いとは言えない。

レーザーもバンバン撃てる物ではないようだ。


距離をたもちながら微弱回復を使う。

3回、回復して、やっと動きに余裕が出てくるくらいまでになる。

それでもまだ、完全ではない。


「はあ、なんでこんなきついことしなきゃいけないんだ?俺はただの一般人だぞ。」


天使人形の近くに張り付き、大防御を使う。

ともかく蹴る。

蹴って、蹴って蹴りまくる。

レーザーは避けられないので、大防御でガード。

羽をつかんで、むしると、あばれ出した。

俺はそれを弱所の見極めでかわしつつ、攻撃していく。


また、レーザー。

弱々しくなったレーザー。

それを受けた俺は、頭に蹴りを入れる。

ついでに羽を攻撃。

さらに2枚むしると、浮くことも出来なくなったようで、天使人形は、落ちて転んだ。


さらに頭を攻撃すると、天使人形は光の粒子になった。


俺は、座り込む。

「これは…ダメだ。俺は、しがない会社員だったんだぞ。こんな無茶苦茶な所クリアなんてハードル高すぎだ。」


真っ白い空間に現れた18階層への階段を見て、次の戦いを思い、苛立つ。


俺は、とりあえず16階層に戻って自分の部屋っぽい場所で寝ることにした。

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