ダンジョンに潜る日常
朝、ダンジョンを横目に出勤の準備をする。
いつも通り、自転車で30分の職場へ。
「おはようございます。」
「おはよう。加賀君は来てくれたか。」
「どういう意味です?」
「いや、今日、小林君も、千堂さんも休みなんだよ。」
「それはまた…。」
「加賀君は、興味なかったの?ダンジョン。」
「えっ!まさか、二人って、ダンジョンで休んだんですか?」
「ダンジョン潜るので、有給使いますって。」
「…そういうことですか。」
そんなわけで、定時まで、仕事を頑張る。
世間では、ダンジョン配信やら、攻略サイトやらで盛り上がっていたようだ。
LV10と、10階層クリアでも報酬が出るということもわかった。
LV10で、職業というのが選べるようになるらしい。
10階層クリアでは、ステータスポイント+1が得られるとのことだ。
また、10階層の次の階層は、ダンジョン村という休憩地点で、中世の西洋風の街が広がっているらしい。
残念ながら、NPCはいないそうだ。
街についても調べたい。
近くの牛丼屋で、夕飯を買う。
サラダに牛丼並。
今日は、そういう気分だ。
とりあえず、シャワーを浴びて、洗濯をする。
「ダンジョンから息子が戻らないんです!」
「ダンジョンには、どんな危険があるかわからない。スマホの電波も通じないのだから、遭難したら大変だ。」
「11階層まで、進んだ自衛隊の若凪さんに話を聞きます。」
テレビのチャンネルを回すとダンジョン特集ばかりだ。
「11階層では、小さい家が与えられるんです。」
「家?」
「はい。6畳くらいの。本当に何もない2階もベッドも台所もない家です。」
「それは、家なんですか?」
「家であることに間違いはありません。外に出ると屋根もあり、窓も扉も塀なんかもありますから。」
「11階層で、家が手に入るのか。」
俺は、他人事のように横目で番組を見ながら、夕飯を食べる。
「明日ダンジョンにもぐるか。」
次の日。
ジャージに、運動靴。
リュックに水や食料を詰め込み、近くのスポーツショップで買ったバッドを持ち、本格的にダンジョンに挑む。
1階層にはモンスターはいない。
チュートリアル以来のこの不思議な壁も最初に比べて、慣れてきたようだ。
まっすぐ50mくらいで現れた階段をさらに降りる。
2階層には、かわいい小さないのししがいた。
「ウリボーって言うんだっけ?」
俺は、不用心にウリボーに近づく。
ウリボーが急に突進してきた。
俺は、バットで応戦する間もなく、転んでしまう。
転がっていくバット。
「うわ!小さくてもモンスターだ!」
俺は、両手でウリボーを抱えあげる。
暴れるウリボーにペシッと攻撃を当てる。
ウリボーは粒子に変わった。
「足、痛いしもう帰るか…。」
ウリボーの後には、小いのししの毛皮というアイテムを残した。
小さいいのししの毛皮。
子いのししではなく、小いのしし。
ダンジョン生まれの小さいいのしし種。
部屋に戻っても、まだ足は痛い。
時間にして、まだ、30分しか経っていないのに、この有り様。
俺、ダンジョン向いてないかも。
ふて寝した。
お昼に起きる。
動画投稿サイトで、3階層の敵について、調べる。
どうやら大きいちょうちょのようだった。
ひらひらと攻撃をかわされるようだ。
攻撃力は大したことはない。
りんぷんに毒があるとかでもない。
…これなら、俺でもいけるか?
そして、結局3階層へいる俺。
大きいちょうちょ2体。
バットを振り回して倒す。
ドロップ品は、迷宮蝶種の下級りんぷんというものだった。
食べられません。
摂取するとしびれや幻覚などの状態異常を引き起こします。
今日は、ここまでにしよう。
レベルは4になっていた。
ステータスに変化はない。
報酬もなかった。
さて、シャワーを浴び終えた俺は、ネットを開く。
考察によると、ウリボーや大きいちょうちょはスキルを使っているらしいのだそうだ。
ウリボーは、突進中無敵状態になるスキル、ちょうちょは攻撃を確率で、避けるスキル。
「4階層は、そこらへんも確認しておくか…。」
自然と4階層を目指している自分に、気づき、なんだか小さなわくわくを感じた。
4階層大ネズミ。
スキルは、噛みつき強化?
スピードは、高校の授業で、サッカーやっていたら、対応できるレベル。
とにかく、噛みつかれるとやばい。
骨まで、砕かれる怪我でもう二度とダンジョンに潜らないと決めた者も多いそうだ。
ダンジョン遭難者や、死傷者は、出てきている。
政府も規制しようにも、注意喚起するくらいしか出来ず、困っているらしい。
俺も火に飛び込む虫のように危険だろうと、ダンジョンに挑戦してしまっている。
若い子なんかだと好奇心に惹かれ、もっとダンジョンにはまっていくだろう。
大ネズミをなんとか怪我なく、倒す。
向こうが、噛みつく瞬間には、止まらなくてはならないし、注意して戦えば問題ない相手だった。
LV5に上がる。
明日でLV10を目指そう。
帰ってゆっくりネットとにらめっこする。
5階層は、ゴブリン。
6階層は、大カエル。
7階層は、格闘きのこ。
8階層は、陸タコ。
9階層は、小オーク。
情報によれば、ゴブリンは、リーチが短いので、体格差で戦えば勝てるらしい。
大カエルは、跳ねての攻撃を避けると、隙が生じるので、そこを狙う。
格闘きのこは、頭を振って攻撃してくるが、疲れるまで、待てば一方的に倒せる。
陸タコは、回復力が高く、巻き付かれると厄介なので、物干し竿のような長物で戦うと良い。
小オークは、結構強いので、泥仕合を覚悟しておく。
陸タコと小オークは、きつそうな気もするが、頑張ろう。
次の日の朝、5階層に向かい、ゴブリンと対峙する。
ゴブリンは、俺の半分くらいの身長で、まっすぐ走ってくる。
武器は持っていない。
俺は、まず、ゴブリンを蹴り飛ばす。
ゴブリンは、ガードするも体勢を崩し、尻もちをつく。
俺は、さらに、蹴りを入れる。
ゴブリンは、転がり立ち上がる。
逃げるという選択肢はないようで、こっちに向かって来るゴブリン。
俺は、もう一度蹴りを入れるとゴブリンは粒子になった。
LV6 にUP。
回収品、ゴブリンの小角。
6階層。
50cmくらいのカエル。
普通のカエルに比べれば、大きい。
ウミガメくらいの大きさ。
これくらいならと思ってしまう。
ノーモーションで跳ねてくるカエル。
俺は、驚いて、大げさに避ける。
カエルも俺の避け方に、逆に驚いたようだった。
お互い、おっかなびっくりで、再び対峙。
警戒するカエル。
当初の作戦の、飛び跳ね後の隙を狙うことは厳しいか?
ちょっとずつ距離を詰める。
カエルは後ずさる。
このやり取りだけでも、カエルにある程度、知能があるのはわかる。
一度、隙をつくのに失敗しているのだから、これは、本当に隙をつくのは無理そうだ。
逃げることはできるかもしれないが、このカエル相手に、背を向けるのは少し怖い気もする。
覚悟を決める。
俺は、カエルに走って近づく。
カエルは、不十分ではあったが、足にタメを作って飛び込んできた。
俺は、それを全力で受け止める。
ミシリと肋骨が軋む。
跳ね飛ばされないように勢いを殺し、なんとかカエルを横に投げる。
カエルは、ダンジョンの壁に当たり、もがく。
そこに蹴りを入れる。
カエルは、粒子になった。
LV7にUP。
回収品、大カエルの粘液。
第7階層。
格闘きのこは、しっかり、攻略情報を元に、暴れる格闘きのこを躱すこと3分くらい。
動きが鈍ったところを蹴って、倒れて起き上がれないきのこをもう一度蹴り倒した。
LV8にUP。
回収品、格闘きのこの胞子。
午後。
一度、準備と食事を済ませ、再びダンジョンへ。
第8階層の陸タコは、俺の半分くらいの大きさのタコ。
結構大きい。
俺は、準備してきた物干し竿で、突く。
タコにはあまり効いていないようにも感じる。
ただ、近寄られるのは、危険なことはわかるので、ひたすら、突いていく。
10分?
15分?
結構な時間一方的につついてようやくタコは粒子になった。
LV9にUP。
回収品、陸タコエキス。
ようやっとの第9階層。
俺は、階段を緊張して降りる。
俺と同じくらいの背丈のオークがいた。
オークと言っても、ただの太った豚という感じではない。
豚と普通の人を合わせたような感じだ。
オークは、俺を見るなり突っ込んできた。
俺は、ばくばくと脈打つ心臓で、まっすぐオークに向かう。
オークは肩で体当たりをしてきた。
体重は向こうの方が重そう。
俺は、オークより重心を下げ、こっちも肩で、体当たりする。
オークと俺がぶつかる。
地面に前のめりに突っ込む。
痛い。
肩あたりがかなり痛い。
それでも、とりあえず、立ち上がる。
オークは横に転がっていた。
とりあえず、蹴りを入れる。
いたがるオーク。
倒れているオークをさらに追撃。
オークはなんとか体を守る。
俺は、攻撃の手を緩めない。
オークがこっちをしっかりと見ているのに気づいたからだ。
俺は、疲れてくる。
全力で、戦っているのだ。
体力だってそれなりに消費する。
オークが俺の足を掴む。
そして、ひっくり返そうとしてくる。
俺は、無我夢中で、オークを蹴る。
しばらくして、オークは粒子になった。
俺は座り込む。
かなり精神的にもきつかった…。
【LV10に上がりました。職業を選択出来ます。】




