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女装してお嬢様学校に潜入している使用人が、仕えているお嬢様に正体を知られて籠絡される話

作者: 墨江夢

 私立花園学園(はなぞのがくえん)

 この学園は名家のご令嬢ばかりが通う、お嬢様学校だ。


 広大な敷地面積を誇り、敷地内には校舎や体育館だけでなく教会や映画館やブランドの専門店なんかも併設されている。


 挨拶は決まって「ご機嫌よう」。登下校がリムジンなのは当たり前。庶民からしたら、この学園はさながら異世界のようなものだった。


 そんな花園学園には、一人だけ男子生徒が在籍している。

 柏原有希(かしわばらゆうき)。彼は三か月ほど前にこの学園に転入し、以降一日たりとも欠席することなく通い続けている。


 有希が花園学園に転入した理由は、何も高水準なこの学園の授業に魅力を感じたからではない。勿論、一人だけ男というこの状況下を満喫し、ハーレムを築こうとしているわけでもない。

 有希はとある目的があって、花園学園に転入したのだ。


 昼休み。有希は一人中庭のベンチに座って、スマートフォンをいじっていた。

 ベンチは二人掛けだが、空いている席には有希のお弁当箱が置かれている為、実質満席。

 弁当を食べ始めることもなく、かといって弁当箱をどかすこともなく。有希がこのような自己中心的行為をわざと行なっているのは、特定の人物以外この席に座らせない為だった。


(対象Aは、未だ現れず。いつもなら、そろそろやって来る頃合いなんだけどな)


 顔をスマホに向けたまま、有希は視線を泳がせる。

 ソシャゲをやっている風を装っているが、実際はオートプレイ。有希の意識は、スマホ以外の場所にある。

 有希はここで、ある女子生徒が来るのを待っているのだ。


 暫くすると、お目当ての女子生徒が弁当箱を持って有希の前に現れる。

 予想より少し遅い到着だったが、こうして会えた以上、多少の時間差などどうでも良かった。


(ターゲット、確認。接触を試みる)


 彼は立ち上がると、()()()()()()()()()()()()、女子生徒に挨拶をした。


「前原さん、ご機嫌よう。本日も良いお天気ですね」

「ご機嫌よう、柏原さん。本当に、心地良い木漏れ日ですね」


 女子生徒――前原凛(まえはらりん)も有希に倣って、挨拶をする。花園学園では、一日に何度も目にする光景だ。


「私に何か用事ですか? もしかして、先生が呼んでいたとか?」

「いいえ。柏原さんではなく、そのベンチに用があるのですが……」

「このベンチに?」

「はい。実は私、お昼をそのベンチで食べることを日課としていまして。その、嫌じゃなければ……隣、良いかしら?」


 計画していた展開に、有希は内心ほくそ笑む。

 有希は凛と接触する為に、このベンチでスマホをいじっていたのだ。断るつもりなど微塵もなかった。


「どうぞ。私も前原さんとは、是非お話ししてみたいと思っていたの」

「本当ですか! 噂の転校生の柏原さんにそう言って貰えて、光栄です!」


 有希が弁当箱をどけると、凛が空いた席に座る。

 有希との会話が楽しみで仕方ないのだろう。気持ちが昂ぶっている凛は気付かなかったが、有希は彼女の動作ひとつひとつに注意を払っていた。


「前原さんも、お弁当なんですね」

「えぇ。花園学園の生徒は、大体皆さんお抱えのシェフが作ったお弁当を持参しますわ。栄養のバランスも取れていますし、何より自分の好みに合っていますし。柏原さんも、そうではなくて?」

「えっ、えぇ。まぁ」


 愛想笑いして誤魔化すが、実のところ有希は弁当を自分で作っていた。

 使われている食材はスーパーの特売品ばかりで、かかった費用は凛の弁当の10分の1にも満たなかった。


「ん〜、美味しいです」


 凛が弁当に舌鼓を打つ。その隙を突いて、有希は凛の足下から一枚の手紙を拾うフリをした(実際に拾ったわけじゃない。有希は初めから手紙を隠し持っていた)。


「あら。こんなところに、手紙が落ちていますよ。前原さんのではなくて?」

「えっ? そんな手紙、私は知りませんよ?」

「そうですか。でしたら私たちが来る前から、ベンチの下に落ちていたということになりますね。……持ち主が探しているかもしれませんし、後で職員室に預けておきます」


 そう言うと、有希は中身を見られない内に手紙を自身の懐にしまった。

 

 手紙のやり取りが終わると、凛に対する有希の態度は一変する。

 笑顔には余裕が生まれ、凛の動作を注視しなくなった。つまり、彼女への警戒心を解いたのだ。


 予鈴が鳴り、凛と別れた有希は、ひと気のない校舎裏に行くと電話をかけ始める。

 電話の相手は、三コールと待たずに応答した。


『私よ。何か進展があったの?』

「はい、奥様。一つ報告があります」


 有希は口調も声色も本来の自分のものに戻す。電話の相手は自分を花園学園に送り込んだ張本人であり、故に有希が男であることも当然知っていた。


「奥様が疑っていた前原凛ですが、彼女はシロです。ストーカーではありません」

『それは確かなのかしら?』

「はい。前原凛は、手紙に心当たりがないようでしたから」


 言いながら、有希は手紙を開く。手紙には……何も書かれていなかった。


「お嬢様宛に気持ち悪いラブレターを毎日送ってくるようなストーカーです。もしそんな奴が「手紙を落とした」と指摘されれば、少なからず動揺する筈。ですが前原凛には、一切動揺が見られなかった」


 凛は有希の用意した偽の手紙を見ても、眉ひとつ動かさなかった。それこそが彼女がストーカーでない、何よりの証明だ。


『確かに……ストーカーならば、手紙に対してなんらかの反応を見せる筈よね』

「はい。ですので前原凛は、ストーカー候補から外して良いかと」

『了解よ。……引き続きストーカー探しを頼んだわ。期待している』


 電話は一方的に切られる。

 電話の相手が忙しい人物だということはわかっているので、有希はこの失礼な対応にもあまり不快感を抱かなった。


 有希の懸念材料は、電話のぶち切りとは別のところにある。


「引き続き頼むって……一体いつまでこんなことさせられるんだよ?」


 有希は窓ガラスを見る。そこに映るのは、長髪のウィッグを被り女子用の学生服に身を包んだ自身の姿。

 仕事じゃなかったらこんな格好したくないし、たとえ仕事でもこんな格好知り合いに見られたくなかった。


「ハァ。三ヶ月前までに戻りたい」


 有希は女装してまで、花園学園に通うことになったきっかけを思い出しながら、盛大にため息を吐いた。



 


 有希はただの女装趣味の男子高校生ではない。彼は宝泉(ほうせん)家という財閥に仕える使用人だった。


 早くに両親を失い、天涯孤独の身になった有希は、10歳の時に宝泉家の女主人・宝泉亜紀子(あきこ)に拾われる。

 亜紀子が直々に使用人としてのいろはを叩き込んだ為、有希の技術は超一流だ。加えて拾って貰ったことへの恩義を強く感じているので、忠誠心も厚い。

 有希は今では、亜紀子に最も信頼される使用人となっていた。


 有希は義務教育を終えると、高校には進学せずにほとんど毎日宝泉家に尽くしていた。

 一見すると過酷すぎる労働環境だが、宝泉家に仕えることを何よりの愉悦としている有希にとっては、なんら苦ではない。

 あまりに働きすぎる為、亜紀子から「休め」と叱られるくらいである。


 そんな有希の日常が一変したのは、三ヶ月前。彼は「大切な話がある」と言われ、亜紀子に呼び出されていた。


「ねぇ、有希。あなた、高校に通ってみる気はない?」

「いえ。まったくないです」


 一生宝泉家に尽くすと決めている有希は、中学時代から「高校に通いたい」という気持ちは微塵もなかった。

 成績も良かったし、当時の担任からは「本当に良いのか? 後で後悔しないか?」としつこいくらいに進学を勧められたが、「使用人の仕事がしたいので無理です」と言って断り続けた。

 だから今回も亜紀子の提案を、即座に拒絶したのだが……


「まぁ、そう言わないの。話くらい聞いてくれても良いじゃない。……まずはこれを見てちょうだい」


 亜紀子から渡されたのは、一枚の紙切れだった。

 有希は紙切れを受け取る。紙切れには、『いつも君を見守っているよ』と書かれていた。


「何ですか、これは?」

「娘宛てのラブレターよ。今年の春から、毎日届いているわ」

「毎日って……最早ストーカーじゃないですか。お嬢様に付き纏うなんて、許せませんね」

「有希もそう思う?」

「えぇ。ストーカーは死ねば良いと思います」

「私も同感よ。ただ殺すのはマズいから、警察に突き出してやろうと思っている」

「それが妥当でしょうね。……で、このストーカーの話は、俺の高校編入の話とどう関係しているんです?」

「どうやらこのストーカーは、花園学園内にいるみたいでね。有希には学園に潜入し、娘の護衛並びにストーカーの特定に努めてもらいたいのよ」

「……そういうことでしたか」


 使用人の中で、高校生として潜入出来る年齢の者は数人しかいない。その中でも亜紀子の信頼が厚く、花園学園の難解な編入試験を突破出来る使用人となれば、有希くらいしかいなかった。


 単に高校に通えという命令だったら、有希は謹んで辞退するつもりだった。宝泉家に尽くす時間を自身の勉学如きの為に浪費するなんて、耐えられなかったからだ。

 しかしそのような背景があるのなら、話は別だ。

 お嬢様をストーカーから守ることこそ、有希が花園学園に通う目的であり、それは宝泉家への尽くしに当たる。勉強なんて、片手間で良い。


「わかりました。お望みとあれば、明日からでも花園学園に編入しましょう」

「引き受けてくれて何よりだわ。有希ほどこの任務に適任な者はいないもの。……必要な物はこちらで準備するわ。まずは制服よね」


 亜紀子が指を鳴らすと、メイドが室内に入ってくる。

 メイドは持っていた紙袋を有希に渡した。


「有希さん、どうぞ」

「ありがとうございます。……って、ん?」


 紙袋を覗いた有希は、中に入っている制服を見て首を傾げる。

 まさかなと思い制服を出して、広げてみると……それはスラックスではなく、スカートだった。


「奥様、制服を間違えていますよ。これは男子用ではなく、女子用です」

「いいえ、間違っていないわよ。そもそも男子用の制服なんてものは存在しない。なぜなら――花園学園は、女子校なんだから」





 有希に課せられた使命は、花園学園に潜むストーカーを見つけること。ストーカーを見つけるまで、有希は花園学園に通い続けなければならない。

 それは言い換えるならば、ストーカーを見つけるまでスカートを脱ぐことが出来ないということで。

 早く元の執事姿に戻りたい有希は、授業そっちのけでストーカー探しに没頭していた。


 自席に座りながらも教師の話に耳を傾けずに、有希は秘密のメモ帳と睨めっこしている。

 メモ帳にはこれまで有希と宝泉家が調べ上げた情報と、ストーカー候補の名前が羅列されていた。


(前原凛は、ストーカーじゃない。これでこの学年の容疑者は、全員シロだと判明したな)


 有希はメモ帳に書かれた「前原凛」という名前に、二重線を引く。


(そうなると、あとは他学年の生徒か……。ラブレターが送られ始めたのは四月に入ってからのことだし、丁度一年生が入学した時期と重なるな)


 花園学園に入学した一年生が、偶然目にした麗しい先輩に心を奪われ、ストーカー行為に及び始めたという可能性も、大いに考えられる。

 次は一年生を調査するとしよう。有希は一年生のストーカー候補に関する情報を改めて見直した。


 何十人もいるストーカー候補の情報を全て頭に叩き込むには、かなりの時間を要する。

 有希は午後の授業時間を費やして、なんとか全ての情報を脳にインプットした。


 放課後、早速一年生の教室に乗り込もうとした有希だったが、突然呼び止められる。


「柏原さん、少し良いですの?」


 今急いているんだよと思いながらも、振り返る有希。そして声をかけてきた相手を見て、心底驚く。

 有希を呼び止めたのは……彼の仕える宝泉家の一人娘・宝泉優奈(ゆうな)だった。


(おっ、お嬢様!?)


 驚きのあまり声が出てしまいそうなところを、有希はグッと堪える。

 優奈は有希が女装して花園学園に通っていることを知らない。知られてはならない。

 有希はあくまでクラスメイトと会話するように、優奈に応えた。


「どうしましたか、宝泉さん? 私、これから用事があるんですけど……」

「お忙しいのは重々承知ですわ。その上で、少しだけお時間を下さらないかとお願いしているのです」

「まぁ、少しだけなら構いませんよ」

「感謝しますわ。そうしましたら、どこか人のいない場所へ移動しましょう」

「移動って……ここじゃダメなんですか?」

「教室では、あまりに人が多すぎます。これからする話を誰かに聞かれて困るのは、柏原さんの方ですわよ?」


 つまり優奈は有希を気遣って、教室から移動しようと提案したわけだ。


 異性にひと気のないところに呼び出されたとなれば、普通なら告白的なイベントを想像するが……今の有希は女の子なので、優奈がそういう趣味でない限り告白はあり得ない。

 それに優奈の提案を考慮すれば、話とは有希にとって不都合な内容だと考えるべきだろう。


 もしかして、授業を聞いていなかったのがバレたかな? そんな予想を立てながら、有希は優奈と共に教室から移動するのだった。





 有希と優奈がやって来たのは、学食のトイレだった。


 昼休みならいざ知らず、放課後学食に立ち寄る生徒は少ない。ほとんどの生徒が部活や委員会に行くか下校するかだ。

 その学食のトイレともなれば、まず人は来ない。


「それで、話とは何ですか? わざわざトイレに来てまでする程重要なものなんですよね?」

「はい、そうですわ。……忙しいと言っていましたので、単刀直入に聞きますわね。柏原有希さん。あなた……男ですわよね?」

「!」


 予想もしていなかった指摘を受けて、有希は不覚にも一瞬言葉に詰まってしまった。

 しかしここで動揺を見せれば、優奈に正体がバレてしまう。

 有希は1秒足らずで、落ち着きを取り戻した。


「……何のことでしょう?」

「しらばっくれても無駄ですわよ。証拠もあるんですから」


 そう言って、優奈はスマホの画面を見せる。スマホの画面には……有希が制服から体操着に着替えている写真が表示されていた。


 写真の中の有希は、ボクサーパンツを穿いている。

 上半身は鍛え上げられた肉体こそあるが、胸部に女の子特有の膨らみはない。

 この写真は紛れもなく、有希が男であることを物語っていた。


(しまった! まさかお嬢様に、こんな写真を撮られていたなんて!)


 一番知られてはならない秘密を、一番知られてはならない人物に知られてしまった。

 これは間違いなく、有希の失態だ。


 優奈は有希が男である前提で、話を続ける。


「はじめは偶然名前が同じなのだと思っていましたが、やっぱりあなたは宝泉家に仕える柏原有希なのですわね」

「やっぱりって……もしかして、着替えを目撃する前から勘付いていたんですか?」

「えぇ、まあ。醸し出す雰囲気が、どことなく似ていましたので。あと、匂いとか」

「匂い? 俺ってそんなに臭いですかね?」

「そんなことはないですわ。どちらかと言うと、落ち着く匂いというか……コホンコホン。何でもありませんわ」


 うっかり要らんことを口にしかけた優奈は、咳払いをして誤魔化した。

 それでも頬の紅潮を隠すことは出来ないのだが、その手のことに鈍い有希はまるで気が付かなかった。


「有希さんが花園学園にいる理由なら、大体わかりますわ。ストーカーから私を守るようにと、お母様に命令されたのでしょう?」

「あとついでに、ストーカー探しも命じられています」


 優奈の推理が的を射ていた為、もう観念したのか、有希は全てを白状することにした。


「命令とはいえ、女装して女子校に潜入することになるなんて、災難ですわね」

「宝泉家とお嬢様の為ですから。でも、それももう終わりです」

「終わり? どういうことですの?」

「お嬢様に俺の正体が見破られました。その時点で、俺の任務は終了なんです」


 亜紀子からの命令には、一つ条件があった。それはストーカーを探す為に有希が潜入しているのを、優奈に知られないことだった。

 優奈に無用な心配をかけない為の措置であり、それ故有希は積極的に彼女と関わろうとせず、接触を控えていた。


「お嬢様の護衛には、別の者が派遣されるでしょう。とはいえ俺もお嬢様が心配ですし、引き続きストーカーの調査を続けていくつもりです」

「……そうはさせませんわ!」


 何を思ったのか、優奈は有希が着替えているの写真を突然消去した。それも『最近削除した画像』からも消去したので、修復不可能だ。


「お嬢様、何を!?」

「これで有希さんが男である証拠は、なくなりましたわ」

「いや。たとえ証拠がなくなったとしても、お嬢様が俺の存在を知っていたら意味ないでしょ?」

「いいえ。私は柏原有希という使用人が女装して花園学園に通っていることなんて、知りませんわ。今私の目の前にいるのは、柏原有希というクラスメイトの女の子です」


 どうやら優奈は、有希のことを見逃すつもりらしい。

 しかし先程は有希の正体を問い詰めるような真似をしたのに、どうして今になって彼を擁護する気になったのか? 有希には皆目見当もつかなかった。


 だから有希は、どうして心変わりしたのかを優奈に尋ねる。すると優奈は、


「そんなの……これからも花園学園に居てもらいたいからに、決まってますわ」


「当たり前のことを、言わせないで欲しいですわ!」。優奈はプイッと、拗ねるようにそっぽを向く。


「あなたは私に正体を知られていない。だからあなたは、これからも花園学園に通うのです。そしてこれからもずっと、私のそばに居続けるのです」

「わかりました――優奈様」


 有希が優奈の言葉を100パーセント理解したのかは、わからない。しかし有希はずっと優奈のそばにいると約束してくれた。

 あとはまぁ、「お嬢様」ではなく「優奈様」と名前で呼んでくれたのだから、それだけで優奈は満足だった。





 有希を先に帰らせた優奈は、彼が食堂を出るのを待ってから、その場にしゃがみ込んだ。


(ひゃああああ! どっ、どうしましょう! ゆっ、有希とお喋りしちゃいましたわ!)


 優奈は耳まで真っ赤になっており、また心臓の鼓動はかつてないほど速くなっている。

 だけどそれは、仕方のないことなのだ。好きな人と二人きりで話をするなんて、箱入りお嬢様の優奈にはハードルが高すぎる。


 優奈は結構わかりやすいタイプだ。有希のような朴念仁が相手でなければ、とっくの昔に想いが伝わっているだろう。


(有希は、当然明日も学校に来ますわよね? 折角ですし友達という口実を使って、お昼にでも誘ってみましょうか)


 二人で登下校したり、お弁当を食べたり、本当はいけないけれど授業をサボったり。優奈には、有希と一緒にしたいことが山ほどある。

 それもこれも、有希が女装までして花園学園に通っているから実現可能なわけであって。

 こうして有希と秘密を共有し、一緒に学園生活を送れるのだから、ストーカーにも少しは感謝なのかもしれない。

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