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後編

──神田春男には繰り返し見る夢がある


『父ちゃん!俺にも持たせてよ!そのかんな!』


『はっ!バッキャロォ!ガキにはまだ10年はええ!』



神田春男の父親は腕のいい大工であった。

型破りな彼の父親は時おり春男を見学と称して職場に連れてくることがあった。

棟梁として慕われ、大工たちに差配し鮮やかな手並みで木材を捌く父親を幼年時代の彼は憧憬の眼差しで見ていた。

そしてその背を追いながらいつかそうなりたいと願っていた。

乱暴なところはあったが基本的に素直な幼年期を過ごした春男を変えたのはその父親にまつわるとある事件がきっかけであった──



神田がソファーの上で目覚めると周りには明らかにカタギではないガラの悪い男たちが血を流し気絶し、またはうめき声をあげて倒れていた。

神田は身を起こし伸びと欠伸をすると誰ともなく呟いた。


「……ふあーあ

お前らがあんまり弱いから寝ちまったじゃねえか」


ここはとある半グレ組織の事務所。

このそこそこの広さの事務所は数分前に神田という災害に遭い壊滅の憂き目を見たところであった。

神田はソファーから立ち上がると倒れている男の中から比較的元気そうな者を選ぶと軽く小突き意識を覚醒させる。


「おい、起きろよおっさん」


神田に起こされた男は恐怖に顔を歪めながら床に倒れこんだまま後ずさりする。


「うっ……!

ぐう、もう勘弁してくれえ……」


神田は冷たい目で男を見つめ口を開く。


「それ、何度お前はその耳で聞いてきたんだ?

それは今までお前らの捌いてきた白い粉に苦しめられてる奴らに言うんだな」


「……うう

俺たちをどうする気だ……?」


神田は男の質問を尻目に当たりをつけた戸棚から小さな袋を取り出した。


「……あー

俺もあんま頭よくねえからよお

よく考えてないんだが……

とりあえずこの白い粉を目立つところに置いて、と。

これで公衆電話から通報すればいいかな?」


その小袋を見ると男の顔が青ざめやがて激昂する。


「……くっやめろ!クソガキィ!

お前も後ろに手が回るぞ!」


男の脅しに動ずることなく神田は馬鹿にするような笑みを返しくくく、と嗤った。


「その時はその時だな。

俺には特に失うものなんてねえ。

それに天下の半グレ組織阿瑠斗あると組が高校生1人に壊滅させられたとかサツが信じるかな?

ラリってたとでも判断されるんじゃねえのお?お前ら」


「……くっそガキめ」


男は神田の態度に諦めたように疲労と痛みのために気を失った。


「じゃあな、おっさん。

これに懲りたらもう2度とヤクなんて扱うんじゃねえぞ

……っていうか次こんな形で会ったら殺すぞ?」


神田は意識の薄れゆく男に向かって脅しをかけるとやがてその事務所を後にした。















夏の光が青々とした芝に照り返り一面に広がる青芝を一瞬の静けさが支配したかと思うと低い音が空を裂き炸裂音と共に小さな白球が虚空を裂いて走った。

一拍おいたのちに抑揚のない男の声が静寂を終わらせた。


「ナイスショットですね袴田室長」


今ボールを打ち終え袴田と呼ばれたゴルフウェアの年配の男はクラブ片手に声の方を見返す。


「そういう君は下手だねえ、松井くん」


松井と呼ばれ白い帽子とゴルフウェアをパリッと着込んだ黒縁の眼鏡の男が作ったような微笑みで眼鏡の縁をくいっと引き上げた。


「お恥ずかしい。ゴルフは初めてなもので」


袴田はその答えに機嫌よく素振りを一つ見せる。


「……ふふふ

少しレクチャーしてやるよ。

君にはいろいろと有力な商品・・を売って貰ってるからね。

そろそろこちらからも何か売ってやらないといかんな」


眼鏡の男にとって袴田は大事な取り引き相手でありこのゴルフ接待も商談の一環であった。

やがて眼鏡男は慇懃に、そして直角の理想的なお辞儀を袴田へと披露する。


「ありがとうございます。室長」


夏の光が眼鏡のつるに反射し鋭く光ると近くに止まっていたカラスの眼を差したのかがあ、とひと鳴きするとバサバサと飛び去っていった。












もう8月も半分を過ぎた。

大半の学生たちは勉学に勤しみ恋愛やレジャーに勤しむ。

犬鳴高校情報部の田中と清水は夏休みにも関わらずほぼ毎日のように部室に集いPCやハッキングによって神田の動向を追っていた。

10数日前のベイブリッジの騒動はネット界隈を賑わせ虚実が入り混じった情報が飛び交っている。

責任を少なからず感じていた田中と清水は見て見ぬふりもできず、かといって神田との連絡手段もなく取れたとしても彼を止める手段などない。

彼らは8月当初は自責と怖いもの見たさからこうしてネットでも狂犬と呼ばれ始めた神田の動向を追う。


「……えーと現在の神田くんの位置情報は」


田中と清水は神田のスマボを弄らせてもらった際に自分たちのPCから位置情報だけは分かるように調整してあった。

……せめてもの抵抗と好奇心からである


「青森あたり……かな

もう列島の端まできちゃったよ」


宣言どおり徐々に北上している。

数日前アップされたベイブリッジ抗争の動画はすでに消されているが都市伝説のように噂がどんどん大きくなっているのも事実である。

ほとんどの人間が悪戯動画と見做しているが田中と清水はあの動画が本物であると確信していた。


「今までの被害件数は……?」


「確認できるだけで86件……ってところかな

1番派手だったのがベイブリッジのヤツ」


PCのモニターを見つめながら田中は清水の問いに答える。

それにしても不気味なほどこの事件はメディアで取り上げられない。

しかし確かに神田という男が暴れていることを自分たちだけは知っている。


「……警察なにやってんだろ、いや親が警察だけど」


考えてもわからない田中はモニターから目を離しため息を吐く。

清水はPCのモニターに日本地図を写し書き込んでいた神田の移動情報を最新のものへと更新する。


「それにしてもほんと気の毒にね、神田くんに遭う人たち」


ふと田中は神田という災害に遭い痛い目にあった者たちへと思考を向ける。

清水も複雑な表情を作りPCの地図に事件のあったと思しき場所を赤い点でマークする。


「半分くらい僕たちのせいでもあるよね」


2人の心境を言い表すと……

良心の呵責が半分。残りの半分は好奇心。

不謹慎だが2人は「楽しんでいる」という側面もあった。


「……まあ自業自得だし、野山から下りてきた熊に遭ったと思って諦めてもらおう」


心に折り合いをつけると2人は再び神田の動向を追う作業に戻った。





夏用の薄いコートを着た角刈りの少年とその隣を友人であろう丸刈りの少年が手持ち無沙汰に歩いていた。

大人しそうな彼らではあるがこの辺りでは少し名の知られた不良であった。

とはいえその活動は健全なものであり神田が潰したチームや半グレとは似ても似つかないものであった。

やがて丸刈りの少年が口を開き一方の少年に話しかける。

その口調は丁寧で敬語であった。

同年代であるが角刈りの方が兄貴分ということだろう。


「石岡さん、最近暴れてるやつのこと知ってますか?」


石岡と呼ばれた角刈りの少年は記憶を手繰るように答える。

そういえばそんな話を聞いたことがある。


「……ああ

ネットやらなんやらで有名になっとるやつだべ?

関東で大暴れしとるんじゃろ?

俺らには関係ないじゃよ」


「……それが北上してるらしくて

関東をやった後は東北にまで進出して名のある不良や半グレをボコってるらしいんです。

計算ではヤツはそろそろここ青森へ来るらしく……」


「なんじゃ、そいつぁ……

リアルノブヤ○でもやっとるんかあ……」


石岡は呆れたように肩をすくめる。

バカバカしい、と思った。

この杉田は話を盛る癖がある。

このような特に刺激のない片田舎では仕方ないことだろうか。

しかしそんな石岡の心境を知ってか知らずか構わず杉田は話を続ける。


「ヤバイですよ石岡さん!

ヤツがここら辺に来たら『俠気のナマハゲ』も標的に遭うんじゃ……

ゲプゥッ‼︎」


その瞬間、石岡の拳が杉田の左頬を弾き杉田は後方に吹き飛ぶ。


「その渾名はやめろといっただろ‼︎」


石岡は自分についた二つ名を気に入っていない。

尚も倒れた杉田を鬼の形相で睨んでいたがその真っ赤な顔はまさに「なまはげ」であった。






神田は困っていた。


「あの……」


「∇◉≒Å⌘☆★!」


道に迷ったので通行人の老人に道を聞いてみたのはいいのだが内容が聞き取れない……


「……あ、はい

ありがとうございました……」


「⊿£▲⊿#■Å?」


悪いとは思ったがどうしても聞き取れない神田は曖昧な笑みを浮かべ話を打ち切る。

神田は思った。

津軽弁恐るべし……


「同じ日本語とは思えねえ……」


バイクを手押しで歩きながら神田は知らない街をとぼとぼと歩く。

同じ国内と舐めていたが言葉が通じないというのはなんとも心細い。

それにバイトで貯めた路銀も帰りの分を考えるとそろそろ心許なくなってきた。

夕焼けの空を見上げ神田はため息を吐いた。


「……仕方ない、今夜は野宿かな」


その時だった。老婆の声が後ろから聞こえてきた。


「あんちゃん、困っとるんかの?」


神田が振り返るとそこには白髪の矍鑠としたおばあさんが細い目でこちらを見つめている。

滑舌も比較的よく発音も聞き取りやすい。


「ああ、ばあちゃん

良かった……聞き取れる言葉を喋れる人がいて

津軽弁聞き取れなくて困ってたんだよ。

あのさ、この辺の出来れば2000円以内で泊まれるカプセルホテル探してんだけど知らないかな?」


「カプセルホテルだあ?

そげな洒落たもんこの辺にないべよ

たま〜にいるんだあ、あんたみてえに津軽弁聞いてびっくらこく旅行者さ」


おばあさんは軽く笑いながら神田の質問に答えた。

神田は少し残念そうに会釈しバイクを押し始めた。


「……そっかあ

ありがとなばあちゃん」


「待ちなよ。あんちゃん旅行中じゃろ?ウチに泊まっていけばいいべや」


流石に悪いと思った神田は迷ったがやはり断ることにする。


「……いや悪いし」


「子供が遠慮するでねえ!うちは近くだからよ!さあさ!」


そう言うと神田の腕をぐいと掴んできたので神田は有難くその言葉に従うことにした。

老婆の歩く後を神田はバイクを押しながら歩く。


「ワシんとこもおめさんと同じくれえの孫さおってな。

ほっとけねえべや」


「そ、そーすか」


やがて少し歩くと住宅街に差し掛かり二階建ての家屋が見えてきた。


「あそこがワシんちだぁ〜

お、丁度ええ、あそこにおるのが孫の秀太だべ。

お〜〜い、秀太ー

お客さんだべーー

おめとおんなじ年頃の子だからよ、相手さしてけろや」


歩いていた秀太と呼ばれた角刈りの少年が振り向く。

気まずい沈黙の後に2人は軽く会釈を交わす。


「……あーどもこんにちは」


「こんにちは……」


石岡秀太は一応ケンカする不良であるがこの祖母に孫が不良であるという認識はなく、また田中清水が作ったリストに入るほどの悪事は当然働いてはいない。

お互い初対面であるがどこかで見覚えのあるその顔に石岡は神田に尋ねた。


「えーと

どっかで会った?」


「……いや初対面のはず」


神田は訝しそうに答える。

神田は自分のベイブリッジでの蛮行の動画が検閲にあいながらも一部で出回っていることに気づいておらず、石岡もどこかで一度だけ見たその動画と神田の顔が一致しない。


「そっかごめん」


「……いやこちらこそ」


またまた気まずい沈黙の後、石岡の祖母が2人の肩を掴みながら家の方へと押しやる。


「ささ、ウチさ入れな

すぐメシにすっから」


やがて神田を居間に入れると石岡祖母はいそいそと夕飯の支度を始めやがて食卓にちょっとしたご馳走が並んだ。

久しぶりの腰を落ち着けた食事に神田の腹の音が鳴る。

皿を半分以上がっついたところで石岡祖母は神田に話しかける。


「あんたさどっがらきたんだ?

旅行中かえ?」


「あー……

東京の×××区から……

旅行、って言うかうん、そんなもんかな」


「そっかよぐとおぐからきただな。

さあさたんとおあがりな」


「おお、ありがとうばあちゃん」


そうしてお代わりを持ってくる石岡祖母に礼を述べた。

落ち着かないのは石岡だ。

同年代くらいとはいえ得体の知れない男が飯時に自分の食卓に座っている。

人の良い祖母はたまにこういう事をするが、しかしこいつの顔を見てると何か嫌な予感がする。

何かを見落とし、忘れているような……


「……なあ

あんた名前は?」


とりあえず石岡は男の素性に探りを入れることにした。

やばい奴なら叩き出せばいいだけの話だ。


「ん、神田」


その名前にも聞き覚えがある……


「……すまん、下の名は?」


「神田春男」


そう言えば動画で暴れてたやつもそんな名を名乗ってた気が……


「……!

おめーさ、最近喧嘩とかしたことある?」


「最近どころか……」


「ほれ!ほれ!メシぐっだら片付けろ!

お客でもそれくれえやってぐれよな?」


すっかり空になった皿を見て急き立てるように祖母が神田の肩を優しく叩いた。

大事な話だったが石岡はばあちゃん子なので強くは出れない。


「ああ、わかったぜ。そりゃそうだよな」


神田は大人しく皿をシンクへと持って行き祖母の指示通り洗っていた。

その姿はとてもあの動画の男だとは石岡には思えなかった。

石岡は思った。

……他人の空似だよな



数時間後部屋を用意された神田はすぐに眠ったようであった。

一応は自分の中で納得した石岡であったがどうしても頭で引っかかるものがあった彼はPCを開き検閲削除されているようだがまだまだどこかに残っているあの動画を探し始め数十分後、目的の動画にたどり着く。

……何やってんだ俺。ばあちゃんが連れてきた客人だぞ、失礼じゃないか。ばあちゃんの客人が噂の狂犬カンダなわけないじゃないか

石岡は心の中で自分の小心さに呆れながらもポチりとその動画を開く。

別人ならそれに越したことはないのだ。

……しかし


『うおらあああああ‼︎』


「──本人じゃねえか!」


動画で暴れている『狂犬カンダ』は雰囲気は違うが明らかに先ほど会ったばかりの神田と名乗る客人と同一人物だった。

思わず石岡は椅子から思い切り立ち上がり叫んでしまい、口を塞ぐ。

ばあちゃんを起こすのは悪い。

その晩石岡はなかなか寝付くことができなかった。






あくる日石岡が目を覚ますと祖母が神田と共に畑から帰ってきたところだった。

時計に目をやるともうすでに11時を回っていた。

昨日はなかなか寝付けなかった……仕方がない


「おお、おぎだが?秀太。

神田さんは早起ぎして野良仕事手伝ってくれだぞ。おめも見習え。

すまねなあ、神田さん。きかねえ孫だもんで」


「いや、居候の身だしよ。それに土いじるのも悪くない」


──おい、おまえ神田春男だろーが!素直に野良仕事とか手伝ってんじゃねえよ!


心の中で叫ぶが石岡は目の前で祖母に穏やかな反応を示す男が昨夜見た動画と同一人物とは信じられなかった。

何しろ動画の中で鬼の形相で暴れ関東最強と言われる族を1人で壊滅させていたのだ。

しかしそれを口に出すわけにはいかず黙って食卓に着く。

屈託なく我が家に腰掛ける神田の横顔が実に憎らしい。


「もうすぐ昼飯できっからな。まっとってくれな」


「ああ、こちらこそすまねえなばあちゃん」


……すっかり馴染んでんじゃねえよ神田春男


この妙な状況に耐え切れず石岡秀太はプルプルと肩を震わせながら俯向く。

なぜ巷を騒がせている危険人物が我が家にいてこんなに寛いでいるのか、もはや脳処理が追いついていかなかった。


「……おい、あんた大丈夫か?」


大丈夫か?じゃねえよ、てめえのせいだよ


そうも言い出せず石岡は黙って祖母の作ってくれた昼食を口へと運び始めた。


「まったく反抗期っつーのかのう。

わりいなあ、神田さん、孫が無愛想で」


「いや、俺もそんな時期あったから」


──あったから、じゃねーだろーが!


石岡秀太は今すぐテーブルをひっくり返したい欲求に抗いながら漸く昼食をかき込んだ。





「じゃあな、ばあちゃん。

世話になったな」


「気をつけて行くんだば」


昼食が終わりしばらくゆっくりした神田は北海道を目指すべく青函トンネルへの道を教えてもらい石岡祖母へ彼なりに礼を述べる。

石岡は祖母の命令で途中まで神田を送ることになり納得いかないが仕方なく自宅を後にする。

簡単に道案内しながらバイクを押した神田を先導していると声を掛けて来る者がいた。


「……石岡さーーん、うお⁈神田?神田春男か⁈

おい!お前!こんなとこでなにしてるば!石岡さんとやりに来ただか⁉︎

簡単にやられると思うなよ!」


石岡の舎弟杉田だった。

厄介な事になりそうな予感に頭を抱えながら石岡は振り返る。


「おお、おい杉田……」


「なんだよ、オメー。なんで俺のこと知ってんだよ、気持ちわりー。

こいつのばあちゃんには世話になったんだよ。

喧嘩するわけねーだろ」


神田は憮然として杉田を睨みつける。

杉田は動画を何度も見ていたのか男を神田と認識しているようであった。


「ふん!どーだかな!お前のきたねー戦い方は動画で有名になっとるで!スレもあれまくっとるわ!

……ほれ!」


杉田に差し出されたスマボ動画を見ながら神田はうーーんと頬をかく。


「ああ、確かにおれだが

へーこんなとこにアップされてんだ。

つーかこれやばくね?おれつかまんね……?

いやそれより母ちゃんには殺されるな……」


尚も杉田は神田に噛みつく。


「とぼけやがって!どうせおめーが合成した動画だべ!

リアル○ブヤボとか言われとっけど大方○ーちゅーぶの広告料目当てだべ!」


「知らんがな

……はあ、なるほど

やっぱりこれ俺捕まらね?」


埒が明かないので杉田は石岡の方を見る。


「石岡さん!もうやっちゃってくださいよ!こんなインチキ野郎!」


「なんだよ、喧嘩する気ねーってよ

うぜーなこいつ」


……もうやめてくれよ杉田、ほっときゃどっか行くんだよそいつおれもうかかわりたくねーよ

石岡は頭を抱えながら胸中で神田に絡む杉田に恨み言をぶつける。

石岡秀太は元来争いごとが好きではない。

だがたまたま体格に恵まれ喧嘩のセンスも持っていたことから友人に面倒ごとを持ち込まれその人の良さから次々と問題を解決していくうちに意図せずこの辺りの不良のボスとなったわけである。

そしてついた渾名が……


「おい!神田ァァ!さっきから石岡さんに舐めた口聞いてんじゃねーぞ!

『侠気のナマハゲ』を舐めてんのか⁉︎あぁ?」


「ブゥゥゥ!」


不意に耳に入ったその異名に神田は腹を抱え笑い出す。

そしてその異名は普段温厚な石岡の唯一の逆鱗であった──


「杉田ァァァァ‼︎」


「はっ!すみません!いしおかさ──

ぐべっ!」


顔をみるみると紅潮させ鬼の表情になった石岡は杉田を殴り飛ばした。


『侠気のナマハゲ』……

怒って真っ赤になった鬼の形相からついた石岡秀太の二つ名であるが、本人は気に入っていないばかりか憤慨しておりそう呼ばれることが怒りのスイッチとすらなっていた。

……まあいちいち面倒ごとを解決してやってるのにこんな珍妙な渾名を付けられたらもっともなことである


石岡は怒りで我を忘れ杉田を更に殴り飛ばすと更には笑い転げる神田へと襲いかかる。

神田は鬼の形相で迫る石岡の蹴りに気づくと地面を転がりながらそれをかわした。


「おい、なんだよやめとけっておい悪かったって」


それでも笑顔を浮かべながら次々と迫り来る石岡の攻撃を転がりながらかわし神田は舌打ちをする。


「……ちっ、しゃあねえか。悪く思うなよ」


そして地面に転がったまま弧を描くように脚を振り回し迫り来る石岡の脚を自分の踵に引っ掛けた。

石岡はもんどり打って勢いよく2、3回転して転ぶ。


「おい大丈夫かよ?」


神田は地面に伏した石岡に近づき怪我の具合を見た。

所々擦過傷を負い、少し頭も打ったようだ。石岡はうう、と小さく呻く。

ダメージで怒りは鎮火したようではある。

顔を上げ地面にへたり込んだまま石岡は神田を見上げた。

どうやら大丈夫そうだ。


「はあ……さっさといけよ神田春男」


石岡は心底嫌そうに苦虫を噛み潰したような顔で神田から目を反らす。

本来なら絶対に関わり合いたくない相手だった。

それを殴りかかるなど……

我を忘れる癖は直した方がいいな、と思いながら石岡は苦笑する。

神田は大きな怪我はないと判断しバイクにエンジンをかけ跨る。

……ノーヘルで

神田はアクセルを踏み込む前、最後に石岡に振り向いた。


「じゃあな、石岡秀太。世話になったな。お前のことは覚えとく」


「……全然っうれしくねー」


石岡は腐った酸っぱいリンゴを頬張ったような苦い顔で神田の後ろ姿を見送った。














神田が北海道に上陸してから数日が経った。

バイクを乗り回しリストに載っていた組織は全て叩き潰したとほぼ同時に神田の路銀は尽き、白崎には悪いがバイクを売り払い路銀の足しにしたがそれも尽きて仕方なく野宿を繰り返していた。

食料は川魚やその辺の野草である。

神田は今日も川面に影を認めるとすかさず飛び込み手づかみで魚を捕まえる。


「よっし!大きな鮭だな。大物だ!」


今日も鮭を手づかみで捉え岸に上がったところを大きな影が差した。

訝しげに神田が首を向けたところそこにはゴワゴワの毛玉のような生物がただじっと神田を見つめていた。


「……おお、でけえなお前」


そこには神田を見つめる2メートルを越えようかという大きな熊が立ちはだかっていた。

熊はじっと神田の持つ鮭を見つめている。


「自然のルールは知らんが人間のルールではこれは俺のもんだ。

だがクマ公。慈悲をくれてやらんこともないぞ。喜べ」


神田はそう言うと鮭の尻尾を千切り熊の方へと投げつけた。

……当然熊には神田の言葉も道理も通るはずもなく

その尻尾に見向きもせず大きな熊は低く唸り声を上げると神田へと駆け出した。


「おいコラ!人間様の善意を無駄にすんじゃねえよ!」


熊のその様子に神田はご立腹のようであったが熊はたちまちのうちに神田の至近距離に達すると……

その丸太のような腕で思い切り神田を弾き飛ばした。

宙へと舞った神田はやがて音を立てて樹へと衝突し、その身は地面へと打ち付けられ、どう、と倒れた。

熊は神田を一瞥する事なく彼が取り落とした鮭の方へと向かう。

……自然界では強い者が全てを手に入れる

それが厳然たるルールである。

故に……


「……まったく

躾のなってないクマ公だな、コラ!」


まだ神田は熊に対し鮭の所有権を失ったわけではない。

額の血を拭うとゆっくりと立ち上がり今度は短距離選手のようなクラウチング態勢をとった。

普通の人間ならば今の一撃でとっくに絶命している。

流石の熊も初めてみる事態に驚いたのか、歩みを止め神田の方をじっと観察しているようであった。

──そして次の瞬間

神田は目にも止まらぬ速さで駈け出すと熊の胸元に飛びつきその身体をガッチリと捉えた。


「グ、グルウウゥゥゥ‼︎」


それは怒りか畏怖か。

熊は低い唸り声を上げると組み付いた神田を払いのけようと身を捩るがその攻防は一瞬だった。

ぐらり、と熊の身が前倒しに揺らめいたと思うと急降下するようにその頭が地面へと打ち付けられた。

乾いた木が湿った布に打ち付けられるような鈍い音が辺りに響くと熊が轟くような悲鳴をあげる──


「ギャアァァァァァァァァ‼︎」


神田のバックドロップが熊へと炸裂したのだった。

当然これは神田という怪物だから成し得た事であって懸命な読者諸君はどんなに腕に自信があっても、またモンハ◯で何度熊を討伐したことがあっても山中で熊を見たらすぐに逃げて欲しい。

作者との約束だよ。


そのまま熊は唸り声をあげながら何処かへと走り去っていった。

後には熊が食べ損ねた鮭が残る。


「……はあ、ざまあみろクマ公。俺の食料を横取りするからだ」


神田は額の血を拭うと鮭に歩み寄るが不意に殺気を感じ立ち止まった。

辺りをつけた方向に向きを変え身構えるとやがてガサガサと草むらからハンチング帽を被った髭面の男が現れた。

手には猟銃を握っていたが相手を安心させるような敵意のない笑顔でゆっくりと神田に近づいた。


「いんや〜〜熊と鮭を争って戦う人間を見たのは2度目だわ……」


神田は髭面の男の笑顔を見るがまだ警戒を解かない。

髭面の男は猟銃を手放し地面に置くとボリボリと頬をかいた。


「いやいや、素手で熊退治した人間相手に鮭ほしがんねえしそんなに困窮してねえよ。

あんた、宿ねえならウチくるか?

鮭も美味しく調理してやるぞ」


漸く神田は警戒を解くと髭面の男に歩み寄った。

何しろもうお金が無いのだ。

それに陽がもう落ちそうだ。


「いいのか、おっちゃん。困ってたんでありがたく受けさせてもらうわ」





「……てな具合でこの子が熊撃退したべ。驚いたなもう」


「まあ、相変わらず冗談が面白いことね」


森の麓にある小さいが立派な家に案内された神田は髭面の男とその妻の用意してくれた料理を前に卓についていた。

神田は腹が減っていたので皿をがっつく。

髭面は妻にさっきの話をするが当然信じられず冗談だと思われているようだった。

夫婦は薄くアイヌの血を受け継ぐマタギだという。

こうして狩りをしながらたまに森に迷い込んだ旅人を保護することもあるそうだ。


「そう言えばまだお互いに自己紹介してなかったわね。

私は須藤亜衣子。この人は房之よ。あなたは?」


「神田春男」


神田が名乗ると夫婦は目を見合わせた。


「もしかしたら……君のお父さんのお名前『夏雄』というお名前じゃないかね?腕のいい大工の……」


神田はその言葉に食事の手を止める。

人の口からその名を聞くのは久々であった。


「親父の名前だ……

確かに大工をやってた

親父を知ってるのか?おじさん」


髭面の房之はコクリと頷くと話を続けた。


「風の噂にお亡くなりになったとは聞いていたよ……

この度は御愁傷さまです。

俺もあの人ともう酒が呑めんのは寂しいよ」


房之は懐かしそうに何かを思い出すように虚空を見つめると水割りの焼酎を啜る。


「……親父は生前ここへ来たのか?」


「ああ、だいたい20年くらい前だったな。身一つで旅に来たらしく鮭を手づかみで獲って熊と争って……

まるであんたのさっきの行動とおんなじだな。

デジャヴかとおもたら親子だったとはよ」


「……そうか」


……親父もここへ来たのか

奇妙な運命を感じながら神田はまたゆっくりと食事を再開する。


「この家もその時の縁で彼が建ててくれたんだよ。懐かしいなあ」


房之は懐かしそうにぽつりぽつりと夏雄の話をしながらやがて新しいグラスを神田に差し出した。


「……呑むか?」


思わず亜衣子は椅子から立ち上がり夫からグラスを取り上げる。


「あんた!まだ高校生だよ!春男くん!ダメだからね!」


「わ、わかったよ怒んなよおばちゃん」


その剣幕に流石の神田もたじろいだ。












神田の父親、神田夏雄は腕のいい大工だが型破りな男だった。

深夜に妻に隠れて春男を夜釣りに連れて行くなんていうこともザラであった。

この日も夏雄は9つになる息子を連れ少し足を伸ばし遠くの港で夜釣りを楽しんでいた。


「あーいい夜風だなー春男」


「うん」


母親にバレたら怒られ、特に父親の顔が腫れ上がること間違いなしだが春男はこの父親との夜釣りの時間が好きだった。

覚えたてのその釣りのフォームは幼いながらに様になっている。

やがてくいくい、と釣り糸が上下し何かが引っかかった反応を示した。


「おっ、引いてるぞ。気をつけろ」


「おーー!」


父親の手を借り春男は見事大きなイカを釣り上げた。

満面の笑みで親子は喜び合う。


「よーしよし!今夜は大漁だな!帰ったら炙って醤油かけて食うぞ」


「うん!あははは!つりたーのし〜!」


そうして数杯のイカを釣り上げ興がのってきたところだった。

不意に車のヘッドライトが港を照らす。

普段こんな深夜に誰も現れるはずのない港の駐車場に2、3台ほどの車が停まりスーツケースをもった男たちが数名降りてきた。

夏雄は舌打ちする。

夜釣りは楽しいがこういうリスクもある。


「チッ……!親子団欒の時間によお……!

くだらねえ奴らがきやがった……!」


「父ちゃん、あれだれ?」


不思議そうに問う春男に夏雄は釣り道具をしまう準備をしながら腰をあげる。


「しょーーもない奴らだ。時化しけたから帰るか」


夏雄の判断は正しい、しかし一足遅く男たちにその姿を見咎められてしまった。

帰ろうとする親子の前にガラの悪い男たちが立ちはだかった。


「……おい待ちな

ちょっとツラ貸してけよそこの親子連れ」


「ひゃはははは!とうちゃんとぼくちゃん釣りですかあ〜?

呑気なもんですね〜?」


……まったくクソどもが

夏雄はため息を吐く。

こういった人気の無い港などは反社会組織の取り引きや密会に使われやすい。

呂律の回ってない者までいる。

……まったくもって鬱陶しい

今日はとりわけ大事な取り引きなのだろう。男たちは決してタダでは帰さないとばかりの圧を放っている。

普通の人間ならばもはや生きて帰れないだろう。

そう、普通の人間・・・・・ならば。


「さあさ、あっち行って遊ぼっか?ぼくち……」


「おい、臭いからしゃべんなよクズ野郎ども」


夏雄は男の言葉を遮り春男の顔を見る。

幸い、と言っていいのか息子は状況が分かっていない様子だった。

夏雄は再び男たちの方に目線を戻す。


「ガキもいるんだ。お前らのバカがうつったらどうしてくれる?」


こういった状況で一般の人間が取る態度はただ1つ。謝罪だ。しかし──

男たちは予想外の夏雄の反応に戸惑い困惑し畏怖さえ覚え始めるが、憤った男たちのうち1人が夏雄の前に出てくる。


「……この野郎言わせておけば」


夏雄はため息を吐き春男の頭に手を置いた。


「はー……いいと言うまでちょっと目つむってろ春男」


「わかったー」


春男が両手で自分の目を塞いだのを確認した夏雄はやがて前に出てきた武闘派らしき男へと無造作に歩み寄り……


「おい、なに言ってやがるおっさんコラ!

……ゲプッ‼︎」


そのまま目にも止まらぬ速さの拳で男の顎を砕いた。


驚愕、畏怖、激昂、困惑、焦躁──


男たちの反応はバラける。

そして夏雄は態勢の整わぬ者から順に次々と殴り飛ばし、蹴り飛ばし、投げ飛ばしていく。


「がっ!ごわっ‼︎ぶぅっ‼︎」


「ちょっ!やめ!わるかった!わるかったって!……ギャアァァァァァァ‼︎」


それはさながら無人の荒野を往くが如しであった。

一瞬にして10名近くいた男たちを沈めた夏雄は近くに倒れていた男の胸ぐらをぐいと掴むと氷のような目で男を射すくめた。


「おい殺されんだけありがたく思えよ、悪魔の粉を扱うクズども。

次この界隈でそのツラ見つけたら俺がどうするかわかってるだろうな?」


「ぐぅ……!わかった……わかったから」


男が完全に心が折れた事を確認すると夏雄は男たちの手放したバッグをゴソゴソと探りやがて何かの袋を発見するとそれを次々と海へと投擲し始めた。

夏雄が何をしているのか気づいた男は泣き喚くように懇願した。


「おい!それはやめろ!やめてくれ!シャレにならねえ!ウワァァァァァ‼︎」


足元に縋り付く男に夏雄は容赦なく蹴りを入れた。


「知るかぁボケェ……!エンコ詰めるなり始末されるなりしてろクソボケ」


そうして男たちのもっていたブツを全て海にぶち撒けた夏雄は春男の元に戻ると声をかける。


「もういいぞ春男。さあ帰るか」


「うん!父ちゃん!」


春男は素直に笑顔を見せやがて2人でクーラーボックスを担ぎ、倒れてるヤクザ者どもを尻目に港を後にした。


帰宅後は釣ったイカを母を入れて3人で美味しく食べた。

夏雄の顔が母に殴られ腫れ上がっていたのを春男はよく覚えている。

この夜釣りが父と子の最後の団欒だったことを春男は後に知ることになる……














久しぶりに見た夢に春男は徐々に覚醒する。

カーテンの隙間から薄い朝日が寝室に差し込んでいた。

北海道の夏は短い。

もうすぐ8月は終わろうとしていた。


「ちっ……!また嫌な夢を見ちまったな……」


子どもの頃の春男にはよく理解出来なかったがこの夜の諍いが父の死に繋がったことが今なら理解できる。

だからこそ春男は父の命を奪う原因となった薬物に対して激しい嫌悪感を露わにする。

父の夏雄はあの港の事件の3日後、交通事故で亡くなった。

加害者はアル中の男でどうやら夏雄に港で絞められた組の債務者であり、その男も数日後不慮の事故死を遂げた。

調べれば調べるほど裏のありそうな事故で夏雄は命を失った。

……神田には我知らず封印している記憶がある


「くっそ、なんだか思い出せねんだよな……

あの頃のこと」


父親を喪った直後、その後数日の自分は何をしていたか、思い出そうとすると頭に靄がかかったように思い出せずそこでフリーズする。

他のことはクリアに思い出せるに関わらずだ。

母親に聞いても数日行方知れずになっていたという答えしか返ってこなかった。

……母親にしこたま殴られた記憶はある


「春男くん、起きてるかね。朝ごはんできたべ」


房之がノックの後、貸してくれた神田の寝室へとやってきた。

髭面の男は神田の顔をじっと見つめ気遣わしげに提案した。


「……あまり顔色よくねーな。暫くうちへ泊まってったらどうだ?

ここはあんたの親父が建てた家だ。遠慮なく泊まってってくれな」


親切なその申し出に神田は薄く笑いながら首を横に振った。


「ありがとう、おっちゃん。でも大丈夫だから。

学校もそろそろ始まっちまうしな」


「……そっか、無理すんなよ。気が変わったら泊まってけ」


そう言って房之は笑顔を浮かべて部屋を退出していった。

トントン、と階段を下る音が聞こえる。


「……親父が建てた家、か」


神田は柄にもなく感慨に耽る。

そう言えば昔は親父のような大工になる事が夢だった。

……今の俺はどうだ?

筋は(自分なりに)通してるつもりだが、気に入らなければ教師であろうと年上の人間であろうと所構わず喧嘩を吹っ掛け周囲には『狂犬』と呼ばれるまでになった。

自分は何がしたいんだろうか。

親父が死ぬ以前の自分が今の自分を見たらどう思うだろうか……?

今回の旅だって衝動のままに始まった無茶な旅だっただろう……?




暫くの思考の後に神田は起き上がり昨夜場所を教えてもらった洗面台へと向かう。

……無茶な旅で疲れてるんだな

神田は洗面台に着き伸びを1つすると顔を洗い始めた。














袴田は一口ぐい、とビールを呑むと息を吐き懐から何か小さな四角片を取り出した。

そして横に座るメガネの男にそっと差し出す。


「さて、君に売る・・のは初めてだったな?松井くん。

これが御社・・の欲しがっていた商品・・だ」


メガネをくいと引き上げ松井と呼ばれた七三分けの男は差し出されたUSBを恭しく受け取りPCを起動する。


「では失礼して」


PCにUSBを差し込むと中身を確認する。

その内容は……

顔写真付きの人名や詳細なデータ、国や場所の名前などがずらっと記されていた。

松井はメガネをくいと引き上げ頷く。


「間違いないですね」


「ああ、これが我が日本政府から諸国に送り込んだ細胞スパイたちの詳細なデータだ。

大いに活用してくれたまえ」


そう言って袴田は皿の上のステーキにフォークで切りつける。

公安特別課情報管理室とは公式には存在しない政府直属の特別チームである。

袴田はそこの室長のポストを利用し数年前から情報を各所に売り渡していた。

今回の取り引き相手はC国のとある会社の調査員と名乗る松井という男であった。

引き渡しが終わり袴田は満足そうに1人しかいないシェフのオヤジに熱燗を注文する。

この店は地下にあり袴田の息のかかった店であるため今回のような密会に持ってこいである。

松井は袴田に慇懃に頭を下げる。


「感謝します。袴田室長。これで上にいい報告ができます」


「さあさ、君も飲みたまえ。ここは私の貸し切りだ。誰も入ってこんよ」


上機嫌でほろ酔いの袴田はがはは、と笑いながらあっという間に熱燗を空けた。

やがて箸がすすみ松井はぽつりと尋ねる。


「……失礼ですが室長はなぜこのようなビジネス・・・・を?」


ぐいと一口酒を飲み干すと袴田は口を拭った。


「……どうしてだろうな。それは私にもよく分からんよ」


曖昧な答えに更に松井は質問を重ねる。


「いつからこのビジネスを始められたかご自分で覚えておられますか?」


「いやあ、よく覚えてないよ」


「正確には2年と5ヶ月前。あなたは部下の情報を売り渡し始めた」


「……私も覚えていないことをよく知ってるな」


袴田は眉根を寄せながら今度はビールを更に追加する。


「主な取り引き相手はR国、C国、K国のスパイなど。あなたの売った情報で消された細胞は分かっているだけでも18名……」


「おい」


ここで低い声で袴田は松井の言葉を遮った。

その目は怒りを隠せていない。


「まるで私を糾弾するような口ぶりだな。なんだ?それ・・を受け取っておきながら何か文句があるのかね?」


「いいえ、私個人は意志と意見も持ちません。今の質問はからの注文オーダーです」


奇妙な物言いに袴田は訝しげに松井を睨みつけた。


「おい、何を言ってる?君の雇用主はC国の××機関だろう?あそことは何度も取り引きしている。だからこそ君にそれを売ったんだ……」


松井は首を横に振り箸を置いた。

椅子に坐り直し身体の方向は袴田の方を向ける。


「いいえ、袴田室長。私の雇用主は今川部長……あなたの上司ですよ。

部長からの伝言です。

取り引きありがとう。これで日本国の大切な細胞の命が救われた」


直角に頭を下げる松井の頭を見ながら袴田は見る見ると青ざめていった。

自分の命運が尽きる音が聞こえた気がした。


「……いつからバレていたんだ」


松井は冷やを喉に流し込みながら落ち着いた声で答える。


「13ヶ月前からあなたへの調査は始まっていたそうです」


「そうか……」


オヤジがビールを持ってくる。

その顔にはいつも通り表情は無く目の前で何が起きてもそれが変わることはないだろう。

だからこそここを取り引きの場に選んだのだ。

……しかしここはもう袴田のホームグラウンドでは無い

袴田は噴き上がる妙な汗を拭い生唾を飲み込んだ。


「君は掃除屋・・・だな?

噂には聞いたことがある。その正体を見たもので生き残った者はいないそうだね。

今気づいたよ。全く。私はとうの昔に引退しておくべきだったよ」


変わらぬ態度で松井はメガネを引き上げながら答えた。


「覆水盆に返らず、ですね。ここの様子はモニターで部長も見ておられます。

何か言うことはありますか?」


少し考え込むと袴田は青ざめた顔でグラスをぐいと傾けた。


「部長にはお世話になった……会わす顔もないよ」


「不思議です」


松井は袴田の目をじっと見据えた。


「今の殊勝な物言いでやはり私にはわからなくなりました。なぜ組織を裏切ったんです?そのせいであなたの部下も多く死にました。

もちろん調査しましたが誰かを人質に取られている、というバックグラウンドもない。

まさかお金じゃあないでしょう?

……何故です?」


袴田は苦笑いを浮かべながらハンカチで汗をぬぐった。

……本当に何故だろうか

自分でも分からなかった。答えられることなどない。


「……私はもう終わりなんだろう?

さっき答えた通りだ。

死刑囚よろしく何か食べる時間くらいはくれるんだよね」


「ええ、部長からは存分にと。

答えがわからないのは部長も私も残念です」


松井はどうぞ、とメニューを差し出す。

もちろん袴田に会計の心配は要らない。


「……アイスを貰おうか。メニューにあるものを全部だ。

1番高いテキーラも頂こう。

ふふ、もう体調や血糖値を気にすることもないね」


自嘲気味に嗤う袴田に更に松井は続ける。


「別れた奥さまや息子さんの心配はしなくていいそうです。

あなたは今夜ここで病死・・することになりますので『裏切り者の遺族』という汚名を着ることもなく補償金も出るので生活や後の心配はありません」


「……そうか、ありがとう

と言っても暫く会っていないので顔も朧気だがね。情けないよ全く」


松井は思い出す。

……この辺りにあるのかな、と部長は言っていた

袴田が情報を売り出した時期と家族と別居し始めた時期は重なる。

己を仕事人間にしたこの仕事への復讐ではないか、とも。

袴田がテキーラを飲み干すのを待ちそろそろアイスで胸がつかえはじめた頃、松井は極めて穏やかな声で語りかけた。


「部長が私を遣わしたのもあなたへの最大限の敬意です。

痛みはありませんからその点はご安心ください。

逝くタイミングのリクエストはありますか」


テキーラのせいか、袴田の顔には熱が戻り赤みが差していた。

怯えはあるが覚悟はできた目だ。

……いい頃合いだろう


「……どうせアイスは食べきれんので食べ終わるのを待つ必要はない。適当に頼むよ」


松井はその言葉に小さく頷いた。


「そうですか。では部長からの最期の伝言です。

『長い間ご苦労様だった。さようなら』」


言い終わると同時に松井の指が隣に座る袴田の眉間とこめかみに伸びコツン、と言う音と共に袴田はテーブルに突っ伏した。

その死に顔はまるで眠ったような穏やかなものだった。

松井は氣を点穴に叩き込み袴田を瞬殺した。とある暗殺拳の奥義の1つである。

店のオヤジはたじろぐ様子も見せずカウンターでグラスを拭いている。

話は通っているのだ。

全ては今川部長の仕込みであった。


「ご苦労だった。松井くん。まさに掃除屋だな」


袴田が倒れた瞬間、黒いスーツに身を包んだ男が店の戸を開いて現れた。

そのまま後ろについていた2名の男たちはそそくさと袴田の遺体を何処かへと運んでいく。

作業が終わると袴田が座っていた所とは逆側の松井の隣に今川は腰を下ろす。


「任務完了です」


松井はUSBの挿さったPCを今川へと寄越した。

今川は頷くとマウスを動かし内容を確認しながら渋い顔でオヤジに1つ注文した。


「寿司あるか?赤貝を」


オヤジは無言で頷き握りの用意をする。

この店は大概のものは出てくるのだ。


「はあ……袴田、とんでもないことをしてくれたな」


ため息を吐きながらマウスを動かす今川に松井はちらりと腕時計を見ながら尋ねた。

もう11時はまわっている。


「そろそろお暇しても?もう私に出来ることはないでしょう」


今川はマウスを繰る手を止め松井の方に向き直る。


「まあ、待ちたまえ。君には次の任務があるのだ」


オヤジが持ってきた赤貝を口に運び熱いお茶で喉を潤すと今川は続けた。


「『カンダ』の一族の伝説は聞いたことがあるか?」


「はあ、耳にしたことはあります」


たまご、と今川はオヤジに再び注文を重ねる。


「関東のとある地方に伝わる戦神を宿すと言われる一族……『カンダ』

君は物知りだ。詳しい講釈は省くが我が国は今、お伽話とされてきた夢のような伝説を見直し超常的な力を持った人材の発掘を急いでいる。

そう、君のような、ね」


長くなりそうなので松井はいくら、とオヤジに注文する。


「11年前に異世界へのゲートを発見されてから日本国は異能の力の存在を認め、研究や発掘を始めた……」


「ふむ、諸外国や一般には秘されているがね」


寿司を頬張りながら今川は話を続ける。


「それが何か?私の次の任務と関係が?」


「これを見てくれたまえ。7年前のものだが」


PCのUSBを差し替えると今川は松井に見えるよう画面を寄せた。

そこには信じられないような映像が映っていた。


「ほう……」


それは小学生くらいの少年がたった1人でヤクザの組事務所を壊滅させる映像だった。

少年の目は虚ろでとても正気を保っているとは思えなかった。

今川は説明を続ける。


「少年の名前は神田春男。

間違いなくカンダの血を継ぐ者だ。

この時の年齢は9歳。父親を不慮の事故で殺され怒った彼は我知らず血に覚醒し黒幕であるヤクザ者の事務所を1人で壊滅させた。

後に保護した医者の見立てによるとこれは無意識下でやったらしい。

とんでもない化け物だろ?」


「確かにね。伝説に負けず劣らずの化け物ぶりです」


「カンダ」の一族とは10世紀頃、呪いの儀式により戦神をその身に宿した一族と言われる。

平将門について朝廷と戦ったため、反逆の血が流れていると言われたこともある。


「そして今もこうして暴れ続けている……本能の赴くままにな」


更に映像を切り替え、今川は神田のベイブリッジでの戦いぶりやこの夏の暴れぶりを映してみせる。

凶暴さは成長とともに増しているようだった。

表情の読めない目でそれを見つめる松井の様子を見ながら今川は茶を飲み干した。

そして湯呑みを置くと厳かにとある指令を伝えた──


「松井くん、君には彼のサポート、いや教師になってもらいたい」


「本気ですか」


松井は読みにくいが困惑の表情を浮かべた。

よっぽど嫌なんだろう。

面白く思いながらも今川は続ける。

彼の中では既に決定事項なのだ。

……それに他に人選はない


「もちろんだ。私がこんなつまらない冗談を言ったことがあるかね?

君しか居らんのだ。今はまだ子どもだから脅威とはなり得ん。しかし彼が間違った方向に走ればいずれ日本国にとって脅威となる。

まるで1,000年前と同じ内乱が起きかねんのだよ……

頼む。普通の人間には出来んのだ。彼を正しい方向に導いてやってくれ」


今川はここで松井に頭を下げた。

正確には松井は年契約で国の雇った暗殺者だ。

嫌と言われればそこまでだが、しかし今川は彼以上の適任を知らなかった。

暫しの沈黙の後松井は口を開く。


「わかりました。契約期間内ですし契約内容にも違反していません。

受けましょう」


「おお、ありがとう!松井くん!」


今川は満面の笑みで頭を再び下げる。

内心で胸を撫で下ろすが、松井の珍しい苦り切った顔にしてやったりの感もある。

今川は鞄から複数の書類や封筒を取り出し説明を始めた。


「早速だが新しい戸籍と名前は用意してある。

もちろん教員免許もだ。

明後日から新学期の始まる彼の通う犬鳴高校へ赴任してくれ」


「……やれやれ、急ですね」


ちなみに松井という名前も偽名であり彼の本来の国籍も全く持って不明である。


「すまないな」


「いいえ、わかりました。

……ほう今度の私の名は『松田光世こうせい』ですか」


松田・・がメガネをくいと上げる。

ふふ、と笑いながら今川は冷やを喉に流し込んだ。


「いい名前だろう。頼んだよ松田・・くん

ここの会計は私持ちだ。好きなだけ呑んでいってくれたまえ。

ではな」


書類の説明を終え、2、3の質問を終えると今川は店を後にした。

1人残された松田はため息を吐きながら店のメニューを眺める。

部長にしてやられた感が満載だ。


「……まったく、今度はガキのお守りですか。気がすすみませんね」


気を取り直し飲み直すことにする。

気になっていたメニューがあるのだ。


「1番高いテキーラを」


それは袴田の最期の晩酌であった。

出てきたそれは呑んでみると確かに美味い。

最期は彼なりに満足して逝けただろうか。


「ゴルフ上手かったですね、袴田さん。ご冥福を。願わくば冥府では貴方に誠実な心と思いやる心を」


松田は袴田が逝った辺りに向かいグラスを傾けテキーラを飲み干した。















神田は結局須藤夫妻に金を借り帰途へと着いた。

彼らは「家を建ててもらった代金だ返さなくていい」と快く金を出してくれた。

いずれバイトして返さなくては、と神田は思っている。

それにしても電車の旅は快適で半日あれば東京に戻ることが出来た。


「ギリッギリだぜ、はあ〜〜やっと着いたぜコノヤロー」


9月1日始業式の日。朝靄の中、私服で母校へと到着する。

まだ朝の5時だ。

当然誰も校内にいない。

ひぐらしの音が聞こえ秋あかねが空を飛び交っていた。

夏ももう終わりだ。


「ふむ、そろそろ秋の匂いがするな」


神田は始業式までの間、校庭でひと眠りするつもりだった。

これで遅刻の恐れはない。神田的には完璧なプランである。


──不意に足音が聞こえ神田は音の方を振り向いた


「着いたぜコノヤロー、じゃないですよ、この問題児」


「なんだテメーは」


そこには七三分けの黒縁眼鏡でパリッと黒いスーツを着こなした男が神田を見据えていた。

やがて作ったような微笑みで男は神田に挨拶を始める。


「私は松田光世。本日よりこの犬鳴高校に赴任してきました。

そして今学期から貴方の担任です」


「は⁈」


突拍子もない男の発言に神田は苛立ちを覚えた。

また代わったのか?

……確かに神田の歴代担任たちは大概胃をやられる者が多かったが


やがて松田はつかつかと無造作に神田に向かって歩みを進めた。


「さて、さっそくですが。神田春男くん。

構えなさい。いや、カンダには構えといった概念はないか?」


「……何言ってんだ、シチサンヤロー。

頭大丈夫か?

とにかく俺は始業式までここで寝させてもらうぜ、邪魔したら殺すぞじゃあな」


神田が後ろを向いた瞬間距離を一気に詰めた松田の拳が唸り超反応を見せた神田の掌に収まった。

拳の重さに神田は後ろに飛び退る。


「ふむ、いい反応です」


「……ってーな!何すんだコラァァ!」


激昂する神田にやれやれ、と松田は首を振りまた無造作に歩みを進める。


「教師に対するその不遜な態度。まずはそこから改めましょうか」


「ぐぅ‼︎」


一瞬で間合いを詰めた松田の蹴りが神田の横腹に突き刺さり、神田は勢いを殺すように後転する。


(重い……!疾い……!今まで戦ったどの相手よりもつええぞ、こいつ‼︎)


神田は低い姿勢で地面に手をついたまま松田を警戒するが更に松田はつかつかと距離を詰めてくる。

その動きは緩急自在、まるで陽炎のようであった。


「この夏休み何処へいってましたか?

親に何も言わずフラフラと家出のように旅立つと連日のように喧嘩三昧……

家に帰ったら母親に手をついて謝ること」


「てめー!何言って……ふぐっ!」


松田の拳が神田の右頬を打ち付ける。

そのまま背後に回ると松田の腕が神田の首をがっちりと捉えた。


「暴行・傷害合わせて確認出来るだけで118件。未だ捕まっていないのは貴方が『カンダ』であり国にとって利用価値があるからですよ?

これからは心のままに暴れるのはやめなさい」


「ぐっ!ボエェェェェ‼︎」


呼吸器を絞められた後、そのまま首投げをくらい神田は背を地に打ち付け、悶絶する。

神田が格闘においてここまで追い込まれたのは初めてであった。


「くっそ……!てめー調子乗んなよ!コラァァァァ!」


神田は痛みをこらえ起き上がるとしっちゃかめっちゃかに突きと蹴りを放つ。

……いずれも松田にはかすりもしない


「極め付けは」


松田の膝が神田の膝裏に入りとん、と神田の腰が落ち動きが止まる。


「あなた、宿題ちっともやってないでしょう。猶予をあげますから7日以内に全て提出しなさい。さもなければ……」


一呼吸の間に松田は低い姿勢をとりやがて無数の拳足が──


「修羅三千撃……!惨海……!」


神田の全身に突き刺さり大きく吹き飛んだ。

うめき声を上げる間もなく薄れゆく意識の中で神田は朝日を背にする鬼を見た。


「殺しますよ?分かりましたね?

では今日の授業はここまで」












結局、神田は気がつくと体育館のパイプ椅子で校長の長い話を耳にしていた。

後に聞いた話によると田中と清水が運んでくれたらしい。

なんとか始業式を終えると教室に戻り自分の席で突っ伏せる。

全身が痛い……

顔も腫れているようだ。

こんな時に見たくない顔が机を叩いてきた。

舌打ちしながら神田は顔を上げる。


「神田ぁ……なんで新学期早々ボロボロなの?

アホ特有の病気なの?それ」


相変わらず綿貫は神田に厳しい。というか人扱いしない。


「……チッ!

黙れよ綿貫……なんか通りすがりのシチサンに襲われたんだよ」


「何それ。それよりあんたなんて夏休み過ごしてんの?バカじゃないの?化学室に毒物あるから今すぐ飲んで死になさいよ」


訂正。口が悪いというレベルではなかった。

神田は机を叩いて立ち上がり綿貫にメンチを切る。


「チッ!うっせーな!綿ブス!やんのか?」


「何よ⁉︎やんの?」


激昂した2人の諍いが始まろうとしていた。


「はぁぁ⁈」

「あぁ⁈」


クラスメートたちは遠巻きに2人の様子を見守るが誰も止める者はいない。いや、止められる者はいないのだ。


そろそろ殴り合いが始まろうか、という瞬間教室の扉が開き静寂が訪れた。


「はい、席について。

神田……新学期そうそう女の子イジメですか?殺しますよ?」


クラスメートたちは耳を疑った。

──聞き間違いですよね?


神田は舌打ちしながら入ってきた教師を睨みつける。

……これがイジメに見えんのかよ

その瞬間神田の表情が固まった。


「さあ席に着きなさい。

ではまず自己紹介から始めますか」


──悪夢かよ

それは先ほど自分を完璧に打ちのめした男であった。

神田は疲労とストレスからその場に頽れた。

クラスメートたちが悲鳴を上げる。


「先生!神田くんが血を吐いて倒れました!」


松田は表情1つ動かさずやれやれ、とメガネを押し上げた。


「やれやれ……そこら辺の草でも喰わせておけ、と言いたいところですが綿貫さん保健室にお願い出来ますか」


「え、ええすごく嫌だけどわかりました」


綿貫は神田以外の事象に対しては常識人なので仕方なく神田の肩を掴み保健室へと運び始めた。


やがて唖然とする学生たちを見渡し教壇に立つと作ったような微笑みで松田は挨拶を始めた。


「では本日より本校に赴任しました松田光世です。これからよろしくお願いしますね」

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