違法薬物
誘拐事件を解決してから、他国からのお誘いが止まらない。
まだ学生だっちゅーの。
いくつか、私の長期休暇に合わせて訪問する事になった。
国内で夜会デビューしてないのに何故!
今回の行き先は、宰相閣下の友人がいるベルク王国なので、宰相閣下とクリス様と一緒である。
歓迎の夜会の最中、二階にある要人用のテラスから下の庭園を見渡すと、物陰に野外プレイ中のカップルがいた。
ホント、淫魔でもないのに止めんかい!
と思ったら、危険人物判定魔法により男性側が犯罪者判定されました。
噂でしか確認できていなかった、違法薬物ヒプノー!
被害者と思われる人物に記憶がない上に、目的を達成した場合は直後に被害者が自害していることから、暗示か催眠に使われる薬物だと予想されていた。
ヒプノーは、顔に吹き掛けるか、布に染み込ませた物を被害者に吸わせて使用されているらしい。
被害者は、吸い込んだ直後から2〜4時間は本人の意識はなく、言われた事を実行する傀儡となり記憶は残らない。
後ろから襲われたら被害者は犯人を覚えてなどいない為、犯行後に被害者が自害すれば完全犯罪が成立する。
この違法薬物が発覚したのは、ある国のお茶会から帰った夫人の挙動がおかしく、殺傷能力が低いペーパーナイフで夫を殺そうとしたからだ。
この事件は、夫の殺害を指示された夫人に魔法の才能がなかったこと、夫人が箱入り娘で暴力に縁がなく、犯人が殺害方法について具体的に指示してしていなかった為に失敗した。
拘束された夫人が数時間後に意識を取り戻すと、お茶会の会場で侍女と離れた数分の間に襲われたところから記憶がなかった。
様々な調査で、使用されたのが魔術やスキルではなく薬物だと判明し、別件の事件が同様の手口のものだと立証され、各国に注意喚起がなされた。
原因不明の無理心中や突然の自殺について調べ直したところ、他国でもヒプノーを使った暗殺の存在が確認され、大陸中で違法薬物に指定された。
ヒプノーの使用者も所持者も販売者も、発見されれば極刑だ。
つまり、この性犯罪者には何しても問題なっしんぐ!
テラスから飛び降り、要らない短剣を取り出して、男の尻にぶっ刺す。まだ死なせないよ!
被害者の女性はクリーンをかけて服を整え、私の特殊な回復魔法をかけて、無かった事にする。
彼女は、ヒプノーの被害者であって、性犯罪被害者ではない。
彼女を毛布ですっぽり包んで、男の絶叫で集まってき
た騎士に弁明する。
「私は、アッシュフォード王国の特級鑑定師イザベラ・リーヴァ・シュバリ・リアル・セラヴィ・ローランド。違法薬物ヒプノーを使われた被害者を発見した為、緊急事態と判断し保護しました」
血だらけで呻き下半身を露出したまま尻に短剣が刺さってる男を四度見ほどした騎士は、一瞬遠い目をした。
汚い物を見せちゃった。すまぬ、すまぬ。
「その男の胸ポケットに、ヒプノーが入っているアトマイザーがあるので証拠の確保をお願いします。私の控え室に被害者の女性を保護しますので、デッセル侯爵を部屋に寄越して下さい。ああ、その男の治療は不要です」
デッセル侯爵は被害者の父親ね。
ついでに、デッセル侯爵には王族への報告も頼んじゃおうかな。
「しかし、これでは尋問が…」
「必要な情報は私が鑑定するので、質問事項を書いて下されば私が回答します。その男の治療は不要です」
大事な事だから、2回言いました。
まあ、明日まで放置して失血死狙いなんだけど。
「それと、レスティ商会のナールがヒプノーの販売者です。所在の確認をお願いします。捕縛には同行しますので声掛けお願いしますね」




