父母の憂鬱
ジョシュアとイザベラを部屋に戻し、夫婦2人でため息をついた。
「レオ、あの子達は避難させなくて大丈夫かしら」
「リリー、大丈夫。我が家の警備は万全だ。それに、あの子達も強い」
妻の心配もわかるが、我が家以上の安全地帯はなかなかない。
王城ももちろん厳重な警備はされているが、如何せん人の出入りが多過ぎる。
「そうよね。ここより安全なところはないわよね」
「ああ。危険人物はイザベラが既に排除してるしね」
「本当にどうしてわかるのかしら。こないだの侍女見習いがスパイだったのもそう。事前に調べた経歴も綺麗だったし、何人かスパイを捕まえてからは慎重に調べてるのに」
本当にな。頭を抱えたくなるよな。
遠い目をしながら妻の頭を撫でた。
2年程前に、捕縛された暗殺者が玄関ホールに転がされていたのを皮切りに、使用人や騎士団内のスパイも捕縛された状態で転がされるようになった。
スパイや暗殺者を捕縛しても、情報を得るのは難しい。
しかし、捕縛された彼らには手紙が毎回ついていた。
そこには、暗殺者やスパイの本名、雇い主、目的、人質の有無まで書いてあるのだ。
捕縛した者を探したがわからず、気味が悪い日々が続いた。
それから1年程経った頃、侍女から【イザベラが魔法で気配を消して屋敷を抜け出した】と、まさかの報告が入った。
しかも、倉庫にあった錬金釜を引っ張り出して魔導具の作成までやってのけたと。
『ぬけだすけど、このまどうぐでよびだしてくれればすぐかえってくるから!ないしょだよ!』
と言われて、唖然としてたら消えたそうだ。
うん、意味がわからない。
調べても、錬金術なんて教えてないんだが。
そこから、ジョシュアとイザベラの調査をしてみると、2人とも優秀過ぎることがわかった。
ジョシュアは、自主的に騎士団と共にダンジョンまで挑戦していた。
イザベラは、光の日と闇の日は屋敷を必ず抜け出していた。
我が家の影部隊に追跡を依頼したが、屋敷の敷地で見失うそうだ。
あまりの優秀っぷりに影にスカウトしたいと言われた。
暗殺者やスパイも実はイザベラが捕縛してたりして?
と話にあがり、試しにスパイ疑惑のある侍従をイザベラに接触させてみた。
見事、翌日に玄関ホールに転がされていた!
イザベラ!なにしてるんだ!
妻や執事、騎士団長、影部隊の隊長らと話し合い、イザベラと面識のない者たちを不自然にならぬよう順に会わせることにした。
そして、我が家の危険人物は一掃された。
事実を見れば明らかなのだが、現実を受け止めきれず、未だイザベラ本人に確認は出来ていない。
今回は大人しくしてて欲しいがどうだろうか。