デートすらままらない2
「クリス様、ちょっと判断がつかない事態が」
「どうしたの?」
「あちらの冒険者パーティーに見える集団ですが、禁術の傀儡魔術の使役者と被害者たちです」
「は?」
「あの中の一人がアッシュフォードの子爵令息です。前に話した、失踪だと思ってたら人身売買の被害者で未だ発見できてなかった…」
「ええぇ!モガッ」
クリス様も流石にビックリしたみたい。でも、大声はダメ!
咄嗟にイチャイチャしてる風に口を塞いだ。
「ごめん、イジー…でも、あの時に潰した人身売買組織ってかなりの国で活動してた大物でしょ?イジーが頑張って各地の構成員を捕らえたけど、他国にまだまだ散らばってて被害者が見つからないって話で、宰相閣下が他国に捜査依頼してたやつだよね?」
「はい…あちらにいる他の被害者は各国の貴族令息です」
「マジかー」
これ、今捕まえるのは悪手だよねー
ここ他国だし。
「クリス様、使役者の情報と被害者のリストを宰相閣下に届けてもらえますか?私は彼らを尾行します」
「そうなっちゃうか…イジー、気をつけてね」
「隠密で追うので大丈夫です!」
隠密で姿を隠して尾行中。
いや、ホント、なんでこんな堂々と歩くかな?
全員ローブのフードで目元隠してるけど、被害者の顔を覗いたら、目に生気なくて異常だってすぐ分かるよ?
使役者の余裕綽々な態度、イラッとくるわー
色々と鑑定して、使役者の情報を集めてく。
阿婆擦れ王女の時にも思ったんだけど、鑑定できる情報が多過ぎるとちょっと大変だよね。
欲しい情報が何か分かってないと、頭に流れてくる情報が多過ぎてクラっとする。
使役者のロイス・ナッテは、禁術使用者ではあるけれど、被害者たちを拐った人身売買組織とは関係はなかった。
参加した闇オークションでたまたま被害者たちを買っただけだ。
たぶん、私が組織の一部を潰したせいで慌てて売り捌いたんだろう。
帝国のナッテ子爵の妾との間に生まれたロイスは、正妻は勿論、母と同母の姉にも疎まれていた。
母は既に父に飽きられていたし、姉は女だからか父が興味を持たなかったせいだ。
父はなんだかんだ正妻との子供を優先していたから、ロイスにとっては、たまに構ってくるせいで母と姉に責められる原因となる不愉快な存在だった。
13歳の時に、正妻に喧嘩を売った母と姉が殺された。
ロイスは刺客を返り討ちにし、家に火を放ち、死を偽装して逃げ延びた。
この時点でロイスはかなりの人間不信と女嫌いを発症していたが、ここからまあ見事に不幸が重なり、かなりの人嫌いとなる。
ロイスは寂しがり屋な性格だった為、しばらくして奴隷を買った。そして、この奴隷が更なる不幸を呼ぶ。
ロイスに人を見る目がなかったことが原因だ。
理不尽な不幸で奴隷になった者なら兎も角、相応の理由で奴隷になった者がマトモな筈がない。
隷属魔術は使役者に直接不利益は与えられないが、第三者を挟むことで使役者を陥れることができた。
奴隷にまで裏切られて拗らせたロイスは、奴隷を使い理想のオトモダチを作る研究を繰り返し、作成した特殊な隷属魔術の魔導具を裏組織に売って大金を手に入れ、また奴隷を買い研究を続けた。
頭の良かったロイスは傀儡魔術に辿り着き、闇オークションで買った奴隷を使ってオトモダチを作り上げた。
願い通りに振る舞う初めてのオトモダチに感激したロイスは、追加で奴隷を買い、憧れの冒険者パーティーを組んで活動中。
どうしよう、ロイスめっちゃ不憫なんだが。
オトモダチと冒険者ごっこしてるとか知りたくなかった…!




