偽情報
「お父様お父様お父様〜!」
「おっ、イザベラ帰ってきたか」
帰ってきたら、お父様が呼んでると聞いたので執務室に突撃した。
扉を開けてすぐに、立ち上がったお父様に目掛けて、とうっと飛び付いたけど、びくともしない。
流石です、お父様。
片手だっこは年齢的に微妙な気もしますが、久しぶりのお父様を堪能中なので無視して話しましょう。
「お呼びと伺いました。どうされましたの?」
「ちょっとお願いがあるんだよ」
聞いてみると、ここ数ヶ月に渡って、数回ほど情報漏洩と思われることがあったそう。
「イザベラの抜き打ち調査に引っかかってないってことは、たまに城に来てる奴じゃないかと思うんだ」
そうですわね、勤めてる人はだいたい定期的に調べてますし。
「それで、一応情報が盗まれてる場所の当たりはつけたから、偽情報を置いてみようと思ってね」
「馬鹿が引っかかってくれば儲けものですね」
「いくつか仕込むんだけど、第四王子の婚約者についてもいれたいのさ」
「第四王子…」
婚約させられそうになった王子ですわね。
「第四王子に他国への婿入りの話が出てるんだけど、ちょっと本人の資質が微妙でね。話が進んでないんだ。それを使って、イザベラと婚約したって偽情報をいれたくて」
「はあ、偽情報ならいいのでは」
「うん、別に交流とかさせないし。本当に情報がそこから盗まれてれば噂に上るでしょ?」
まあ、王子と絡まないなら別にいいかな。
私が毎日お城に行って探すのは無理だし。
「もし噂になったら、ちゃんと否定してくださいね!」
「それはもちろん!もうクリス君と婚約してるしね」
一ヶ月後、光の日。
クリストファーとのランチの為に城内を進むイザベラの前に、数人の青年が立ち塞がる。
「お前が、イザベラ・ローランドか?」
「はあ、そうですけど」
イザベラは、何だコイツ?と訝しく思っているのを隠そうともしない。カメラアイの魔法で相手の名前は分かっているが、絡まれる理由がわからない。
「態度が悪いな!第四王子の御前だぞ」
取り巻きが声を荒らげる。
「はあ。第四王子殿下が私に何のご用でしょうか」
「お前が私の婚約者だと聞いたから見にきた」
「は?」
一瞬、殺気を向けそうになったイザベラだが、偽情報のことを思い出した。
鑑定で犯人はわかったが、取り押さえるのに言質が欲しい。
「殿下、その情報はどなたから聞きましたか?」
「ん?ルイスからだが」
取り巻きの一人を見たが、ルイスは犯人じゃない。
「そうなのですか?どこからの情報ですか?」
ルイスに問い質す。
ルイスは先ほどイザベラから漏れた殺気にビビっている。
「わ、私はカイルに聞いた」
「そうなのですか?」
今度はカイルに少々殺気をのせて問い質す。
「な、なんだ!それがどうした!私はちゃんと書類でみたぞ!」
犯人のカイルに、にんまり笑ったイザベラが告げる。
「ええ、言質がとれて良かったです。“拘束”」
いきなりの魔法行使にざわつく面々に、イザベラが説明する。
「私と第四王子の婚約は、偽情報でしたの。情報を漏洩してる馬鹿をあぶり出す為の。まさか本人が来てくれて、言質もとれるなんて思っていませんでしたわ。ありがとうございます」
通信魔導具でレオナルドに報告し、到着した騎士団にカイルを引き渡す。
イザベラは第四王子と取り巻きに向き直り告げる。
「第四王子殿下、私は既に素敵な婚約者がいますの。本日も婚約者に会いに来ました。ランチの時間がなくなりますので、失礼いたします」




